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[読書感想文] なぜ蚊は人を襲うのか

前から気になってた目黒寄生虫館に行ってみたら、お土産売り場は半分くらいが関連本売り場になっており、興味深いものがたくさん!でも旅行中なので余り本を買えず、この本と日本住血吸虫症の本を買った。

こっちの本はかなり子供にも読みやすそうな内容で、おかげで自分も一気に読み終えてしまった。

寄生虫館で説明されていた病気なども本にたくさん出てきて、本単体でも面白いし、復習にもなるし、とても良い読書体験だった。

・作者のスタンスは蚊を撲滅させたい、ではなくむしろその逆

ほとんどの人は蚊を超絶嫌いだが、作者はめっちゃ好きで、愛情込めて育て、研究している。
愛情ありすぎて、蚊を見かけると血を吸わせるくらいなのがぶっちゃけちょっと怖い。まあ、といっても殺さないわけではなくて、研究のために確保するときは普通に殺虫剤で殺している。

どちらかというと、蚊が嫌われている理由を消したいという感じがした。

そして、「蚊が嫌われている理由」というのは痒くしてくることかと思いきや、公衆衛生上はもちろんそっちではなく、「疫病の運び手になっている」こと。ウイルスだったり糸状虫だったり色々なやべえものが蚊を通して運ばれてくる。そして蚊は別にそれをやろうとしているわけではなく、知らずに麻薬の運び手にされている観光客みたいな立場。

いや、血を吸うときに痒くしてくる時点であんまり無害な観光客感はしないけども。

というか、そう考えると痒くならなかったら積極的に殺すこともないからもっと疫病が簡単に広まりやすい展開になっていたのかもしれない。蚊はあえて嫌われ者になることで人類を救っている…?泣いた赤鬼か?

・なかなか難しい内容も多いが、面白くて盛り上がりが止まらない

途中で「眠くなった方は読み飛ばしてもらって構いません」と前置きしてからそれほど難しくない話をしてくれることがあったが、後半で「異物認識とエフェクター分子」とかで「Toll経路とIMD経路の信号は、蚊の細胞の外にいるウイルスなどの病原体が、ペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)という因子によって認識されることから始まります。」と、やたらと難しい内容がもりもり出てくる。

ウォーミングアップは終わったということか…

前半はコラムなどでも有名人を例に出して興味をキープしてくれるので盛り上がりを失わないまま読み続けられて楽しい。

平清盛の死因はマラリア。野口英世は黄熱病。西郷隆盛はフィラリアで象皮病になったなどなど。全部それとなく聞いたことはあったが、どれも原因が蚊だったと聞くと、やっぱり蚊はとんでもないなと思うと同時に、当たり前だがはるか昔から人間は蚊と戦ってきたんだなぁとしみじみする。昔こそ痒くならなければ戦いにならなかっただろうなとは思うが。

そして、蚊が人に病気を広まらせる理由というのは、もちろん病原体を持ち歩くからだが、結構な問題として「一匹の蚊が血を吸う範囲内に他の人がいる」というのがでかい。昔は近くにそれほど人がいる状況が少なかったため、最悪でも家族や村といった範囲に収まるが、今は普通に凄まじい勢いで広がっていく。つまり人が増えたから蚊による病気の被害が増えてきた。人から人に伝染る病気の場合、周りに人がいなければ流行ることはない。うーむ、これはさすがにどうしようもないのか… 人が増えることで土地、食料、燃料の不足という問題はよく聞くけど、病気が広まりやすいというのは余り考えたことがなかった。

でも、そうなると増えすぎる人口を止めることにもなるわけで、自然の対応策と考えることもできるのかもしれない。

・p51 蚊が人に寄ってくる理由とは?

蚊が人を見つけるのは二酸化炭素、匂い、熱

二酸化炭素の有無ではなく、濃度変化を検知しているらしい。確かに人間の吐く息の二酸化炭素は空気中よりは増えてるとは言え、微量のはず。二酸化炭素に反応するなら空気相手に針を刺そうとしてなきゃおかしいか…

そして匂い。汗かきに寄りやすいというのは本当のようで、研究でも確かめられている。ただ、実際どの「匂い」、どの分子が魅力的なのかというのは良く分かってないらしい。

また、O型が刺されやすいというのは実際に研究でわかっていることではあるが、血液型によって匂いなどが変わるわけもなく、未だに謎らしい。

熱はヒトの体表温度である32~34度で検知するらしく、環境温度がそれ以上になると探しにくくなるらしい。

じゃあ猛暑になっている最近はヒトを探しにくくて減っていくのでは…?それにしては猛暑でも普通に刺されてる気はする。涼しいところに逃げるからか。確かに日向をあっちぃ〜って歩いているときは蚊を見かけることは少ないかも…

ということで、遠距離では二酸化炭素の量や濃度変化で検知し、近づくと匂いで更に場所を限定し、最終的に動物の熱で着地地点を探して気づかれずに血を吸い取るという、恐ろしいくらいに良く出来たシステム…

・p82 蚊に刺されても痒みを感じない人がいる…?

蚊に絶え間なく刺されていればかゆみを感じなくなるらしい!マジか!じゃあもう蚊を防ぐのをやめるか。

と思いきや話はそう簡単ではなく、日本だと夏にしか発生しないため、刺されまくっても痒くなくなるのはその夏だけで次の年はまた痒くなるらしい。

これが発生するのはアフリカとかの四六時中蚊がいて、それこそ一晩で数百カ所刺され続けられるみたいな環境にあって初めて起きることらしい。下手すると貧血になるレベルだとか。

でも痒くならなければ積極的に退治することもなく、そのせいで病気が広まることもあったとか。でも耳元でプ〜ンって音、嫌じゃない…?いや、あの音=かゆみと紐づいているからめちゃめちゃ嫌に感じるだけで、それがなければただうるさいだけなのかもしれないな…

・一言感想

なんかこれだけ毎年蚊がイヤダイヤダと言っているほど付き合いが長いのに、知らないことが多かった。勉強になった。今後の蚊との接し方は特に変わらず、全力で倒していくだけだけども。

有用な研究がたくさんされているようなので、早く効果が出ることをすごく祈る… と言っても研究は全部以下に伝染病を防ぐかであり、蚊に刺されなくなるとか痒みを抑えるとかではないのが切ない。

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