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「全日本カリカリ争奪選手権」

先日、タリーズのコーヒースクールを受講した。ハンドドリップでのコーヒーの淹れ方、器具の使い方、カッピングなど。コーヒー初心者の僕には最適の内容だったと思う。その後もコーヒー熱は冷めることがない。今や自室で妄想カフェなるものを満喫する日々を送っている。妄想カフェとは自室の狭い空間の中でコーヒーを淹れ、パンを食べたり、チョコを食べたりと完全なる癒しの空間である。不健康であり、精神衛生上は健康的でもある至って健全なスペースも言えよう。

妄想カフェにはそれなりの準備が必要である。コーヒーを淹れる為、器具やお湯の準備、豆を挽くといった行為がそれらである。まだコーヒーにまつわる準備品に過不足が生じており、コーヒースケールの購入などが遅延している。調子に乗って何かと購入し、資金という財布の中が枯渇しているのが原因である。毎度、優先順位を考えずカタチから入る格好良さと物欲に任せた行動が導いた愚行の結果そのものである。

コーヒースケールについては料理用のキッチンスケールを代用している。それが故に自室から一階のキッチンに足を運ぶ必要が出てくる。コーヒーキャニスターと未開封のコーヒー豆を手に軽やかなステップを踏むように一階への階段を降りる。そしてコーヒー豆の香りを堪能しながら袋を開封し豆の軽量を行なっていると我が家の猫6匹中4匹が僕を取り囲んできた。まさに全日本カリカリ争奪選手権の様相を呈している。それと同時に僕の頭の片隅には中学時代にヤンキーに絡まれた際の嫌な過去の思い出がうっすらと過ったのである。

我が家の猫たちはツンデレなので気分次第で擦り寄ってきたり、撫でようとすると逃げていく事が多々ある。いつもは僕がキッチンにいても見向きもしない時があり、今回のように4匹の猫に取り囲まれることは皆無である。

しかしこの時に限ってはいつも違っていた。キッチンスペースに猫たちがどんどんジャンプして上ってくるのである。まさに猫まみれという状態がぴったりである。そもそもコーヒーに含まれるカフェインは、猫が飲むと中毒を引き起こしてしまう危険があるそうなので、慌ててコーヒーから猫を引き離さなければいけない。1匹づつ床に下ろし、また違う1匹を下ろすという反復運動をひたすら繰り返す。

「何故、今日はこんなにも寄ってくるのか」
「ツンデレが過ぎるのではないか」
「にゃあにゃあ言うてるやん」
「何でそれがええねん」
「コーヒー豆が入っとるだけやのに」

理由を詮索しながら猫の様子を観察していると、何やらコーヒーキャニスターに関心を示しているという研究結果を導くことに成功した。猫たちの行動を継続観察していると、ふと家内の言葉が僕の頭の中を過った。まさに天の声のようであった。

「あんたのそれ猫のカリカリ入れと同じ入れ物やで」

我が家の猫たちは僕のコーヒーキャニスターに入ったコーヒー豆を餌のカリカリと勘違いし、ひたすら反応していたのである。たしかにコーヒー豆が揺れた時に鳴り響く、カラカラっという音はカリカリの音と酷似している。一夜にして我が家の猫たちの人気者に上り詰めた感激に打ち震えていたのも束の間の喜びであった。猫たちが僕に興味のなかった寂しさとイライラした心の奥底が若干カリカリしている。

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