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まさにのび太の気持ちが、己に憑依した瞬間であった

それはソロモンの偽証の読書に没頭している最中の出来事であった。

突然、暑苦しい自室にスマホの呼び出し音が鳴り響いた。どっぷりと読書中だったのでかなり驚いてしまった。そもそも電話なんて突然なもので、ラブストーリーと同じなのに。

その電話の主は長女だった。

「もしもし財布忘れた」
「今、どこにおんねん」
「もう駅に着いてる」
「財布どこにあるねん」
「椅子のところに掛けてある茶色カバンの中に入ってる」

そう言われたものの、さすがに女子のカバンを開けて財布を捜索するのもいかがなものかと思い

「茶色のカバンごと持っていくわ」と答える。

その言葉が終わるや否や、速攻で車を走らせ駅に向かう父の従順な立ち位置。

運転中、昼時ということもあり、「財布を届けたついでにお昼ご飯の弁当を買いに行く」と決心した父であった。

しかし車を走らせ駅に向かうも、間も無く信号に引っかかってしまった。

ロスタイム中、何気なくルームミラーを見るとこちらを見つめる自分と対峙した。

「俺マジか?」

唖然とした。

真夏というのに、一気に体中に寒気が走り顔が真っ青になった。

「俺カチューシャしてるやん」
「タンクトップ着てるやん」
「トドメにドラえもんのズボン履いてるやん」

焦ったあげく、頭の中を過ったのは

「ドラえもん!着替えの服を出して!」

まさにのび太の気持ちが、己に憑依した瞬間であった。

10分ほど経過し敗戦モードの中、長女の待つ駅に到着し、財布は届ける任務は無事に完了した。

しかしこの出立ちでは、弁当購入は諦めざるを得ないと判断し自宅へまっしぐら。

改めてカチューシャを外し、キャップを被り、Tシャツ、ジーンズに履き替えて、近所のスーパーに向かった。

かなり慌ててしまったが、無事に財布を届け、弁当購入も完了した。よくやった自分へのご褒美としてざるそばも購入して一件落着したのである。

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