人を動かすには人の直感を利用すればいい
顧客目線はビジネスの基本です。ドラッカーの名著マネジメントでも「事業は顧客から創造される」「成果とは顧客の欲求を満たすこと」と言われています。
ただし、いくら顧客の欲求を満たすサービスを提供できたとしても、「顧客が直感的に使い方をわかる」ことが前提に必要です。
玉樹真一郎著『「ついやってしまう」体験の作り方』では、元任天堂社員がスーパーマリオやゼルダの伝説などのゲームを題材に、ユーザーが「ついやってしまう」体験の作り方を説明しています。
アプリを作ってみたけど利用者が伸びない。新製品を作ったけど売れない。そんな悩みがあるならそれはサービスが問題ではなく、サービスの使い方が顧客に伝わっていないことが問題かもしれません。使い方が直感的に分からなければ、ユーザーはそれ以上操作しようとは思いません。すぐに他の類似サービスを探し始めます。逆に言えば、直感的にサービスの使い方がわかれば人はそれを操作しようとします。
では、どうすればこういった直感操作を促すことができるのか?
◆人はなぜ「ついやってしまう」のか?
結論から言えば、直感的にこうすればよいとわかるようにデザインされているからです。商品やサービスの「良さ・正しさ」を伝えるよりも、まずは商品やサービスとの関わりかたが直感的にわかることを優先することが重要です。
スーパーマリオは世界中で売れてギネスにも載るゲームです。ほとんどの人が1度はプレイしたことがあるゲームですが、不思議なことに操作方法を説明されたことがある人はほとんどいません。誰でもマリオの画面とコントローラーを触ればなんとなくゲームの仕組みを直感でわかってしまい、つい右に行ってしまいます。実はここにマリオの凄さがあるんです。詳しくは本書のネタバレになるので避けますが、要するに誰からも教わらずに、直感的にプレイの仕方がわかってしまうんです。
子供達は1ー1ステージを見て、このゲームを面白いとは思いません。それもそのはず、画面にはマリオ、空と雲、山…だけです。でも、プレイヤーは無意識に右に進んでしまいます。そしてクリボーを倒し、ゴールして、次のステージに行く、土管に入る、スターが出る、ファイアマリオになる…と繰り返してるうちに気付くんです。
「このゲーム、おもしろい!」
つまり、マリオは誰でも直感的に操作方法が分かる工夫がされており、直感に従って進めていくうちに、自分でその面白さを知ることができるようにデザインされているんです。
出会い系アプリのtinderはそんな人の直感を利用したサービスだと思います。このアプリを開くと画面には女性の写真が現れます。なんとなくそれをスワイプしようとします。すると好き嫌いが仕分けされます。次もまた仕分ける、またその次も、、としていくうちにマッチングしたと通知がきます。
「お!便利だ!」
人はついついこのアプリを触ってしまうようにデザインされているんです。
◆人はなぜ「つい夢中になってしまう」のか?
人は同じ出来事が続くと飽きてしまいます。心的飽和といって心が満足してしまうんです。だから驚きが必要なんです。
本書ではドラクエの「ぱふぱふ」を題材に説明しています。細かい説明は省きますが、要するにドラクエという「剣と魔法の物語」にぱふぱふという「エッチ」が入ってしまうことによってプレイヤーは驚いてしまうんです。
これは、ゲームに限らず日常あらゆるものに応用されています。映画であれば、観ている人がストーリーを理解し始めたところで驚くような出来事が起こります。cmで商品紹介するときも製品の驚くべき点がアピールされています。すなわち驚きというのは人の飽きを妨げ、人の注意を引く重要な役割だと言えます。
我々の日常生活でも、毎日同じことの繰り返しにならないようにGW、クリスマス、正月と、変化を生むイベントが散りばめられていますよね。
ゲームは生活必需品ではありません。なくても生きていけます。でも皆プレイしてしまうんです。筆者はその理由をこう言います。
「連続する直感のデザインに驚きのデザインを織り混ぜているから」
つい触ってみる。面白さに気づく。ストーリーがわかってくる。多分こうなるだろう予想する。そこで驚きの出来事が発生する。飽きずに続けてしまう。つまり意図的に夢中を生むサイクルにデザインされているんです。
実はこれ、シリーズもののゲームでも考えられます。ポケモンのメインシリーズは8シリーズ展開されていますが、毎回新しい驚きがあります。最近では、メガ進化、巨大化などなど、プレイヤーを飽きさせない工夫がされているんです。もしあなたがハマっているシリーズもののゲームがあれば、恐らく常に驚きを生む仕掛けをしているのではないでしょうか?
◆おわりに
直感を生むデザインにすることで人はつい触ってみたくなる。驚きを生むデザインにすることで人は夢中になる。直感と驚きのデザインをほどよく織り混ぜることを意識することでより多くの人を魅了するサービスを提供できるかもしれません。
私は本書を読んだ時から、この本についてnoteを書きたいと思っていました。それぐらいこの本は面白いです。ぜひ手に取ってみてください!