その におい どこから
最初に謝罪させていただきたく存じます。
誠に申し訳ございません。
***
私は普段、物置で寝起きしています。
あ、物置っつっても、比喩ですよ。本当の、100人乗っても大丈夫な四角い箱に居る訳ではないです。仕事辞めて実家に戻ってきて、実家っつっても住んだことのない借家なもんで、物置と化した和室6畳うち3畳はでっかい箪笥で占められている所に、ひとり暮らし10年以上で培った私物らを4割減らして詰め込んだ段ボールの山を築き、その一角にこさえた万年床を設置して私の部屋っていうか寝るだけの場所にして、居候しておるんでございます。
そうすると、机がないんですな。では、どこで この記事を書いているかと申しますと、リビング中央にドンと構える炬燵でございます。家族勢ぞろい@炬燵ですよ。そして、各々好き勝手にやっております。テレビで中国ドラマ見てたり、iPadで魚釣りの動画見てたり、ゲームしてたりするんですわ。そんで、私はノートパソコンでカタカタと、こうして文字を一文字一文字書いておるんでごぜえやす。
前置きが長くなりましたが、そんなある日のことです。
今日も今日とてキーボードを打っておりましたら、なんか、くせえな。と思いまして。
どっかで嗅いだことのある におい。匂いじゃなくて臭い。
あれですわ。
中学生の夏、体育の授業あるいは部活で汗だくになって走り回った後、彼方からの風に誘われて、鼻をかすめる香しいやつ。むわあっ...と上がってくる、汗と皮脂が混じった青春の香り。
サマー靴下 of ラブ
絶頂かしら、その足の裏のにおい。
それが、リビングのどこからやって来ているのだか、私の鼻をむん...と かすめました。私は地面を這い、冷ややかな目線を感じつつひとり、においの素を探し求めるのでした。
あ、すいません、足嗅がせてくださいまし。
違うなあ、あ、すいません、嗅がせて、あ、ごめんなさい違いました。
どうも、家族の足ではなさそうだ。椅子に座り直し、書き止まっていた記事の続きを再び紡ぎ始...しかし、やはり、におう。
Why
それは、妹付近から漂ってくるような感じがするようなしないようなするような。私注意深く観察。臭いは目に見えないが、私の眼は、炬燵の上のほこり1粒まで見逃さない。
どうやら、臭いは下から上へ せり上がってはいないようだ。
なんて言うんですか、平行感。
鼻と同じくらいの高さから、そのにおいは漂ってきていました。机の上には飲み物の入ったコップ。
まさか、いや、そんなはずは。
足の裏のにおいのする飲み物を飲んでいるとでもいうのか? いやいや、いや。まさかそんな。しかし、確かめねばならぬ。原因不明というものは不安感を抱かせ、パフォーマンスが落ちるのです。この記事を完成させねばならぬ私のためにも、ちょいと、お前さん、何を飲んでいるんだい。
「これ?」と妹が差し出してきたもの、それは、ざくろ酢を炭酸で割ったものでした。
ハッ!?
こ、、これ、なの、、
え?
ちょっとだけ、それっぽいような、いや、でも、ちゃんとざくろのフルーティな香りはするし。一体どういうこと...
まさか、妹のお口...?
ちょっと、お口を嗅がせてくださる?
「私の口は、ざくろの芳醇な匂いじゃー!」
バチーン
バチーン...
バチーン...
妹からの見事な一撃を喰らって、私の目は覚めました。物置のような万年床に柔らかく暖かな春光が差し込み、その光は夜中に鼻をかんだのであろうティッシュの姿が枕元でペシャンコになっているの露わにしておりました。
私の鼻は花粉症のため詰まっていました。いえ、副鼻腔炎かもしれなくて。あのにおいは、私の鼻くそが、そういう臭いだったから。
なのかもしれない。
***
たまには息抜きに、くだらない話を。
ざくろ酢は悪くないです。
ざくろ酢は美味いです。
においのもとを、ざくろ酢にした私の頭は、春の陽気でどうかしてます。