「ネルネルなジャージと蛍光色のリュック」
通勤通学帰りの社会人や学生で賑わう夕方の大阪メトロ。駅に到着した電車のドアが開くと、車内から押し出されるように多くの人々が駅に降りてくる。僕はその人々と入れ替わり、吸い込まれるように車内に取り込まれていく。
運良く空席を見つけ座る事ができた。ふと見上げると僕の目の前に若い男性が立っていた。きっと大学生くらいだと思う。黄色のチェックネルシャツの下には2本の白線の入った黒いジャージをコーディネートしている。そしてリュックは眩しい限りの蛍光の黄色で、なかなかの煌びやかさである。
ネルネルジャージ君はスマホに夢中である。足元に蛍光色の黄色いリュックを置き、両足で挟んでいる。乗客に接触しないようにという配慮も虚しく、着席した瞬間から僕の膝と脛辺りにコツコツとリュックがタックルを仕掛けてくる。とても残念且つ迷惑である。いっそ蛍光色のリュックと共にネルネルジャージ君をリフトアップして網棚に載せてやろうかと妄想した。電車の揺れに同期した紙相撲の力士のような蛍光色の黄色いリュックが僕の膝と脛に迫ってくる。足でじわじわと押し返すもののネルネルジャージ君はスマホに夢中で僕の優しいタッチのソフト突っ張りに気付く気配は一切ない。あまりプレッシャーかけて強めに押してしまうと蛍光色の黄色いリュックが床に擦れて汚れてしまうのではと、こちら側が気を使うほど眩しい煌びやかな黄色なのである。その後も押し合いの攻防は降車駅に到着するまで15分ほど続いた。
ネルネルジャージ君の攻撃から開放され、電車を降り駐輪場で自転車を引き取り、自宅へと向かう。しかし自転車がやる気を無くし、パンク寸前で脱力しているようだって。よく見ると前輪の空気が抜けている上にタイヤの溝がなくなりズルズルの状態である。先日、後輪を交換して6000円ほどの出費があり、今回は前輪交換かとは憂鬱な気分になる。安全確保の為にはやむを得ず、近所の自転車屋さんでタイヤとブレーキシューを交換することにした。合計9000円ほどでかなり痛い出費になってしまった。
修理に時間がかかるとの事で、店内を見て時間を潰すことにした。
「あー、ヘルメットもいるよなー」
「いっそバカ殿みたいなやつとか」
「食パンみたいなやつとか被るか」
そんなことを妄想していると前方で床に座り込んでいる男性を発見した。どこかでみたような気がして、頭の中をぐるぐると掻き混ぜて記憶を辿る。
その男性はドデカミンを飲みながら、パンを握りしめている。
「ん?あの蛍光色の黄色いリュック!」
「電車におったネルネルジャージ君やんけ!」
「またここでも遭遇する?」
ネルネルジャージ君も自転車の修理で、同じ自転車屋さんに来ていたのである。修理を終えた店員さんがネルネルジャージ君に修理の状況を説明しているがネルネルジャージ君の反応が鈍い。僕は心の中で呟いた。
「聞きづらかったら最初からイヤホンを外したらいいのに」と。
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