読書感想文(52)島本理生『ナラタージュ』
はじめに
この本を読んだきっかけは、中河与一『天の夕顔』をオススメしたらナラタージュに雰囲気が似てると言われたことです。じゃあとりあえず買っちゃおうと思って買いました。どうやら直木賞を受賞していて、有名な作品のようです。こういう最近の有名な本も沢山読みたいなーと思います。
ちなみに中河与一『天の夕顔』はオススメです。『ジェーン・エア』と違って短い(120ページくらい)のもオススメポイントです。文庫で出ています。ここまでストイックな恋愛小説ってなかなか無いんじゃないかなぁと思います。
感想
まず読み始めてすぐに思ったのは、上手い、ということでした。流石直木賞受賞作ってことなのでしょうか。何が上手いのかというと描写が上手い。細かいのにしつこくなくて、文章からそのまま映像化できそうな感じです。具体的には服の描写とか細かいなぁと思いました。単にストーリーが面白いだけではない、文章力を感じました。こういう細かい描写が好きな人は『紫式部日記』とか好きなのかなーと思いました。
内容について、なんというか、うーん、面白かったけど、こう、モヤモヤが残る感じでした笑。モヤモヤが残る作品代表としては又吉直樹『劇場』があって、これは主人公が好きになれないモヤモヤでした。でもこの作品はそうではなく、うーん、どちらかといえば先生とか小野くんの方にモヤモヤした気がします。先生は最初から人間らしさがあったけど、小野くんは途中まで結構良い人だと思っていたので、勝手に裏切られたような気分になって嫌でした。途中までは咲坂伊緒『アオハライド』の菊池くんっぽさがあるなぁと思っていましたが、引き際が潔かった菊池くんの勝利です(?)。小野くんは結局表面だけだなぁというのに途中で気づいてから、台詞の一つ一つが嘘っぽく聞こえて嫌でした。あーでも世の中の恋愛ってそうやって回っているんだろうなーと思います。つい先日、友人が恋人に後ろめたい事を隠そうとしていたのを思い出しました。みんな苦労しているんだなーとおもいました。
そういえば読んでいた途中は気づかなかったけど、こうやって途中で人物の嫌な部分に気づかせるのも作家の狙い通りなのかなぁと今思いました。そう考えると、作家ってすごいなーと。いや、すごいのはこの作者なのかもしれませんが、何かを創る人って思っている以上に色々考えてるんだなぁってよく思います。考えられて作られたものが良くて、考えられていないものが悪いってわけじゃないけど、考えられたものって自分以外の人の考えが反映されているから新鮮で面白いのかな、と思いました。
この小説は恋愛小説なのだと思って読みましたが、もっと大きなものをテーマにしているように感じました。特に後半の事件については。こんな風に書くと安っぽいけれど、人生は都合良くできてないなって思いました。嫌なことがあったからといって慰めてくれないどころか、さらに嫌なことが起こる。気持ちの整理がついていなくても全然待ってくれない。それが一番この本を読んで思ったことです。あと冒頭のシーンを思い返すと、気持ちの整理なんか一生つかないってことなのかなぁとも思います。それでも人生は進んでいって(止まってしまう人もいるだろうけれど)、一生色んなものを引きずりながら生きていくのかなぁ。でも自分の人生を思い返すと、気持ちの整理がついてないことって無いかなーと思いました。まあまだこれから色々あるかもしれませんが、その時はこの本を思い出して、引きずりながら生きていくことも受け入れられるんじゃないかなぁと思ったり。その上で強く生きていく心は『ジェーン・エア』に学んだので、ゎたしはとってもっょぃ。
キャラクターでは志緒ちゃんが一番好きでした。この作品以外のキャラクターも含めて結構好きな方な気がします。めっちゃかわいくない?非の打ち所がなくない?って感じです。小説を読んでこのキャラクターが好き!ってなることってあんまりないのでレアです。もっと出てほしかったなーと思ったり、なんで主人公はこんなに良い友人と疎遠になってしまうのだろうと思ったり、でも友人関係ってそういうものなのかもしれないなぁと思ったり。次に読む時はちょっと注目して読んでみようかなぁと思います。
おわりに
読み終えて、なんとなく達成感がありました。400ページとそこそこ長いのもありますが、内容が濃かったです。まだ消化しきれていない感があるのでまたいつか読み直したいです。
本を読んで消化しきれていないなぁと思った時、昔何かで読んだ「読書のレベル」みたいな話を思い出します。人はより高度な本を読んでいくべきだ、みたいな主張で賛成はできなかったのですが、読解力が足りてないことによって読めていないと感じるので、読めるようになりたいなぁとは思います。経験主義的に読解力を上げるには、この作品のように賞を受賞するような小説を読むのが良いのかな、と思いました。最近他人のオススメっていいなと思っていて、賞を受賞している小説も誰かのオススメということなので、これからたくさん読んでいきたいなーと思います。