『わたしのつれづれ読書録』 by 秋光つぐみ | #02 『十二人の猫たち』 白石冬美
古本屋兼ギャラリーの創設を目指し、パークギャラリーと並行して古本屋でも修行中の秋光つぐみです。
《 わたしのつれづれ読書録 》 はそんなパークスタッフのつぐみが出勤日(主に木曜日)に「今日の1冊」を紹介するコーナー。
パークで開催中の展示テーマに寄せた本、季節や世間のムーブに即した本、つぐみ自身のモードを表す本、人生に影響を与えた本、趣味嗜好まるだしの本など‥日々積読が増えていく「つぐみの本棚」からピックアップした本をお届けします。
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#02
2023年9月14日の1冊
「十二人の猫たち」白石冬美 著(話の特集)
第2回は、現在パークギャラリーで開催中の「いきもの」をテーマにしたグループ展『 EVERYONE 』にちなんで、私も人間の次に好きな「いきもの」である「猫」の本をピックアップします。
「いきもの」について描かれた本があるといいなと古本屋をぶらりしていたときにハッと目にした本、帯の永六輔氏の言葉を頼りに直感的に手に取りました。
声優・俳優の白石冬美さんによる「十二人」の猫たちについて語られた12のお話。
自らが共に暮らす「ケムリ」
和田誠・レミ夫妻のお家でかつて暮らした「桃代」
桃代はのちに田村セツコさんのもとへ移り「ニルソン」と出会う
水森亜土さん宅の「ファンタ」と「モン太」など
白石さん自身のご友人界隈の猫たちが多く登場します。飼い主の人間たちは言わずもがな錚々たるメンバーですが、これはまだまだ序の口。
この本で最も読み応えを感じるのは、白石さんの猫たちに向けられる眼差しのあたたかさが、言葉の端々に感じられるところです。
猫たち自身が抱いているであろう寂しさや愛しさや欲望を、時には剥き出したり、焦ったく物言いたげな視線で訴えたりしてくる彼らの様子は、まるで「ひと」同様。
どの猫に対しても、可愛くて、可愛くて、仕方がない、なんとかしてあげたい、包み込んであげたいという白石さんの優しさでいっぱいです。一匹一匹、一人一人の猫への情愛が溢れそうなほど、切なく胸に迫ってきます。
「いきもの」を愛でるということ。その喜びや慈しみが、ツヤツヤとヒシヒシと伝わってくる、愛に満ち溢れたエッセイ。
「ひと」と「猫」。この二者だからこそ生まれる特別な関係。そう簡単なことでもない、だからこそ憧れる。私は永遠に「猫」に憧れ続けるのだと、この本を読んだことでグンと胸に響きました。
帯に書かれた永六輔氏の言葉を借りて、これが「猫が書いた本」なのであれば、白石冬美さん自身も「猫」なのであったということ。
白石さんのように自身も一いきものとして、全てのいきものに、あたたかい眼差しを向けられるひとでありたい、そう思います。
PARK GALLERY
木曜スタッフ・秋光つぐみ
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