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カリガ
2016年9月23日 17:58
私の元にやってくるのはいつも風変わりな依頼である。世の中の風変わりな依頼は全て私の所へやってくるのではないかと疑いたくなる。さらに言わせてもらえば報酬がべらぼうに安い。安くて私は毎日、パンの耳をかじって暮らしている。今日の依頼も風変わりだった。朝、事務所を開けようとすると入口の前に中年の男が立っていた。どうもとお辞儀をすると「あんた、ここの探偵事務所の人?」と聞くからそうだと答えると「頼みたい
2016年9月24日 11:06
経済状況からスマホを持てない私はプリントアウトした地図を片手に犀川沿いをウロウロした。犀川堂はウロウロしてすぐに見つけることが出来た。歴史のありそうな古びた建物に「古書 犀川堂」という看板が付いていた。看板はサビサビの深緑色をしていていかにも老舗の古本屋だった。店の前で店主と思しきオヤジが開店の準備をしていた。オヤジは店内から「全品100円」とデカデカと書いてあるカートを外に出している。私はさ
2016年9月28日 11:01
「ゴド―待ち」という言葉があるのをご存知だろうか。サミュエル・ベケット作の戯曲で『ゴド―を待ちながら』という作品がある。2人の浮浪者がひたすらゴドーという人物を待っているだけというあらすじなのだが、ただ待っているだけの不条理な物語展開を「ゴド―待ち」というらしい。私が現在おかれている立場はまさに「ゴド―待ち」だった。毎朝、事務所に着くと簡単な事務処理(ほとんど負債や請求書の処理だ)をした後にバ
2016年9月29日 09:01
気が付くと事務所の入り口に女性が立っていた。齢は30代後半くらいで髪の毛も含め黒で統一されているのが印象的な女性だ。女性は人形のように感情が一切見えなかった。「あ、すいません。依頼でしょうか」私はソファーから飛び起き髪を2・3度撫でつけた。女性は向かいのソファーに近づき「座っても?」と尋ねた。私は頷く。「この本をある人に渡して欲しいのです」女性は真っ黒なバッグから薄手の本を取り出し