siscompany 『ケンジトシ』
もうだいぶ前のことですが…、
2023年3月10日にシスカンパニーの『ケンジトシ』
観劇してきました。
しかも、大千穐楽。
こちらもチケット入手困難な舞台で、超絶ラッキーだった。
宮沢賢治(中村倫也)と妹トシ(黒木華)のお話。
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登場人物たちも何度も「分からない」と言うように、劇詩人・北村想らしい難解な戯曲。
台詞が詩的で、考えるより感じるものが多かった。
実際観ていても分からないんだけど、決して取り残されたり、物語を放棄したくなるような“不快”な分からなさではなくて、分からないことを愉しめる演劇。
客席の誰のことも置いてけぼりにはしない。
心地よい「ワカラナイ」って感じ。
作者と役者の想像(創造)力を通して、今まで知り得なかった宮沢賢治の人間臭さ、トシの聡明さと愛の深さを体感出来たのは、この戯曲の隅々に、私たちの人生と直接リンクする部分が散りばめられているからだと思った。
分からないから想像(創造)する
生きていて、人生って分からないことばっかり。
何故産まれて、何故死ぬのか。何のために生き続けているのか。
分からないなりにもがきながら、理想郷『イーハトーブ』に想いを馳せる中村倫也さん演じる宮沢賢治が、とても愛おしかった。
本来、個人的には舞台を全体的に真ん中少し上から見下ろせる席が好きだけど、
今回は演者の息遣いすらも感じられる、同じ視線くらいの近い席でした。
それが良かった!
目とか肩の動き、手の震え、細部まで肉眼で観られて緊張感があった。
法華経については、事前にもっと知っとけば良かったとは思ったけど、分からなくても、「わからない」を超えて来る感動がありました。
海底の蟹の目から見た世界
宇宙と繋がるって、どんな感じなんかな。
「誰だって、ぐるぐるするのよ」
「自分が正しいと思い込むことと、自分のやっていることを信じることは、ちがう」
「全ては繋がっている」
「自分の中にある菩薩の視線」
「終わりの次は、新しい始まり」
「見えなくても、月はあるよ。見えねけど見えねがらこそ、月は、あるよ」
河内さん演じるコロスの存在が、この戯曲においてとても重要だったように思う。
自然とほとんど一体化した(カニなのか何なのかよく分からない)生物たちの息遣い、気配が、幻想的なのに現実的な世界観を作り上げていて、
観客の好奇心と探求心と想像力を焚きつけてくれた。
改めて、河内さんの底力を見た気がする。
河内さんが動く度に、客席と舞台は海底に沈んだ。
揺れて、沈んで、浮かんで、漂う。
そこから見る世界って、どういう風に見えるのかなぁ。
とか考えた。
銀河鉄道の夜
トシの死に絶望し、ほんとうの幸せについて模索する賢治の姿を通して、『銀河鉄道の夜』の制作過程を見ているみたいだった。
ジョバンニとカンパネラ。
生と死。
善と悪。
ケンジとトシ。
ケンジと死…、ケンジと詩…。
解釈はそれぞれあるだろう。気になる…。
もう少し、あの世界観に浸っていたかった。
ちなみに…
河内大和という俳優は、モンゴル人じゃないよ。笑
まだ見られてないんやけど、日曜劇場vivantの中で、河内さんがモンゴル人役を演じられているそうで。
ネットでは、
『モンゴルの俳優さんかと思った!』
とかって書かれてて、にやにやした。
”でしょうね。”
って思った。
だって、もうそうにしか見えないんやもんね。笑
今後日本の、いや、世界の演劇界を引っ張っていく方なのではないかしらん。