
『わたしのつれづれ読書録』 by 秋光つぐみ | #03 『東京人生』 荒木経惟
#03
2023年9月28日の1冊
「東京人生」荒木経惟 著(バジリコ株式会社)
今回は、現在パークで開催中『旅と本と』にて展示販売中の本から1冊。
この企画で選書をすることになり、古本市や古本屋を歩いて回って探しているうちに出会いました。荒木経惟の『東京人生』。

出展作家さんの選書の中で織田知里さんによる『東京百景』が挙がったことで、是非とも荒木氏の写真集は入れておきたいとボンヤリと考えていたのですが、古本とは一期一会。それを十分に心得ているので、良い出会いがあればなーといった程度に、ほんの少し期待を膨らませていたところでバッチリと出会したのです。(今回は、ネットでは買わずに敢えて足を使ってみました)
又吉直樹さんの『東京百景』は私も大好きで何度も読み返しています。人生の記憶、思い出、物語が「東京」という街に滲み、否応なしにこびりついてしまった。そういう意味で東京が概念として表現され、他には在り得ない街なのだということを感じるのですが、それが荒木氏の写真と重なっていました。




荒木経惟が生まれ育った三ノ輪の町、近所のお婆さんや子どもたち、帰路に目印にしていた実家の下駄の看板、街行くサラリーマンやOL、多くの盟友たち、長く暮らした豪徳寺の家のベランダ、妻・陽子、両親の最期の姿。

1962年から写し続けた「荒木経惟の東京」。
時には、実験的なコラージュがあったり、若さゆえに編み出されたトリッキーなアングルがあったり。
多くの遊びを取り入れながらも写真に向き合う「天才の本気」を垣間見ることができるうえ、色を介さない表現がここまで説得力を持ってこちらに突き刺さってくる異常さ。
「50年程かけて "戯れた" 荒木と写真と東京」を存分に堪能できる1冊です。
東京の人間の営みの中に見える人情味、淡白さ、儚さ、恐さ、歪み、そして美しさ。荒木経惟の目を通してのみ訴える「東京人生」此処にあり。
『旅と本と』はパークギャラリーにて10月8日まで、この機会に是非手に取ってご覧ください。

(本書はつぐみの私物です。販売はしておりません。)
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【 わたしのつれづれ読書録 】
古本屋兼ギャラリーの創設を目指し、パークギャラリーと並行して古本屋でも修行中の秋光つぐみ。
『わたしのつれづれ読書録』はパークスタッフのつぐみが出勤日(主に木曜日)に「今日の1冊」を紹介するコーナーです。
パークで開催中の展示テーマに寄せた本、季節や世間のムーブに即した本、つぐみ自身のモードを表す本、人生に影響を与えた本、趣味嗜好まるだしの本など‥日々積読が増えていく「つぐみの本棚」からピックアップした本をお届け。
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PARK GALLERY
木曜スタッフ・秋光つぐみ
グラフィックデザイナー。長崎県出身、東京都在住。
30歳になるとともに人生の目標が【ギャラリー空間のある古本屋】を営むことに確定。2022年夏から、PARK GALLERY にジョイン。加えて、秋から古本屋・東京くりから堂に本格的に弟子入りし、古本・ギャラリー・デザインの仕事を行ったり来たりしながら日々奔走中。
Instagram https://instagram.com/tsugumiakimitsu
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