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読書感想「雷と走る」千早茜

ネットのレビューで評判が良くて。
確か「しろがねの葉」を読んだ時、皆さんの感想を見てて、そこいらから見つけたんです。
千早さんの書く文章にかなりハマってしまいまして。

なんかすごいリアルな描写で、まるで自分もその場にいるみたいに感じとることができるんです。
もちろん千早さんの技術なんでしょうけど、それ以上に世界をみるメガネの度数が自分と似ている気がして…おこがましいですけど。
文章がスッと入ってくるといいますか。

なので、今回も迷わず手に取りました。
まず表紙がステキ。魅入ってしまう。

お話としては、幼少期、親の仕事の都合でアフリカの地で暮らすことになった主人公の、番犬との思い出と、なにかモヤモヤしながら生きている現状との対比をしながら、番犬である虎との主従関係を超えた親愛や友情のエピソード、そして別れ。

虎との関係を超えられないであろう恋人への感情や、これから訪れる未来。そこには虎はいないけど…。
でも、捨てたのは自分。
モヤモヤはしたまま。だって昇華しようがないもの、この想いは。
切ない、というか、苦しいというか。でもだからこそ美しく何物にも代え難い大切な過去なのだわよ。
それを思い出というにはあまりにうすっぺらいのだけど。…といったところ。

千早さん自身が幼少期、異国で暮らした経験があるとのことで。
日本とはあまりに違う環境での生活はご自身の考え方や感覚に大きな影響を与えたんだろう、ということは、主人公の描き方を見ると感じとれるところがあります。

なにより、アフリカの描写、少女の見ている世界がとても生々しく伝わって、私にはカチっとチャンネルがあったみたいに心地よい読後感。


また他の作品を読み進めていきたいです。

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