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『キッチン』を読んで

本を読んで久しぶりに泣いた。

クリニックから帰るバスの中で、独り。誰にも心配をかけない一番前の席で良かったと心から思った。
本のタイトルは吉本ばなな先生の『キッチン』。Twitterのタイムラインに流れてきた一節に妙に心を掴まれて、たまたま立ち寄った本屋さんで購入した。

吉本先生の文体は、驚くほどに私の体と心に馴染んだ。一つ一つの言葉や言葉の組み合わせ方が、美しくて素敵で体じゅうに染み入った。
そして何より惹かれたのは、文章が『死』に近いところにあるところだと思う。死の香りに満ちた、けれども読了後はどこか希望の欠片を感じる、吉本先生の文章の虜だった。

若くして持病を患ってから、五年が経った。周りの同級生は順当に「大学生」や「社会人」になって、私だけが何者にもなれないまま、宙ぶらりんの日々を過ごしている。持病を患ってから、死を身近に感じるようになった。死を何度も何度も希った。この文章を書いている今も。

そんな灰色の日々の中に、『キッチン』は一滴の鮮やかな雫を垂らしてくれたように思えた。先の見えない辛い日々を照らしてくれる、小さな灯火になってくれたような気がした。

文庫版のあとがきも含めて素晴らしい作品だったから、今迷える人に是非読んでほしいと思う。もしかしたら、今この文章を読んでくださっている貴方の、人生の灯火となるかもしれない。

最後に同じように苦しんでいる方へ。一緒に一歩ずつ、幸せへと歩めるといいですね。頑張れなくても、何事も成せなくても、ここにいることに、多分意味はあるから。

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間
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