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鼻の折れた天狗の話(カラス天狗)

近所の丸山に住んでいた天狗は立派な鼻が自慢です。いつも自慢の鼻を高々にして村を歩き回ります。

田んぼの水面に写しては「ふんふんふんふーんふんふんんふ」と言葉にならない言葉でうっとり顔です。

それを見ていたカラスが天狗めがけて急降下。

「ふん」と振り向いて自慢の鼻でヒッテング、カラスはカキーンと場外へ

でも、天狗の鼻は、勢い余ってポッキリ。自慢の鼻が織れちゃった。
あら、どうしましょう。赤い顔がさらに赤くなり目まで真っ赤にしています。

それから天狗は丸山に引きこもって出てこなくなりました。

引きこもったままで、話は終わりではありません。

天狗は小さいころから。自慢できるものがありませんでした。お母さん天狗から「ダメな子だ」と「出て行ったお父さん天狗にそっくりだ」と言われ続けていたので嫌われないように頑張りました。がんばれば天狗の鼻は。大きく立派になるのです。その鼻はがんばった証拠なのです。

がんばらない天狗仲間には厳しい態度を取ります。自分の子供にも同じようにがんばることを強要していたのです。

自分ではダメな天狗になったと思いました。
がんばる事ができない天狗になったのです。

「がんばらなくてもいいのよ。ふんばって自分のできることをすればいいのよ」天狗の奥さんが言いました。

「ふんばるってどういうこと?」天狗は尋ねました。「くよくよしていじけないこと笑って次のチャンスをつかみ取る準備をするのよ」

天狗は天狗のお面を作ったのです。自慢の鼻を模したりっぱなお面です。

天狗は自分の折れた鼻をさらに短くしてしまいました。鼻が邪魔で今まではお面をつけることができなかったのです。

自分の作ったお面が被れないなんておかしな話です。お面の鼻は色とりどりでたくさん作りました。

天狗はその作ったお面を全国に売り回ることにしたのです。

天狗はチラシを作りました。

お面をかぶるなら、鼻は低いのが良い。
高い鼻はじゃまになるだけ。
役に立つのは低い鼻だよ。

お面かぶるなら低い鼻。
カラスひっ叩くなら高い鼻。

それからカラスは天狗の弟子になりました。
それがカラス天狗です。

創作昔話です。

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