小走りの理由。
フランスに来たことがある人は、
気づいたかもしれないけれど
小走りをする人がいない。
たとえ歩行者信号が赤に変わっても、
ゆっくり歩く。
パリの信号はあって無いようなもの・・・
と言ったら言い過ぎだろうか。
車が来なければ、みんな赤信号でも平気で渡る。
もし、そこに急に車がやってきたとしても、
止まって待っているのは車の方で
信号無視をしている歩行者は走らない。
たまにクラクションを鳴らす車もあるけれど、
大抵は歩行者が渡り終わるのを待っている。
私は、歩行者信号が赤に変わった時、
もしくは青信号でも右折や左折の車が
私が渡るのを待っている時、
つい、小走りをしてしまう。
なんで、小走りをするのだろう?
普通に歩いたとしても、
大して速さは変わらない。
車への配慮なのか、
「急いで渡っている私は
あなたに迷惑かけないようにしてますよ」
と言いたいのか。
それとも、日本の、あの赤信号になる前の
チカチカと点滅する切迫感が
身体の中に染みついているのか・・・。
フランス人の友達との待ち合わせで、
私がほんの少し、1分くらい遅れた時も、
やはり小走りしてしまっていた。
「なんで走るの?」
たしかに、たった数メートル小走りしたところで
ほとんどなにも変わらない。
“急いでいる”風を装っているのが
変な感じがして、
小走りをするクセを直したくなった。
待ち合わせに遅れても、今ではゆっくり歩き、
「ごめんねー。」
とニコッと笑うだけ。
10分くらいの遅れは、
フランスでは遅刻に入らないのだ。
でも、信号での小走りだけは直らない。
今日もやっぱり
渡り終わる寸前に小走りをした。
私が一番「日本人」であることを感じる一瞬。
小走りをした後は、
ひとりでニンマリしてしまう。