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【今月のお気に入り】『ひとり旅日和』 著:秋川滝美(2024年8月)

こんにちは、金木犀川かおりです。
皆さんは、この夏、旅行に行きましたか。

私は、残念ながら、今年は旅行に行けなかったのですが、去年は1泊2日で京都旅を楽しんだのが懐かしいです。
そして、行きたい場所リストは、どんどんたまり中です。

さて、今回は、そんな旅行好きな人や、旅行は好きだけど、なかなか自由に行けない、なんていう人にぴったりな本をご紹介したいと思います。

最近は、YouTubeのVlogで、気軽に旅行の観光スポットやグルメの映像を見られるようになりました。
でも、せっかくなので、それを全部、文字で味わってみませんか。
そんな1冊になっています。

注意:ネタバレを含みますので、内容を知りたくない方は、ここから先は見ないでください。いつか、この本を読み終えたり、ネタバレを見ても構わなくなったら、読んでもらえるとうれしいです。


あらすじ

人見知りで要領の悪い日和は、なんとか就職した就職先でも叱られてばかり。自分は仕事に向いていないのではないかと悩んでいると、社長から気晴らしに旅に出ることを勧められる。最初はひとり旅など無理だと尻込みしていたが、旅好きの同僚に後押しされ、旅に出ることに。最初は日帰りができる熱海へ。神社を訪れ、出来立てのゆで卵の味に舌鼓を打ち、干物の味に感動! さらにそこには、思わぬ出会いが待っていた。ひとり旅の楽しさに気付いた日和は、さらに、佐原、仙台、金沢、博多へと遠くへ足を延ばしていくようになる。少しずつ日和の成長していく姿は、仕事にも影響し始めて、周りの目も少しずつ変わっていく――

ひとり旅日和 | 出版書誌データベース (books.or.jp)

著者

著:秋川 滝美
(あきかわ・たきみ)2012年4月よりオンラインにて作品公開開始。2012年10月、『いい加減な夜食』(アルファポリス)にて出版デビュー。著書に『ありふれたチョコレート』『居酒屋ぼったくり』(ともにアルファポリス)、『放課後の厨房男子』(幻冬舎)、『メシマズ狂想曲』(小学館)、『幸腹な百貨店』(講談社)などがある。

ひとり旅日和 | 出版書誌データベース (books.or.jp)

本の概要

ISBN:9784041116302
。出版社:KADOKAWA
。判型:文庫
。ページ数:304ページ
。定価:640円(本体)
。発行年月日:2021年10月
。発売日:2021年10月21日

ひとり旅日和 | 出版書誌データベース (books.or.jp)

注)発行年月日が2021年10月21日となっていますが、この作品自体が発売されたのは、2019年10月31日です。

購入方法

Kindle Unlimitedで読み放題(月額使用料のみ)

登場人物(迷子になったらここを参照!)

梶倉日和(かじくらひより) 
主人公。小宮山商店株式会社勤務3年目。
加賀麗佳(かがれいか)
日和と同じ小宮山商店株式会社に勤めており、隣の席。ひとり旅の先輩。
吉永蓮斗(よしながれんと)
麗佳の彼氏の親友。日和と旅先で偶然出会う。旅行ブログ運営中。
小宮山(こみやま)
小宮山商店株式会社の社長。日和のことを気に掛けてくれている。日和にひとり旅を勧めてくれた人
仙川道広(せんかわみちひろ)
日和の直属の上司。日和にいつもつらく当たる。
霧島結菜(きりしまゆいな)
小宮山商店株式会社総務課の2年目。愛されキャラ的存在だが、麗佳は、彼女のことを苦手に感じている。

お気に入りポイント

①現実の観光地を行くので、行ったことある場所、行きたい場所、知らなかった場所、どこも読んでいて楽しい

この小説の特徴は、なんといっても、日和が現実の観光地そのものに行く、ということ。
なので、実際の観光地とその描写がたくさん出てきます。
特に気になる場所は、Googleマップで調べたりもして、実際の観光地についても知ることができて、一石二鳥に感じます。

観光地だけでなく、ご当地グルメもたくさん出てきます。お店の固有名詞は出てこないのですが、本当にあるお店を連想できる描写も多く、もし知っていれば、「あ、あのお店だ!」と分かるようになっています。

②アドバイスと経験で成長する日和の姿

この小説の中で、ひとり旅の先輩、麗佳の存在は欠かせません。
旅行先の選び方はもちろん、交通手段、ホテルなど、旅行に必要なこともいろいろアドバイスしてくれて、それ自体参考になります。
そして、それを素直に実践して、良かったと喜ぶ日和を見て、私もまねしたくなるんです。

旅行そのものの上達だけではなく、ひとり旅に行くことで、日和は成長していきます。

ひとり旅を始めたことで、なにかが変わり始めているのかもしれない。なにより予定外のことが起こっても、なんとか対処できたという自信が、こいつは何を言われても反論ひとつできない、というイメージを薄め、仙川の八つ当たりから逃れさせてくれている可能性もある。あるいは、今までだったら嫌みと感じていたことを、気にせずにいられるようになった。スルー力がついたのかもしれない。

ひとり旅日和 著:秋川 滝美 135ページ

こんなふうに、現実の会社での日和も、少しずつ成長していくんです。直属の上司の嫌味やパワハラの態度に、最初はすごくイライラするのですが、いつしか成長していく日和に、ほっとしてしまいます。

③ひとり旅ならではの、自問自答が楽しい。旅行先でのトラブルをどう解決するかも見もの

ひとりが苦じゃない、っていうのと、ひとりを楽しめるっていうのはちょっと違う気がするのよ。

ひとり旅日和 著:秋川 滝美 28ページ

ひとり旅の先輩、麗佳が、日和に言うセリフです。
単なる旅ではなく、「ひとり旅」だからこその描写が、この本の面白いところ。
「わざわざしなくても・・・」とか、「・・・しなくちゃ」とか、「これでもう十分」といった、旅先での、日和の自問自答も、結構面白いです。
相談相手がいないひとり旅だからこそ、本音で自分と相談し合うし、誰の都合にも合わせなくていいのが、ひとり旅の面白さなんだなと感じられます。

それから、旅につきもののさまざまなトラブル。
これをどう乗り越えていくのか。例えば、ホテルで寝過ごしてしまったり、もっといい交通手段を後で知ったり、など、テンションが下がりそうな状況に、日和はどう思考を切り替えていくか。
そんなささやかな日和の成長も、読んでいてとても楽しいし、親近感が湧きます。


自分で行く旅でもない。YouTubeで見る旅でもない。
私の中では第3のパターンの旅行を味わえる本でした。

ひとり旅に行く人も、行かない人も、主人公と同じ目線で、いつしか一緒に旅に出られます。
そんな気分を味わいたい人に読んでもらいたいです。

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