on the road to eclipse #04 『Kingman gas station』 by 熊谷義朋(写真家)
車はカリフォルニアからアリゾナに入った。
2つの州には1時間時差があるはずだが、
カリフォルニアはサマータイムで、アリゾナはサマータイムがないので、
結果時差はなく、ただ高速を走っている間に州が変わっていた。
景色は思い描いてたアリゾナで、
永遠と続く砂地、岩山、ところどころの廃墟の繰り返し。
たまに急に街が現れてまた荒野に戻っていく。
旧道のルート66を通って、
キングマンという街に着いた。
ガソリンスタンドの横の売店によって、
見るからにお土産という感じがする、ルート66のロゴ入りのボトルを買った後、僕らは外で、店員の赤いチェックのウールシャツの男性と話していた。
しばらく雑談をしてると彼が急に
「見て欲しいものがあるんだ」
と言って、自分の車の中に僕らを招き入れた。
そこに停まっていたのは、
ずっと昔から乗ってそうなボロボロのフォードのピックアップトラック。
男性は運転席に座って、僕らは助手席側から中を覗く形になった。
中もボロボロで、ところどころはげており、
座席にまでタバコが落ちていた。
ルームミラーにはかわいいアヒルのキーホルダーがぶら下がっている。
ガソゴソと後部座席から、男性が取り出して来たのは
鈍く光る金色の杖だった。
何かの金属製で持ち手には奇妙な生物の意匠が2つ。
龍のようなそうでないような。
「これが何だかわかるか?」
金色の杖をこちらにぐっと向けて来て、男性は聞いてた。
龍のようなものがこちらを向く。
僕らは杖ということ以外さっぱりわからず、
首を横に振った。
「この杖のことを知っている人が来るのをずっと待っているんだ」
男性はため息混じりに言った。
横の街道を走る車の音だけが聞こえる。
男性は身をよじらせて、また後部座席をガサゴソと漁りだす。
少し埃っぽい空気に変わった。
そして今度は額装された奇妙な布を取り出してきた。
大きさは30cm×40cmぐらいだろうか
何か動物の皮のような質感の布が、黒い簡易的な額縁に入っている。
布には大きな意匠が描かれていて、おそらく太陽のような気がする
「これが何だかわかるか?」
今度は続けて話してくる
「これはアステカの500年前の布だ」
「アステカ!?500年前!?」
僕らは驚いた。
男性はどうだと言わんばかりの顔。
言われてみると確かにイメージにあるアステカの太陽神のようだ。
誰かにもらって、ずっと大事にとってあるらしい。
本当にその時代の布かはわからないが、
すごく思い入れのある大切な布だということは伝わってきた。
たくさん話した後、僕らは彼にお礼を伝え、出発した。
次は同じ街のビーフジャーキー屋に向かう予定だ。
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