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友達が1人もいない メッセージ ~拝啓・俳優の大倉孝二様~

 私には友達が1人もいない。突然このような手紙をしたためて申し訳ありません。俳優の大倉孝二さんですよね?私は立花まさるという冒頭に申し上げたとおり友達が1人もいないノーアミューズメントな日々を送るどうしようもない人間です。

 もちろん私のことなんてドラマや映画で大忙しの大倉孝二さんは存じ上げないと思います。普段はnoteという知識と叡智の収集と鍛錬を目的とした知的コンテンツにて孤独、憤怒、羞恥を念頭においた屁理屈極まりない記事をあろうことか毎日投稿し続けるnote界の不穏分子として一部の変態的読者にのみ評価を得ている愚劣な輩です。ですが屁理屈の延長上に哲学があることから私の駄文を最後まであきらめずに読んでいただければと切に願っております。

 多忙な日々を送る大倉孝二さんにとってこの駄文を読むことが演技のパフォーマンスを27%ほど低下させるかもしれませんが信じて欲しいのはこのような手紙をしたためたのは大倉孝二さんにとても感謝をしているからなのです。ただ感謝の想いを伝えるすべが日本が誇る名優大倉孝二さんと有明海のムツゴロウの如く泥にまみれた私とでは到底会うことも話すことも叶わないためこのような手紙を一方的に送り付けるという不躾な形となってしまいました。申し訳ありません。どうか寛大な心で私のこの行為を足の薬指ぐらい可愛げのあるものとして処理していただけないでしょうか? 

 大倉孝二さんともあろう世界にうって出る・・・ダラダラと申し訳ありません。そんなに本題に関係のない部分を薄く延ばすというのは毎日投稿を続ける上での私の阿呆で狡猾なタクティクスなのです。その悪癖があろうことか大倉孝二さんへの大事な手紙だというのに出てしまいまいした。もし大倉孝二さんがこのダラダラと長い文章に腸をこんがりとキツネ色になるまで煮えくり返っていたらと考えると震えが止まりません。なんで私はこんなどうしようもない人間にな・・・本当に長すぎました。申し訳ありません。

 私はこれまでの文章から分かる通り人間性がメビウスの輪くらいひねくれ社交性が死滅した人間です。そのため人間関係が必要不可欠な社会がむいていません。もはや現実をストライキしたくなる現状ですが仕事となるとやはり最低限のコミュニケーションは必要です。そのため普段は目すら合わせない関係性である職場の人間と仕事上必要最低限の会話をすることはあります。しかしそんな必要最低限の会話すらしない先輩がかつていたのです。

 その先輩はもう辞めてしまったのですが私以上にコミュニケーション能力の欠損が激しく哺乳類がむいていない方でした。私以上になにかに思い悩み常にため息をついていたため大気中に溶けていった先輩のため息が天井にクラゲのように揺蕩っているようでした。そして上司に怒られたときに怒られすぎてその場で失神をしてしまったこともあります。それが私が人生で唯一見た人が失神する瞬間でした。そんな姿を見られた気まずさもあるからなのか先輩は我々他の従業員と常に壁を築き上げて自分の城に閉じこもっているようでした。そんなときに現れたのが大倉孝二さんなのです。

 おそらく意味が分からないと思います。こんな陰湿がスムージーのようにまじりあった下層の職場のゴタゴタと大倉孝二さんは微塵も関係がないとお思いでしょう。しかしあったのです。大倉孝二さんは私と先輩が勤める店の前を通ったのです。

 私はマスクをしていたとはいえその人物が大倉孝二さんであるとすぐにピンときました。しかも調べればその日は大阪で公演のあった舞台に大倉孝二さんは出演されていたということでまず間違いがないと己の中で確信を持ちました。そんなときです。


「今の大倉孝二だよね?」


 先輩が私にそう尋ねたのです。先輩が私に話しかけてきたことにまず驚きました。普段全く喋らない先輩が普段全く喋ったこともない後輩に確認をとらずにはいられないほど大倉孝二さんを生で見たかもしれないという出来事は先輩にとって偉大だったのです。なので驚きを押し隠し私も返答をしました。


「今の大倉孝二だよね?」

「はい。多分そうです。」


 ・・・これが先輩との最後の会話になりました。先ほど申し上げたとおり先輩はやはり職場が合わなかったからなのかその数週間後には辞めてしまいました。もしあのとき大倉孝二さんが通りかからなければ私はその先輩と一切話すことがないまま別れていたことでしょう。

 大倉孝二さん。あらためてお礼を申し上げます。先輩との話のきっかけを作ってくださりありがとうございました。大倉孝二さんのこれからの成功と繁栄を心より願っております。

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