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隈研吾展 感想

この記事は、「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」の感想です。現在、東京国立近代美術館で行われている展覧会です。

はじめに

 私は建築に詳しくなく、建築関連の展覧会に行くのも初めてでした。実際に見に来ていた人も様々だったように感じます。服装のイメージで偏見になりますが、美大生から建築学生らしき人もいれば、写真を撮りに来た学生からスーツを着た社会人に中高生、年配の方もいました。

国立競技場をはじめとした様々な有名建築物の設計、インスタ映えするようなお洒落な展示方法が、このような幅広い世代を集客する結果へと繋げたのだと感じます。私は普段、美術館には行くのですが、展示の種類ごとに客の傾向が存在していると感じていたので、このように偏りの無い展示は新鮮でした。これは、展示のタイトルにもある”新しい公共性”が我々の間に浸透しつつあることの表れなのでしょうか。

私がこの展示に行く前の知識としては、彼がデザインした建築物を数点ほど知っており、どれも特徴的で個性が強い印象でした。特徴的なものは周囲と馴染まないイメージから、彼の作品は公共性とは離れていると思っていたので、公共性という言葉が使われていること、幅広い層が見に来ていることが個人的には意外でした。しかしその印象は、展示を見ていくことによって変化し、彼のこだわりは別のところにあるのだと感じました。

展示の内容…見やすさ、難しさ

 展示内容としては、彼の作ってきた建築物のジオラマと写真が並んでおり、合間に映像や実際の建築の一部が置いてあるといった感じでした。映像は様々なクリエイターとコラボしたものがあり、建築に詳しくなくとも、雰囲気で楽しめる印象でした。

実際の知識的な面でどれほど充実していたのかは、その方面に弱いのでわからないのですが、用語や芸術的観点は初心者には難解なものもあるように感じました。より詳細に言えば、文脈は分かるけれども、知識不足から理解が浅くなってしまうという所感です。

しかし、難解で何もわからないということはありませんでした。彼の建築における五原則「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」を、何故彼が求めているのか。この五原則の効果や現在の建築の特徴。型にはまった建築を行っていないからこそ、当たり前となっている建築はどんなものなのか。そのような知見の断片、新たな視点を持つことが出来る展示になっていると思いました。

興味深かった建築 3選&レビュー

ここでは、展示会の中で個人的に興味を惹かれたもののリンクを貼っていきます。

高柳町 陽の楽家

田舎の伝統的な建築を残すため、窓ガラスの代わりに和紙とこんにゃくを用いた成分のものが貼られているとのこと。どういう原理か全くわからなかったのですが、確かに和紙ごしに見る部屋の明かりは柔らかく、窓ガラスとは違った印象になっており、とても綺麗でした。

The Exchange

カーブがすごい。木材でこれを表現するために、折れにくい素材を使っているそうです。この展覧会を見ている間ずっと、彼の建築は防火、防災は十分なのか気になっていました。様々な場所で建築できているということはきちんと対策されているということなのでしょうか。

また、木が腐らないのも何故?と感じていました。実際の具合は分かりませんが、物理、化学など様々な知識を総動員して作られているのは間違いないのでしょう。

雲の上の図書館

外装は趣深く、内装は前衛的でカッコよい。ここで本読んでみたいな、行ってみたいなと純粋に思わされました。その他にも子供が利用する建物が紹介されており、それもワクワクするデザインになっていました。

そして、それらの建築で何よりも良いなと思った所は、洗練されたデザインの中にワクワクが潜んでいる点です。子供向けとなると、分かりやすく派手な色味、沢山の情報を詰め込んだ、いい意味で賑やか、悪い意味で雑多になってしまうものが多いと思うのですが、彼のは違いました。色味や情報はシンプルでありながら、配置を活かして興味を惹かせる。

これが、この展示のテーマであるネコの視点が生み出す技ということなのでしょうか。

公式レビュー

私が展覧会に行く前に見たレビューです。東京国立近代美術館の公式サイトに載っています。何故ネコ?どういう雰囲気で楽しめるの?というのが、非常に興味深く書かれています。見終わった後も納得出来ましたし、見る前に注意深く見たい点が増えて楽しかったです。

さいごに

 この展覧会に行ったことで、建築への興味が湧き、またこのような展覧会があれば行ってみたいと感じました。そして、彼の作る建築に実際に足を運んでみたいという気持ちも高まりました。海外のものも多かったので、何年か後に旅行できたらいいなあと楽しみが増えました。特に、自然に馴染むようにして作られた建築は日差しや風通しがどうなっているのか体感してみたい、と強く感じました。

また、内容が難しかったのもあり、展示の所々に現れるネコに癒されてばかりでした。人は登らないであろう場所に、「ノボラナイデ!」とゆるいネコの注意書きがあったのがお気に入りです。登る人もいるのかもですが。

とにかく、ネコの強さも再実感できる面白い展示だと思います!笑


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