【感想】【生きてるだけで、愛】一瞬だけの共感で生きていけるとは思えないって話


私は常日頃から一瞬の感情や言葉、あの時あの人にこう言われたから、
とかあの時の言葉がずっと自分の糧になっている、とかそんな気持ちだけでこれからの人生を生きていけるとは思わない。
そういうことがないことはないけど、継続して何回も自分の中に叩き込んで、
落とし込まないと、確固たるものだと思えないし、何しろ私は「相手が本当に、まだそう思っているのか」ということを疑ってしまう。
環境や価値観が簡単に変化できる時代だからこそ、相手がまだそう思っているのか。
あなたの発したその言葉を信じているのは自分だけではないのか、と不安になってしまう。


[生きてるだけで、愛]をみました。
うつ病を患っていた時の私の気分と全く同じような趣里さんの演技。
自分ばっかり上手くいかない。たまのやる気は運が悪いのか外的要因が私の目的を阻んでくる。
先回りして相手に期待させるだけさせておいて、その相手からの少しの期待にも応えることが
できない自分にも嫌気がさして、何も上手くいかない、とまた落ち込む。

投げ出したくても、しんどくても助けて欲しくても、その声さえ出せない。

何回も変われるかも、と思うチャンスはあるけれど、結局どれもふとしたことで
途切れてしまう。そんな大暴れ寧子に何一つ文句を言わず、
かといって自分しかいないと寄り添い続けたり、構い続けたりすることもない津名木。

津名木も津名木で、本当は文学的な仕事がしたいのに、行き着いた先は週刊誌の雑誌編集者。
書きたくもない記事を書き、芸能人を追いかけ回す、津名木も津名木で生きづらそう。

趣里さんの演技、いい!!最初はちょっとわざとらしい?って思うこともあったけど、
だんだん作品に馴染んでいく感じがすごくよかったです。

話し方や時計を見て絶望する姿、どうしようもなさを抱えた人間って感じがすごくして、
自分の感情のやり場がどこにもなくて、それを津名木にぶつけ続ける。
津名木が、そんな寧子とずっと一緒にいる理由は、
「もう一度綺麗なものを見たいと思ったから。」ただ、それだけ。
青いふわふわなスカートを履いて裸足で走る寧子をすごく綺麗だと思った津名木。
こんな一瞬のために津名木は3年も寧子と一緒にいる。

思い出を綺麗なままで閉まっておけばいい、って思ってそのまましまい続けられることが
できる人ってきっと少ないと思う。
相手が人である限り、死んでしまうとか、もう一生会えないとかいうしょうがない理由がある
以外は、素敵な思い出や言葉を与えてくれた人と離れたいなんて思わないだろう。
でも、一緒にい続けるってすごく大変なことで、綺麗な思い出さえも失われてしまうことになりかねない。
つくづくそう思う。でも思いだけでは生きていけない。
だけど、一緒にい続けるリスクが大きいのも事実。
一時培った相手の事を愛したいと思う欲求に対して、日々消耗して、別れてしまう。
その愛がなかったことになるぐらいなら最初からいらないとまで思ってしまう。
悲しすぎるから。

私は、寧子が裸になって津名木と話しているところから一緒に家に帰ってきて、
タバコに火を付けるあの瞬間の演技がとっても好き。
この映画のシーンで一番印象に残っていて、かっこよくて、二人の間には隠しごとなんて
そんな器用なことがまったくなくて、すべてまるごと赦されている、ような。

ただ私の好きな仲里依紗が本当にただの悪い役、とだけで終わってしまうのが少し悲しいところ。
それはそれで、津名木と寧子の間柄を考えるきっかけを与えてくれた人、という見方もありますが。

生きてるだけで、愛。面白かったです。

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