![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/18800989/rectangle_large_type_2_f3672f7ed119bec551308d996fc3685a.jpeg?width=1200)
隠し扉の奥で、子どもたちに夢を売る——アメリカのおもちゃ屋さん「キャンプ」
by パケトラライター 上野朝子(アメリカ・ニューヨーク在住)
近頃ニューヨークでは、買い物が楽しい「体験」としてエンターテイメント化されている、体験型ショップ「リテールテイメント」が小売業界で注目され、業績を上げています。「リテールテイメント」とは、「小売=リテール」と「娯楽=エンターテイメント」を融合させた商業形態のことを指します。
今回は、A Family Experience Store「CAMP(キャンプ)」というおもちゃ屋さんをご紹介します。2018年12月にマンハッタンの五番街に1店舗目をオープンし、2020年1月現在、マンハッタンのハドソンヤード、ダラス(テキサス州)、サウスノーウォーク(コネチカット州)にあり、最近はブルックリン店もオープンしたところです。
Photo:A Family Experience Store「CAMP(キャンプ)」
何も知らずにキャンプの店内に入ると普通のおもちゃ屋さんなのですが、「マジックドア」と呼ばれる、一見、陳列棚に見える秘密の隠し扉を開けると、その先にはテーマパークのような空間が広がります。私もブルックリン店で実際に体験しましたが、大人でもワクワクする仕掛けでした。
Photo:さて、マジックドアはどこでしょう?
Photo:こちらでした。笑顔たっぷりで「楽しんできてね!」と声をかけてくれた店員さん。
Photo:マジックドアの向こう側の店内にはバギーの駐車場があり、昼間はほとんど満車です。
Photo:最初に目に飛び込んできた風景は、キャンプ場内(店内)の地図とイベント情報、そして古いワゴン車です。
アメリカのサマーキャンプ場のような趣。これは子どもだけでなく、大人も盛り上がります。地図によると、テント、ディスコ、郵便物集配所、ラジオ局、スポーツフィールド、湖、シアターといったコーナーがあり、日替わり、週替わりで様々なイベントが行われています。
Photo:小屋が並ぶコーナー。
Photo:ディスコの小屋にはミラーボールも。
Photo:店員はキャンプ場のお兄さんお姉さんという雰囲気で、フレンドリーな接客がモチベーションを上げてくれます。
Photo:オリジナル商品は主に「CAMP(キャンプ)」のロゴ入りのファッションアイテムで、たとえばブルックリン店にはブルックリン橋の絵が入ったトレーナーなどもありました。写真は、ロッカーを想定した什器にディスプレイされたオリジナルのTシャツやボール。
Photo:おもちゃ(商品)も充実しています。
Photo:ゲームのコーナー。
Photo:クラフト関係のおもちゃや本のコーナーは、キャンプ場の古いテーブルの雰囲気をわざと作っています。
Photo:ここは「湖」という設定。
Photo:飲食のコーナー。ブルックリン店にはブルックリン発祥のオーガニックアイスクリーム店のアンプルヒル・クリーマリーが入っていました。マンハッタン店には前回取材したミルクバーが入っています。
Photo:native(ネイティブ)という靴メーカーのコーナーにはリサイクルボックスが置いてあり、このメーカーの古い靴を持って行くと新品が10%オフで買えます。回収した靴はプレイグラウンドのフロア素材にリサイクルされます。子どもたちとリサイクルについて話せる場としての役割もあるのです。
Photo:最近は男女兼用のトイレが多いニューヨーク。キャンプのトイレはファミリー用のみ。
Photo:お客さまの声をピンナップしているボード。
おもちゃの品揃えも、旬なもの、クラシックなものを取り揃えており、子ども連れでイベントに参加しなくても十分楽しめる店だと思いました。
また、会員(無料)になると、ギフトカウンセラーと呼ばれるシステム(予約制)が利用できて、フリーギフトラッピング、プライベートイベント、誕生日のスペシャルサービスのほか、ポイントが貯まるとフリー・アクティビティチケットやパジャマパーティへの参加、送料無料特典、コーヒーやアイスクリーム、Tシャツがもらえます。ウェブショップも充実していて、ポイントが貯められる仕組みになっています。
古くからニューヨークでは「FAOシュワルツ」という1889年創業のアイコニックなおもちゃ屋さんが有名で、各フロアにテーマがあり、映画の舞台にも幾度かなりました。
ティファニーやバーグドルフグッドマンといったニューヨークの老舗高級店が並ぶ五番街にあった本店は、おもちゃだけでなく「夢を売る」店として、子どもから大人まで、ニューヨークに行ったら訪ねたい店のひとつとして、長く君臨していました(テナント料の高騰やAmazonの出現で、2015年に一度閉業し、現在は新しい経営者のもと、場所を変えて再業しています)。
店員とのふれあいや楽しい体験を提供する新感覚のトイ・ストアとして「キャンプ」を取材しましたが、店内を歩きながら、新しい感覚の店というより「FAOシュワルツ」のニューバージョン、原点回帰なのかもしれない、と懐かしい気持ちになりました。
A Family Experience Store「CAMP」
ビジネスのヒントに。「パケトラ」
by パケトラライター 上野朝子(アメリカ・ニューヨーク在住)