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【短編小説】首さがし
その足軽には、首が必要だった。
へし折れた脚を引きずり、彼は槍をきつく握りしめる。
先刻、敗走した敵方の将が、山奥へ逃げ込んだと小耳に挟んだ。
これ幸いとばかりに、足軽は折れかけた心を奮い立たせ、槍を杖にして山の方へと転がり込んだ。無論、落ち延びた敵将を探し、討ち取るためだ。
草むらに身を隠し、人の気配を探る。
敵の気配を探り、息を殺し、感覚を研ぎ澄ませて獲物を待ち構える。
こ
【短編小説】あなたが美しかった頃
どこか遠い時代、遠い国でのお話。
戦火のさなか親を失った子らを救い、聖女と呼ばれた修道女がおりました。
これはそんな聖女が、まだ見習い修道女だった頃の物語……
その頃は、街の至るところに険しい顔をした衛兵がおりました。隣国との戦争が近く、街中の空気は自然とひりつき、人々の営みにも暗い影を落としました。
修道院の付近にも武器を持った衛兵が毎日のように佇んでいて、修道女たちの噂話の種は、