「そこには悲しき表情のバタートーストがあった」
朝は365日食パン生活である。食パンのお供として、バター、チーズ、チョコレートスプレッド、はちみつなどがバリエーション豊富に常備してある。朝の気持ち良いスタートこそが、ノリに乗って1日を過ごすためには不可欠であると考えている。だからこそ朝食はしっかり食べることに決めているのである。
一階のキッチンで朝食の準備に取り掛かる。今朝のメニューはバタートースト、チョコレートスプレッドを塗った計2枚の食パン。ヨーグルト、ベビーチーズ、コーヒーとプチリッチなメニューに決めてみた。食べ過ぎではないのかというような戸惑いのカケラは1ミリも存在しない。
そして最近ハマっているのがYouTubeのコーヒー関連のBGM動画を見て、優雅な気分に浸りながら朝食を食べることである。リラックス効果を高める為に自分の部屋に朝食を運びこみ静かに食べることにしている。パンとコーヒーと音楽の親和性を感じる幸せなひとときである。
朝食の準備が整い、ボリュームたっぷりのメニューをこれでもかというくらいにトレイにのせてキッチンを出る。そして二階の自室への階段を一段一段と上っていく。
しかしその瞬間であった。
小鳥のクチバシがチュンと水を掬い上げるような優しいタッチの振動がスリッパの足先に伝播した。階段の手前にスリッパがギリギラ引っかかった感じだったので、回避してみせると挑んでみるもスリッパが脱げそうになり、前方へダイブしてしまったのである。完全なる不可避の事故が発生したのである。
「足が上がっていない」
ガシャんと音を立てたトレイの外には幸いにもトーストやコーヒーカップなどを落下することはなかった。食器を大破するという最悪の状況から何とか回避できたのが唯一の救いである。
しかし階段の一段分にたっぷりと飛散したコーヒーの華やかな香りに心が震えて悲鳴を上げている。しかし落ち込んでいる場合ではなく、そこからスピーディーな行動に切り替えたのである。家族に気づかれてはならないと先ずは忍者のようにティッシュを階段隅々に放り投げてコーヒーを軽く吸い取る。そして第一次コーヒー付きティッシュを回収して、水拭きタオルでコーヒーを拭き取る。最後の仕上げはタオルの乾拭きだ。ここまでの体感時間は3分程度だったと思う。カップラーメンの出来上がり時間に勝るとも劣らないスピーディーな行動に自分でも感心した。
とりあえず現場検証を終えて、自室にトレイを運び込み事故処理を行なう。トレイの上には目を疑うような惨劇が広がっている。バタートーストは変色し、しんなりとした悲しき表情をしたコーヒーバタートーストが皿に寝そべっている。
「こんなにもぐったりとするなんて」
ヨーグルトにもコーヒーが飛び散り、水玉模様の失敗作のような斑点模様が描かれている。チーズは水分を得て瑞々しい姿になっている。おまけにコーヒーはカップの半分以下の量までに激減している。
「俺のコーヒーを誰が飲んだんや」
他人の仕業にしてしまいたくなるほどの激震が体の中に走っている。
「全米が泣いた。俺も泣いた。」
気持ちよく1日をスタートするつもりが、朝一にこんな惨劇が起こるなんて信じられない。そして自室には癒されるはずのYouTubeのコーヒー関連のBGM動画が悲しく鳴り響いている。
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