COLLECTIVE レビュー #25 CHIHAYURI『23-24』(東京都)
ZINE のジャンルの1つに、「ガール・ジン」がある。女性学やジェンダー研究を進めるアメリカのフェミニストのアリスン・ピープマイヤーが 「ガール・ジン 『フェミニズムする』少女たちの参加型メディア」という本にもまとめているが、長い歴史と確かな実績を持つジャンルだ。ちなみに訳は野中モモさん。ZINE を語る上で欠かせない存在だ。
ここでかんたんに「ガール・ジン」を定義することは難しいけれど、女性の社会進出において自身の立場の向上(という言い方が正しいかはわからないけれど)のために、パーソナルな ZINE での表現・発信が有効だった時代が確かにあって、その精神がいまも無意識的に脈々と受け継がれている。時に暴力やヒエラルキーで抑えつけられてきた「小さな声」が、力強く輝く個人主義的メディア「ZINE」と、女性の「声」の相性がいいのだと思う。COLLECTIVE においては圧倒的に女性の ZINE の方が多い。ただその全ての作品が「ガール・ジン」というと少し違う気がする。
COLLECTIVE 2022 ZINE レビュー #25
CHIHAYURI「23-24」
イラストや短歌、詩を書くことをライフワークにしている CHIHAYURI さんの ZINE「23-24」を一気に読み終えて思い浮かんだのが、この「ガール・ジン」という言葉だった。“女性特有” の力強さと満ち満ちたエネルギーが手から伝わってきた。
36ページにわたって、CHIHAYURI さんによるイラストと、口語体で語られる自由律短歌で構成された1冊(こんなに短歌って自由でいいんだと思うくらい気持ちがいいです)。25歳を迎えるにあたって、とても楽しかった23歳~24歳の頃を振り返りながら、過去の作品をまとめたという1冊。都会の荒波で揉まれながら、恋をする一人の女の子のモラトリアムが、短い歌の中で、踊るよう。どこかシティポップな香りがする短歌は、そのうち歌詞のようにも見えてきて、リズムとメロディが聞こえてきそう。短歌とはよく言ったものだ。いろいろなカルチャーを全身で楽しんで、吸収してきたのだろうなということがイラストや歌から感じ取れる。共感できる女の子も多いと思う。
今時、男だ女だなんて、という声も聞こえてきそうだけれど、これぞ女性性のなせるクリエイティブなのだなと実感する。岡崎京子と魚喃キリコは読めたけど、矢沢あいとか安野モヨコは読めずにいて、その時に、なんか強烈な女性性を感じたのを思い出した。なんだか抗えない言葉にできない強い力を感じていた。
CHIHAYURI さんによる「23-24」にも感じる強いエネルギー。初めての ZINE づくりとは思えない。ぜひこのスタイルを貫いてほしいなと思いました。
ぜひ会場で、あなたの好きな歌を探してみてください。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
私は今年の冬に、25歳になります。25歳の誕生日を迎えて「アラサーになっちゃった・・・」という声を周りからよく聞くのですが、「年齢なんてただの数字」と思っている私は、どうもこの言葉が苦手です。しかし、じわじわと近づく誕生日を目前にして、なんとなく、これまでかいたイラストと短歌を「かたち」としてまとめておきたいと思い、制作しました。初めての zine づくりでしたが、とても楽しかったです。23-24を、愛してます。
🙋♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁♀️