アジアフットボール クラブ大会の改変決定
気づいたら、2023年初のエントリでした。
あけましておめでとうございます(遅すぎw)。
という冗談はさておき、かねてより、2024-25シーズンから開始されるとウワサされていました、AFCクラブコンペティションのリニューアルですが、昨日(2023年8月14日)夜にAFCより正式に発表となりました。
現在、アジアで行われている大陸コンペティションはAFCチャンピオンズリーグ(以下:ACL)、AFCカップ(以下:AFCC)の2つでしたが、これが3つに変わることが発表されました。
早速、順を追って見ていきましょう。
新大会について
3つに分かれる大会は下記の通りとなります。
(上位) AFCチャンピオンズリーグエリート (以下:ACLE)
(中位) AFCチャンピオンズリーグ2 (以下:ACL2)
(下位) AFCチャレンジリーグ (以下:ACGL)
2024-25シーズンより、現在2つの大陸コンペティションを3つにすることになりますが、ACLとAFCCの間の大会を新しくつくるというよりは、ACLの上にプレミアリーグをつくるようなものとなってます。
現在のACLの上に、UEFAチャンピオンズリーグ(以下:UCL)の新方式と同様のグループステージ開催方式の大会をつくり、ハイレベル化に舵を切ったといった具合です。
ACLは2021年大会より、フットボール(サッカー)熱の高い、東南アジアのクラブにもより門戸を開き、従来であればプレーオフまでで敗退に追い込まれていたランキング国のクラブにもストレートインの出場枠を与えることにして、出場枠を32から40へ増やしました。
ですが、東ゾーンのグループステージのゲームでは、5点以上の大差がつくゲームがいくつか出現することになり、残念ながら、チャンピオンズリーグと呼ぶには大味なゲームが増えてしまいました。
チャンピオンズリーグにエリートというフレーズが加わるのが指し示す通り、シビアな言い方をしてしまいますと、よりハイレベルな大会にするために、UCLの改変をするタイミングに合わせて、ACLも改変することになりましたが、その際に増枠の恩恵を受けていた、タイ勢以外の東南アジア勢には1枠を残して競わせながらも、極力参加させない方向に戻したように思います。
現に、日本勢やサウジアラビア勢など、アジアでもトップレベルのリーグはAFCカップに参加していませんが、今回の改変ではAFCチャレンジリーグへは参加しませんので、ACGLが現在のAFCCや、2006-14年に開催されていたAFCチャレンジカップのような意味合いの大会になるように思います。
それでは、日本勢(Jリーグ勢)はどの大会に何枠参加できるのかを見ていきたいと思います。
日本勢の出場枠
こちらを読まれている皆さまで、一番気になるのが、日本勢(Jリーグ勢)の出場枠がどうなるかではないでしょうか?
現在の情報では、最上位のACLEに3クラブ、中位のACL2に1クラブがそれぞれストレートインする予定です。
AFCのクラブライセンスを取得しているクラブでないと出場はできませんが、現在は座席の規定(立見席とロングベンチ席の使用不可・5000席以上の個席必須)以外はJリーグのクラブライセンスをクリアしていれば、問題ありません。
今年ACL2023-24に初出場を果たしたヴァンフォーレ甲府のホームスタジアムである、JITリサイクルインクスタジアム(小瀬スポーツ公園陸上競技場)はロングベンチ席が多く、AFCのスタジアム基準を満たせなかったために、ホームゲームを甲府から100km程離れた、国立競技場で開催することになったことも、記憶に新しいところです。
今後、ACLEとACL2に関しては、AFCのクラブライセンス基準・スタジアム基準が今まで以上に厳しくなる可能性もありますが、それは一旦変更がないものとして、今回は話を進めていきたいと思います。
出場枠については、最上位のACLEが(1)2023年J1リーグ王者、(2)2023年天皇杯王者、(3)2023年J1リーグ2位クラブとなり、中位のACL2に(1)2023年J1リーグ3位クラブとなる見込みです。
もちろん、2023年のJ1リーグ王者、またはJ1リーグ2位クラブが天皇杯を優勝した場合においては、ACL2に参加予定だったJ1リーグ3位クラブがACLEに、J1リーグ4位クラブがACL2に、それぞれ繰り上げとなります。
また、2023-24年大会で、2022年国内大会で出場枠が確保できなかった浦和レッズが、前回大会王者として、2022年J1リーグ3位クラブのサンフレッチェ広島に代わり、プレーオフに参加することが可能になった、前回王者救済枠ですが、ACLEではストレートインになります。
ACL2023-24に出場している横浜Fマリノス、ヴァンフォーレ甲府、川崎フロンターレ、浦和レッドダイヤモンズのいずれかがACL23-24で優勝した場合は、2023年のJ1リーグ2位以内に入れなくても(2023年天皇杯はACL出場4クラブはすべて敗退済み)、ACLE24-25の出場権を獲得し、2023年J1リーグ2位のクラブがACL2に回り、2023年J1リーグ3位クラブがACL2の出場権を失うことになります。
2024-25シーズンのアジアクラブ大会の出場枠シミュレーション
それでは、2023年8月15日現在のJ1リーグの順位に基づいたシミュレーションをしてみましょう。
現在のJ1リーグの順位は(1)ヴィッセル神戸、(2)横浜Fマリノス、(3)名古屋グランパス、(4)浦和レッズ、(5)鹿島アントラーズとなっています。
下記2つのいずれかのパターンとなります。
(1)ACL23-24で日本勢が優勝した場合
[ACLE]
(1)ACL23-24王者[横浜FMor甲府or川崎or浦和]
(2)2023年J1王者[神戸]
(3)2023年天皇杯王者 [新潟or川崎or福岡or湘南or熊本or神戸or柏or名古屋]
[ACL2]
(4)2023年J1リーグ2位 [横浜FM]
※横浜FMがACL23-24を優勝した場合はJ1リーグ3位の名古屋→
名古屋が天皇杯優勝した場合はJ1リーグ4位の浦和
(2)ACL23-24で日本勢が優勝できなかった場合
[ACLE]
(1)2023年J1王者[神戸]
(2)2023年天皇杯王者 [新潟or川崎or福岡or湘南or熊本or神戸or柏or名古屋]
(3)2023年J1リーグ2位 [横浜FM]
[ACL2]
(4)2023年J1リーグ3位 [名古屋]
※名古屋が天皇杯優勝した場合はJ1リーグ4位の浦和
続いて、各コンペティションの詳細をそれぞれ見ていきます。
新大会の出場枠と初回大会の日程
AFCチャンピオンズリーグエリート
ACLE24-25の出場枠
本戦には24クラブが参加できます。
東西それぞれの、AFCのアソシエーションランキングで6位以内に入っていることが条件です。
[ランキング東西1位]
ストレートイン3枠 (西:サウジアラビア、東:日本)
[ランキング東西2位・3位]
ストレートイン2枠+プレーオフ枠1 (西:カタール・イラン、東:韓国・中国)
[ランキング東西4位]
ストレートイン1枠+プレーオフ枠1 (西:UAE、東:タイ)
[ランキング東西5位・6位]
ストレートイン1枠 (西:ウズベキスタン・イラク、東:オーストラリア・マレーシア)
[救済枠]
・ACL2023-24王者 … 同国内でのストレートインの出場枠獲得
(東西1位ならばリーグ2位、東西2-3位ならばFAカップ王者、
東西4-6位ならばリーグ1位がそれぞれ繰り下がり、
ACL2に回ります。)
・AFCC2023-24王者… プレーオフの出場権獲得
(対象はタイとオーストラリアとイラクのクラブが、
AFCC23-24を優勝した場合かつ、2023-24の国内リーグで
優勝できなかった場合に限られます。)
ACLE24-25の大会方式
[予選(プライマリーラウンド)]
東西のプレーオフ枠6クラブと、AFCC23-24優勝クラブがタイ・オーストラリア・イラクのクラブかつ、2023-24シーズンの国内リーグで優勝できなかった場合のみ出場します。
1回戦から3回戦の3ラウンドが用意されており、4クラブが本戦に進出できます。
ただ、東西3クラブずつで2クラブずつが本戦に進めるので、総当たりのリーグになるかもしれません。
(プライマリー1回戦) 2024年7月30日(火)
(プライマリー2回戦) 2024年8月6日(火)
(プライマリー3回戦) 2024年8月13日(火)
[グループステージ]
現行の4クラブx10グループのグループステージ制は廃止されます。
スイス式トーナメントによる、東西各12クラブのリーグ戦方式が採用されます。
8ゲームを戦うこととなり、うち4ゲームがホーム、4ゲームがアウェイでの開催となります。
対戦相手の決定方法までは細かく言及されていないものの、UCLと同様の事例になると思われますので、クラブランキングや前年度の成績に基づき、東西各12クラブがそれぞれ平等となるように対戦相手が振り分けられることになると思われます。
東西各上位8クラブがノックアウトラウンドに進出します。
(MD1) 2024年9月16-18日(月・火・水)
(MD2) 2024年9月30日-10月1日(月・火)
(MD3) 2024年10月21-23日(月・火・水)
(MD4) 2024年11月4-6日(月・火・水)
(MD5) 2024年11月25-27日(月・火・水)
(MD6) 2024年12月2-4日(月・火・水)
(MD7) 2025年2月3-4 / 11-12日(月・火 / 火・水)
(MD8) 2025年2月17-19日(月・火・水)
[ノックアウトラウンド]
ラウンドオブ16(以下:R16)のみ、ホーム&アウェイの2レグ制です。東ゾーン・西ゾーンで各々開催され、東ゾーンのR16を突破した4クラブ、西ゾーンのR16を突破した4クラブ、合計8クラブが準々決勝に進出します。
(R16 1stレグ) 2025年3月3-5日(月・火・水)
(R16 2ndレグ) 2025年3月10-12日(月・火・水)
準々決勝から決勝までは、セントラル開催での1発勝負で大陸王者を決めます。
日程は、ACL2022のR16から準決勝とほぼ同じような形となり、決勝までは中2-4日での3連戦となります。
(準々決勝) 2025年4月25-26日(金・土)
(準決勝) 2025年4月29-30日(火・水)
(決勝) 2025年5月4日(日)
ACLE24-25の賞金
優勝賞金と準優勝賞金については、現在のACL2023-24の3倍にあたる金額になる旨が発表されました。
ですので、優勝で1200万ドル(約17.4億円/1ドル=145円換算)、準優勝で600万ドル(約8.7億円/1ドル=145円換算)となります。
ACL2022を制した浦和レッズの賞金が400万ドルでしたので、準優勝でも現在の優勝賞金の1.5倍の金額を手に入れることができるようになりました。
AFCチャンピオンズリーグ2
ACL2 24-25の出場枠
ACL2 24-25の出場枠本戦には32クラブが参加できます。
詳細が出ていませんが、現状わかっていることを踏まえて、シナリオを考えてみたいと思います。
・ACLEのプレーオフ敗退クラブが出場。
UEFAのUCLとUEL、UELとUECLと同様の関係になると思われます。
・各国最大4クラブ出場の原則は踏襲される。
ACLEに3枠の日本勢が、ACL2には1枠という話からも、そうなるのでは
ないかと予想します。
[ランキング東西1-3位]ストレートイン1枠
(西:サウジアラビア・カタール・イラン、東:日本・韓国・中国)
[ランキング東西4位]ストレートイン2枠
(西:UAE、東:タイ)
[ランキング東西5位・6位]ストレートイン1枠+プレーオフ1枠
(西:ウズベキスタン・イラク、東:オーストラリア・マレーシア)
[ランキング東西7位以下]
予想がつきません笑。
現状のAFCカップには、東アジアが3カ国・東南アジアが10ヵ国・
中央アジアが3カ国・南アジアが5カ国・西アジアが8カ国が
参加していますので、最低プレーオフ1枠は付与されるように
思います。
ACL2 24-25の大会方式
これも予想はつきませんが、ACLEがUCLの新フォーマットを踏襲していることを踏まえると、UEFAヨーロッパリーグ(以下:UEL)やUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(以下:UECL)と同様の扱いになるのではないかと思われます。
UELとUECLにつきましても、UCL同様のフォーマットが適用されますので、ACL2においても、ACLEと同様の大会形式かつ、AFCC2023-24とACL2023-24を踏襲した日程になるのではないかと予想します。
なお、AFCC2023-24につきましては、月曜日から木曜日の4日間にわたって開催され、同ゾーン内もしくは同国内でのACLEとの日程の重複がしないように日程が組まれるのではないかと予想します。
西ゾーンであれば、ACLEが月曜・火曜開催ですから、ACL2は水曜・木曜開催。
東ゾーンであれば、ACLEが火曜・水曜開催ですから、ACL2は月曜・木曜開催になるのではないかと思います。
そうなると、Jリーグはミッドウィークの大陸コンペティションとは中3日開くように、金曜前倒し開催や日曜後倒し開催をして、日程を組んでいますので、ACL2出場クラブにおいては、ACL2が月曜開催の場合は木曜開催or中2日の金曜開催、ACL2が木曜開催の場合は月曜開催になることが予想されます。
アジアのコンペティションに出場するクラブのリーグ戦平日開催はますます増えそうです。
とくに、ACL2参加クラブに関しては、リーグ戦の前倒しをした際だけでなく、リーグ戦の後倒しをした際も平日開催になります。
休日開催→平日開催になることで、1ゲームだけでも数百万単位、入場者数・入場料収入でリーグトップの浦和については1ゲームだけで5000-7000万円の収入減となります。
ですので、Jリーグには現状のACLチーム配分金以上、できれば倍額以上に増額をお願いしたいところです。
ACL2 24-25の賞金
優勝賞金と準優勝賞金については、発表になっていませんが、現状のセカンドティアの大会である、AFCカップの賞金がベースになるように思います。
現在のAFCカップの優勝賞金は、優勝で150万ドル(約2.2億円/1ドル=145円換算)、準優勝で75万ドル(約1.1億円/1ドル=145円換算)ですので、その3倍となると、優勝で450万ドル(約6.5億円/1ドル=145円換算)、準優勝で225万ドル(約3.3億円/1ドル=145円換算)となり、現在のACLよりも少し増えた金額になるのではないかと予想します。
AFCチャレンジリーグ
こちらはランキング下位の国が中心となった大会となります。
日本勢は出場しませんので割愛しますが、かつて行われていたAFCチャレンジカップと同様の役割をするものと目されます。
女子大会の創設
また、AFC女子チャンピオンズリーグ(以下:AWCL)の創設も発表されました。
こちらは、2019年・2021年・2022年と過去3回開催された、AFC女子クラブチャンピオンシップ(以下:AWCC)を発展させ、男子の2002-03大会から2023-24大会までのACLのような大会に改変することになります。
今年は、11月6日から12日にかけて、タイとウズベキスタンにて、第4回AWCCが開催され、日本からは、Yogibo WEリーグ2022-23を優勝した、三菱重工浦和レッズレディースが出場する予定となっております。
今後は男女のアジア制覇をするクラブが増えることでしょう。
アジアでは、1987年の読売クラブ(現:東京ヴェルディ)のアジアクラブ選手権と2019年の日テレベレーザ(現:日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の1例のみとなっていますので、三菱重工浦和レッズレディースは、アジア史上2番目、プロチームとしては初の男女のアジア制覇を目指すことになります。
また、大会年は前年とはなりますが、男子の浦和レッズがACL2022を制覇しており、ACL決勝開催日が2023年5月6日だったことから、アジア史上初(もしかしたら世界史上初?)の、同一年における男女チームの大陸コンペティション制覇が達成されるかもしれません。
さいごに
アジアの大陸コンペティションは、移動距離も長く、いろいろと困難も多い大会ですが、賞金がJリーグよりも低い時期もありましたが、今回の改変でACLEはJリーグの賞金+理念強化配分金を超えてくることになりました。
また、ACLEは世界大会にもつながっており、ACLEを優勝すると、2025年から4年に1回開催の新FIFAクラブワールドカップ(以下:FCWC)の第2回大会(2029年夏予定)と、現行のFCWCに近い形の年1回開催の新大会への出場権も獲得できます。
今年に入り、サウジアラビアのクラブについては、2010年代中盤から後半のアジアを席巻した中国のクラブの爆買い時代をも超越する取り組みを始めており、国家ぐるみでの強化を図っていますし、何よりもシーズン移行をしたことで日程のディスアドバンテージも増えることになりました。
なによりも、今まではプレーオフが開催されてたくらいの2月中旬において、ACL23-24についてはR16が、ACLE24-25についてはグループステージ突破のかかるMD7とMD8が開催されるようになります。FWCが夏に控える25-26大会ではシーズン閉幕の前倒しが必要になりますので、2月中旬のものが2月上旬や1月下旬に前倒しになることでしょう。
今までは、1月下旬や2月上旬にもACLの開催がありましたが、それはワンランクレベルの落ちる東南アジア勢とのホームでのプレーオフばかりでした。それが秋春制のオーストラリア勢やタイ勢・リーグの最大限のバックアップを受けた中国勢や韓国勢とのアウェイでのガチンコが待っていますので、今まで以上に難易度が上がることでしょう。
降雪地の問題があるにせよ、いよいよJリーグも本腰を入れてシーズン移行を考えないといけませんし、ACLEの優勝賞金と新FCWC出場だけで60億円が稼げるようになるため、Jリーグの賞金+理念強化配分金今まで以上にアジアでのクラブコンペティションに真剣に取り組む時期が到来したように思います。