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トークイベントに出る時の鉄のオキテ

100人の会場でのトークイベントなんて有名人のすることだと思っていた。
ところがこの冬、『褒めてくれてもいいんですよ?』を刊行した私は、なんと憧れの青山ブックセンターで出版記念イベントをすることとなった。

100人て…! 私、友達3人しかいないのに。

そのような身の程をわきまえない貴重な体験をさせてもらったので、ここぞとばかりに書き記したいと思う。また、トークイベントで気をつけるべき重要なオキテも見つけたので、これからイベントなどに登壇される方は参考にされるといいと思う。

そもそも青山ブックセンターなんてすごいところでイベントができたのは、全て前田さんのおかげである。「いつかABC(青山ブックセンター)なんかでできたらいいなあ」なんて思っていたところ、前田さんというビッグネームによってサクッと「この日はどうでしょう」とすぐ話が進んでしまった。

え! ちょ、ま!?
渾身の、ちょ(ちょっと)、ま(まって)(まじで)が、心の中でこだましたが「じゃあこの日で」「100人満席にしよう!」「はい!頑張ります!」
ということで開催が決まった。

集客の顛末ついては、このnoteのサムネだけでお分かりの通り、厳しい戦いになった。



13人から何人に増えたのかわからないまま、やってきた当日。

青山ブックセンター本店

青山ブックセンターといえば……の長いエスカレーターを降りて店内に入ると、イベント会場のさらに奥の控え室に通された。
控え室…。芸能人みたいやん。

開始時間が来たら、前田さんと私の名前が呼ばれ、拍手で迎えられる中を登壇者として恭しく登場するという手筈だった。

しばらくして前田さんが到着された。「ご無沙汰してます」などと一通り挨拶すると、前田さんは到着30秒で「ガソリン入れるわ」と缶酎ハイを飲み出した。
「他人のイベントはめっちゃ緊張するねん」だそうだ。

「他人のイベントはめっちゃ緊張するねん」

え!前田さんみたいな100万回トークイベントしてきた人でも緊張するの!?
それまでなんだか現実味が湧いておらず、ホワホワとしていたが、そんな前田さんを見て俄然、緊張してきた。

実は、この愛されたい系クリエイター界の重鎮であられる前田さんが対談してくださるということで、かなり安心していたのだ。
前田さんのトーク力は承知している。めちゃめちゃおもろい。だから、困ったら前田さんを見つめればなんとかなるだろう、と思っていたのだ。

あれ…大丈夫か? これ。
ソワソワしてきた。
ここでウロウロしてしまったのがまずかった。

【オキテその1】控え室から外へ出るな。

いてもたってもいられなくなってきて、控え室からちょっと出てウロウロしてしまった。
すると、なんと会場の入口で並んでいる人たちと出くわしてしまったのだ。

「えっ、斉藤さん!?」
そこにいた4人くらいの人たちが一斉にこちらを見た。
しまった! 会っちゃった!

このあと「拍手でお迎えください」されて初めて登場するはずの登壇者が、もう普通にウロウロしていて話しかけ放題だ。恥ずかしすぎるんだけど。
「拍手でお迎え」される中、私はどんな顔で登場すればいいんだ。「いや、あんたさっきウロウロしてたし」と絶対に思われるだろ。

4人もなんだか気まずそうにしている。「なんか見ちゃってすいません」みたいな顔をしている。気まずくさせて、申し訳なさすぎる…
「あ、じゃああとで…」とかなんとか、死ぬほどダサい言葉を残してそそくさと控え室へ戻った。もう2度と控え室からは出ないと心に決めた。

**

そしてやってきた開始時間。盛大な拍手と共に迎えられた。
案の定「さっき普通にいましたけどね…」という微妙な気持ちで入場した。

しかし、会場を見て仰天した。なんと、50人くらいは来てくれている…! ちゃんとトークイベントっぽい風景がそこには広がっていた。

なんてことだ! みなさん、ありがとう! 本当にありがとう!!
ガラガラすぎて、来てくれた方に気まずい思いをさせることになる…!と、この1ヶ月ずっと、夢にまで見るほど不安だったのだ。

嬉しくて、安心して、もう泣きそうだった。いや、、頑張るしかない! 平日の19時にわざわざお金を払って集まってくれたこの優しい人たち、全員を笑わすぞ!
そんな気持ちで壇上の椅子に座った。

え……みんな、こっち見てる。そうか、あたりまえか。登壇者を見るに決まっている。
やばい。誰も笑っていない。あたりまえか、何も喋ってないんだから。
というか、照明でみんなの表情はよく見えない。微笑んでいるのか、真顔なのかどっちなんだ。

1秒前の感動と喜びがすぐ吹き飛んで、一瞬でビキビキっと頭がフリーズした。緊張で脇からドブアーっと汗が噴き出ている感覚がした。
こんなに安心と緊張がすぐに切り替わったりして、私の自律神経は大丈夫なんだろうか。

会が始まった。
司会であり、本の編集者でもあるべっくやさんが、進行をしてくれている。大丈夫だ。一年一緒に頑張ってきた彼女が横にいる。大きく深呼吸をして、腹を括った。

始まったばかりの頃。この時の記憶なし。
超苦笑い

オキテその2。ペットボトルの蓋は先に空けておけ

緊張と、照明の暑さで、水が飲みたくて仕方がない。新品の水(ペットボトル)が机に置かれている。しかし、すでに会は始まっていてマイクを持って話しているので、どうにかして片手で開けるしかないのだ。
無理やん…。左手にマイクを持ち替え、右手(利き手)で開けようとするも、親指と小指でペットボトルを包みもつと、余る指は3本。
無理やん…。詰んだ。

ペットボトルに必死になっていると今度はべっくやさんや前田さんの話が入ってこない。こうなったら、もうマイクを置くしかない。
前田さんがこれは長めに話してくれそうだな、と思ったタイミングで速攻でマイクを放棄して、両手でサッと開けた。ふう。

前田さんのキャップは開いている

これはもう普通にただの有益なアドバイスだ。トークイベントが始まる前にペットボトルの蓋を開けておけ。

前田さんの手元を見ると、ちゃんと最初に開けていたようだ。ほらね。慣れてる人は、始まる前に開けているじゃん。

「全然焦ってないですよ?」という顔して、ガブのみしているところ

オキテその3。ちゃんと質問に答えろ。

これはもう、半分仕方がない。私は話が下手なのだ。だからエッセイストになっている。
質問に対する答えを考えながら話しているうちに、どんどん出発地点から離れていってしまい、終着地点が全く違うところになってしまうのだ。
覚えているだけでも6回「質問なんでしたっけ?」とべっくやさんに尋ねるハメになってしまった。本当にすいません。頭の中でちゃんと終わりまで構成して話せる人を、心から尊敬します。

話がどっか行ってる私

オキテその4。オフレコだからって、もうちょっと考えろ。

これもごめんなさい。ちょっと個人的な願望や嫉妬について話しすぎて引いている人とかいたよね。
帰ってからも、お風呂の中でのぼせるほど反省した。なんであんなことまで言ってしまったんだろう。器が小さすぎるし、情けなさすぎるし、惨めすぎる。聞いた人たち、どうか忘れてください。

でもやっぱり私は愛されたいし、もっと褒められたいし、2ちゃんねるに悪口を書かれたいんだ!

「2ちゃんねるで叩かれたいです」
「あの人に嫉妬してます!あはははははは」

オキテその5。サイン会のペース配分。

実は、トークイベント自体よりもその後のサイン会が本当に怖かった。誰が私のサインなんているんじゃい。と思っていたからだ。

「さあでは、サインがほしい人はどうぞ!」
…シーン…
となったら、私はその場で爆発して死にたいくらい恥ずかしいだろうと思っていた。もしくは3人くらいで終わってしまい、みんなが雑談している中、一人ぽつんと壇上で一点を見つめて座っている状態を思い浮かべていた。

そしたら、もうみんなより先にそっと帰るとかなのかな? でも私の人生ずっとそんなんだったし、まあ慣れてるけどね…ははは、と思っていた。

ところが蓋を開けると、3人どころかたくさんの人が並んでくださっていた。なんだこの光景は。本当に、自分は夢を見ているのかもしれない。

そもそもが、今日この会に来てくれた人一人ずつに土下座して感謝申し上げ、一人30分ずつ肩揉みでもして差し上げたいくらいの気持ちだったので、その状況にさらに感激してしまい、一人ずつじっくり時間をかけすぎてしまったのだ。

この距離だと脇汗が臭いのがバレるんじゃないか心配だった

例のごとく、話は下手なので、ひたすら「ありがとうございます」を繰り返すだけの壊れたロボットみたいだったけれど、この感謝、どうにかして伝えたい!と、ゆっくり時間をかけてすぎてしまった。

たくさんの時間を最初の方でかけすぎてしまったため、最後の方の方には、お店の閉店時間をすぎてしまうほどお待たせしてしまったのだ。体調が悪い中、来てくださってた方もずっと立たせて待たせてしまっていたという最悪なことをしてしまった。本当に申し訳ありませんでした。

これも、ガチなポイント。サイン会で一人ずつに感謝をしたい気持ちは山々だけど、後の人をお待たせしないで済むようちゃんとペース配分をせよ。

**

たくさん失敗もしたけれど、こうして初のトークイベントは無事終了した。

催眠術の白井先生のおかげで、ややウケてるところ

人気者に憧れる気持ちをひた隠しにして、一人で教室の片隅で漫画を描いてクサクサしていた私に、まさかこんな日が来るなんて。こんなことが自分の人生で起こるとは想像もつかなかった。何十人もの人が会いに来てくれて、褒めてもらえるなんて、笑ってくれるなんて、こんな漫画みたいなこと、自分にはありえないと思っていた。

本当に書いてきてよかったな。

自分の中の、拗れたまま固まっている部分が、少しほぐれて柔らかくなって、素直になれている気がする。
来てくださった皆様、こられなかったけれど、応援をしてくださった皆様、本当にありがとうございました!

これで、一生分の承認欲求が満たされました。もう大丈夫! ……な、わけないでしょう? 

私はまだまだ褒められたい! もっともっと笑わせたい!

これからも、もっともっともっと、褒めてくれてもいいんですよ?

褒めてくれてもいいんですよ?


おしまい

*おまけ*

イベントに来てくれたイラストレーターのあゆみさんが、会場でこんなにかわいいグラレコをしてくれました!
来られなかった方にも内容をおすそわけ!

あゆみさん本当にありがとう!

写真撮影(綺麗な写真の方):そーじまあつし

粗い方の写真:私のスマホなど


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