[読書感想文] kotoba 2024 Summer 「喫茶店と本」
「喫茶店と本」素晴らしいコンセプトだー。しかもやたらと分厚い。1550円とお手頃価格だし。
自分も喫茶店では本を読む人なのでうってつけ。買った。
しかし、近所のお気に入りの喫茶店は店主の体調不良とやらでずっと営業停止しており、別のモーニングを食べれるお店は普通に食堂で、それでも本は読むけどあんまり「喫茶店読書」感はなかったりしていて、最近あまり喫茶店読書を楽しめていないから、これを読んでもうらやましくなるだけな気もした。
更に自分でもなぜ喫茶店に惹かれるのがよく分かっていないし、そもそも自分でコーヒー淹れたらポットいっぱい作れてせいぜい100円とかなのに数百円払ってカップ一杯だけの苦い汁を飲む理由とは…ってたまに我に返ってしまうときはある。
家で読書すれば無料なのに、家で読書が集中できないからわざわざ場所代を払って喫茶店で読書するという悪癖!その浪費が心地よいのかもしれない。
ただ、空いてる喫茶店じゃないと周りが普通にうるさいし、お金を払ってまで、読書に集中できる環境を得る可能性が担保できないというギャンブルをしにいってるわけで、考えを整頓すればするほどなんでこんな趣味を持っているのかわからなくなる。
この特集を読めば答えは出るのだろうか。
と思いきや、喫茶店で本を読むとか、本屋と喫茶店がくっついてるというではなく、「喫茶店について書かれた本」が前半は多い気がした。喫茶店と文学って感じ。でもまあ、喫茶店と本に関する様々な文章が読めるので包括的に楽しめてむしろ良い。
ただ気になる本が増えてしまって積み本が溜まるというのを全く想定していなかった。
・本編
ルワンダを支援するカフェに関する話が、色んな意味で印象的だった。
19歳の女性社長がクラファンで資金を集め、沖縄でカフェを開き、売上の5%をルワンダに寄付するという話。
クラファンを見てみたところ、160万集まっていた。そしてカフェから寄付できる額が毎年50万ほどで、手数料など取られると25万ほどしか届かない、と。必要な支援額は毎月40万なので全然足りない。
じゃあクラファンの額をそのまま寄付したほうが良かったのでは、と思ってしまった。まあ、それだったらそもそもクラファンが成功しないから無理なんだけど。
できるだけ多くを直接届けたい、とルワンダの小規模農家と直接契約できないかと問い合わせたところ、「できるけど、その人たちは殺されるよ」というリアルすぎる返事。うーん、なんかもう農家を支援してなんとかなるというレベルではないのでは…
なぜルワンダをそこまで支援するのかとは思いながらも、その行動力と実行力はすごいと素直に感心しながらも、なんか色々と思うところある内容だった。ってか、本関係ねぇ〜。
・その他諸々
コメダ珈琲特集もあった。というか名古屋のモーニング特集というか。
FC店は月額ロイヤリティが1500円x座席数。割合ではなく、店舗の規模で固定。なので客が増えれば増えるほど儲かる!
確かにコメダの商品ひとつひとつは高いのだが、モーニングだけはドリンク一杯の値段でパンと卵などがつくという安さなのでファンが多いというのはわかる。そしてその常連が他の時間帯でも使ったり追加注文したりすることで総合的な使用金額を上げてくれるというシステム。というか、コメダに限らずモーニングが同じ理屈で提供されていると。
・喫茶店のルーツは室町時代の一服一銭
更に江戸時代には水茶屋というのができた。これは茶屋が遊郭の客引き施設だったからそれと区別するための名前。
カフェーと純喫茶の違いを彷彿とさせる。
清水寺の茶屋も話題に出ていた。数年前に行ったわ。そんな歴史のある場所だったとは。
ただ、茶屋と喫茶店は違う。茶屋は煎茶番茶、喫茶はコーヒー。
でもどちらも日本人のお茶好きにマッチした、というか茶屋で培われたお茶好きが喫茶店で再来したというか。
・ブックカフェ
本好きで情熱がある人がブックカフェを開き、その情熱と趣味力によって良い本が集まり、それに惹かれた読書好きたちが集まるという良いループしか起きてないやつー。羨ましい。店主も客も。
ただ、それを実現する人たちは祖父母の代から古書店業を営み、いつか自分で店をやりたいから法学部に進みMBA取得のために留学するためにお金も貯め…という計画性しかない人だったり、昼は営業をしていて夜は時間があるからという理由で夜型のブックカフェを開くという、いつ休むねんという人だったりと、好きこそものの上手なれというか情熱がほとばしっている人たちばかり。逆に、そのくらいの情熱がないと成り立たないのかもしれないな…
しかし阿佐ヶ谷の「よるのひるね」という店名、めちゃめちゃいいな。
ブックカフェという営業形態、本を一冊読み終わるとなると数時間かかるから、回転率は圧倒的に落ちるのにやっていけるのだろうか、という問いにも一応軽くだが答えていて、店によっては時間あたりの料金にしていたり、そもそもFLR、Food、Labor、Rentのみっつが極限まで低く済ませられるから費用がかからないとか。確かに、出ていくお金はあんまりないのか。古本なら新刊の仕入れもいらないし。
・神保町のカフェマップ
男性が甘いものを食べたいとき、ケーキやパフェは気が引けるが、クリームソーダから大丈夫。わかる〜。
・ジャズ喫茶
会話禁止、爆音ジャズを座って聴いて勉強する、持論を戦わせる、コーヒーとフードはまずい、今のジャズはフルーツパーラーやスタバ「なんか」でかかるものになってしまったなど、絶対に彼らの言うジャズ喫茶には行きたくないと思える内容。
自分を老害だと認めれば何言ってもいいわけじゃねえぞ。
まあ、彼らの行くジャズ喫茶には絶対行かないが、彼らが好きにやってるのは構わないのでお好きに生きてください。
ってか読書は!?
・特集終わり
化石に関する本たちの紹介おもしろかったけど、喫茶店関係ねえ!ということで気付いたが、ほぼ半分が特集で、残りは連載記事だった。
ただ、なぜか全体的に広告がやたらと少ないことと、更に前半が「喫茶店と本」だったのが後半は喫茶店というテーマがなくなるだけなのでそこまで方向転換された感じはせず、普通に読めた。
先日読んだBRUTUSは特集のホラーと、その他があまりにもテーマが一貫してなかったからなぁ…
化石やスポーツなどの趣味テーマもあれど、憲法、地震、シリア内戦などの重いテーマもあり、なかなかエネルギーが消費される内容だった。
連載記事でも、頭に説明をつけてくれるのですっと読める。他の雑誌も見習ってほしい。
ノンフィクション且つスポーツということで、普段なら絶対読まないが「スローカーブを、もう一球」は読んでみたくなった。
・幸福の憲法学
幸福の憲法学という連載もなかなかむずかしかったが面白かった。
車椅子利用者が映画館で座れる場所が端っこが多いが、真ん中に設置しているところもあるというのを著者が聞いて「このような考え方が広まると良いですね」と発信したところ、「もう十分に配慮されているのだからそれ以上を求めるのはやりすぎだ!」という、いわゆる「現代的レイシズム構文」の返答がもりもり届いた、と。
確かに、特に日本ではあからさまな差別というよりは、自分でも差別とわかっていない、こういった無駄な正義、みたいのをよく見るなぁ。
「〇〇に賛成ですか?」と聞くと、調査を受ける人や調査結果を見る人は、「そうした差別感情や偏見を積極的に表明してもよいのだ」という印象を受けてしまうだろう。
「〇〇のために、一番良い選択肢はどれだと思いますか?」なら、何をすべきかに回答しないといけなくなるので差別感情が紛れ込む可能性はちょっと減る。アンケート質問の参考になる。
・水曜どうでしょう!?
嬉野さんの連載があるとは!全く予想してなかった。もう6回目。そろそろ本になりそう。出たら買うわ。
嬉野さんが楽しそうなので読んでてこちらも楽しくなってくるし、セリフ部分はもう彼らの声が自動再生されてしまう。