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カリガ
2018年11月25日 23:02
売れるわけがないと思っていた。というか実際、さっぱり売れなかった。会場はアーケード街なので人通りは多い。両隣の店舗では次々と本が売れている。その光景を羨ましく眺める。田所さんはというと早々にどこかへ行ってしまった。重い本を一冊並べ行き交う人々をただ眺める。立ち止まる人はいない。これ、なんの拷問なんだ?いやいや、田所さんを信じよう。この本の価値がわかる人にはきっと売れる。お昼頃、田所さんが差し入
2018年11月17日 22:16
会場にはもうすでに参加者が本を並べていた。私はメールで送られてきた。番号を探しながらキャリーバッグをガラガラと引きずった。「あっ、ありました。ここです」田所さんがいち早く番号を見つけた。よかった。やっとこの思いキャリーバッグから解放される。私はキャリーバッグを開けた。中には本が一冊だけ入っていた。……なんで?私は本を持ち上げようとしたが、ずしりと重くて持ち上がらない。「なんだ、これ
2018年11月10日 22:44
11月4日宇都宮へ向かうため私と田所さんは始発の山形新幹線に乗り込んだ。田所さんの荷物があまりにも重そうだったので「私が持ちます」なんて言ったのが間違いだった。一体、何が入っているのだと思うくらいキャリーバッグは重かった。「大丈夫ですか?」と田所さんが心配そうに尋ねてくれたが、「大丈夫です。余裕です」なんて強がった。列車が走り出した。前日、田所さんと話す話題をアレコレ考えていたが、キャ