102本目「熱烈」【ネタバレなし】

※本文は全て無料です。

TOHOシネマズ錦糸町にて

公開日:2024/9/6
監督:ダー・ポン(中国)

中国・杭州で活動するブレイキンプロダンスチーム「感嘆符!」は、カリスマダンサーのケビンがチームの練習に参加せず、好き勝手な行動を繰り返すなどやりたい放題。親が大物であるためコーチもケビンに口を出すことができず、対応に手を焼いていた。しかし、ある時ケビンの代役を探さなければいけない事態となり、コーチはかつてチームのオーディションを受けた青年・陳爍(チェン・シュオ)を思い出し、彼をチームに加入させる。全国大会優勝の夢を胸に、陳爍はチームの仲間たちと練習を続け友情を築いていくが、全国大会を目前に控え、数々の試練が降りかかる。

https://eiga.com/movie/101713/

まえがき

私はオリンピックを見ない。マジで見ない。
一競技、一試合も見ないし情報も仕入れないから何も知らない。が、パリ大会には「ブレイキン」というダンス競技が追加されたことだけは知っていた。「また採点しにくい競技だ」と感じたのは覚えている。

そのブレイキンだが、今年に入って立て続けに三本も映画が国内公開された/されるという。3月公開の「ストリートダンサー」、本作「熱烈」、今週末公開の「ザ・ブレイキン」である。

この「熱烈」を観に行ったのは、「ストリートダンサー」あってのことだ。
あの映画は非常によく出来ていた。ストーリーとして滅茶苦茶新しいところはなかったが、やはり「ダンス」というのは感情表現に長けた要素だし、その技量にも圧倒されたものだ。同じ題材の「熱烈」に興味がわいた理由の一つはこれである。

理由はもう一つあって、それは主演のワン・イーボーの存在である。
彼も最近売り出し中の様で、5月公開の「無名」ではすさまじい女性人気に驚いたものだ。あの大スター、トニー・レオンを人気では完全に食ってた。
その後、「ボーン・トゥ・フライ」という戦闘機開発プロジェクトの映画も公開。両方観に行ったが、イマイチ地味な印象はぬぐえなかった。

そこに来てこの「熱烈」である。
聞くところによるとワン・イーボーの本業はダンサー兼ラッパーだという。
ならば、本作こそホームグラウンドで100%の実力を観られるのではないか。そう思ってチケットを買ったのだった。買い過ぎたのだった。

感想など

期待以上であった。
清貧・努力とチームワークを旨とする王道主人公の、王道スポ根映画と言っていい。

先述した「ボーン・トゥ・フライ」とか、「流転の地球2 太陽系脱出計画」の時も思ったが、中国映画は妙に日本人の琴線に触れる王道テイストだ。
そういう映画ばかり輸入してるだけかもしれないが…。

それはそうと今作である。
主人公は家庭事情最悪、メンタル最強、将来性はあるが現状パッとしない、典型的主人公である。何があっても諦めないし、「何でもしますから」と喰らいつき、いつ寝てるのか分からない練習量で戦う王道主人公。

この主人公が周囲の人間をも動かして勝利する様子が、ちょっと出来過ぎなくらいに書かれている。戦う相手は金。金と、それが生み出す誘惑、私欲や打算。ライバルキャラはいるものの、彼自身というより彼の金ばかりに踊らされていた気がする。

そのライバルキャラは家柄最高、孤独、能力は現状では最強という典型的な「孤高の」ライバルキャラである。ベジータ。
金だけはある家に生まれたが、しかしその境遇を憎んですらいる。でもその金しか縋れるものがない。ダンスへの能力や愛情、コーチの技術への執着はあるのだが、周りをつなぎとめる手段に金しか考えつかない、ある意味可哀そうな子供。今回の戦いで彼にも心境の変化があっただろうし、続編があるならいいチームメイトになるのではないだろうか。

まえがきで述べた「ストリートダンサー」と本作は同じ競技を扱ってるが、結構違う。主人公の境遇は真逆。「恵まれない中で戦う」本作と、「恵まれすぎていて戦う理由に気づかない」ストリートダンサー主人公。
「自分たちのため」に戦う本作と、「他人のために戦う」ことになるストリートダンサー主人公。比べて観ると結構面白いと思う。

おっと、そういえばワン・イーボー。
彼は今作が一番輝いてたね。やっぱり。
彼はぱっと見分からない程度の奥二重で、結構地味な印象。眼つきもジトっとした感じにするのがうまい。それが序盤~中盤の主人公にピタッとはまっておった。動きは言うまでもない。

ペーパーお勧め度

★5。
見慣れないテーマ、ハリウッドではない外国映画ということで敬遠されてるのかもしれないが、それは非常に勿体ない。日本人の心にバスバス刺さる王道スポ根に、キレッキレのダンスが付いてくるのだから観に行かないのは損ってもんだ。少なくとも、「この映画大っ嫌い」とはならないよ。

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