読書感想文(25)井上堅二『バカとテストと召喚獣2』

はじめに

火曜日に1巻を読み終え、水曜日に2巻を読み終えました。1日で読み切ることができるのでなんとなく気持ちが楽です。バイトの行き帰りで丁度読み終わります。

感想

今回は学園ものあるある第一位、学園祭です。主人公たちのFクラスは中華喫茶をやります。しかし、(これもあるあるですが)営業妨害をする人が現れます。その時のネタがこちらです。

「まったく、責任者はいないのか!このクラスの代表ゴペッ!」
「私が代表の坂本雄二です。何かご不満な点でも御座いましたか?」
ホテルのウェイターのやうに恭しく頭を下げる雄二。話しかける前に相手を殴り飛ばしていなければ、まるで模範的な責任者のようだ。
「不満も何も、今連れが殴り飛ばされたんだが……」
殴られていないソフトモヒカンの男が驚いている。無理もない。僕だっていきなり友達を殴り飛ばされたら驚くだろう。
「それは私のモットーの『パンチから始まる交渉術』に対する冒瀆ですか?」
凄い交渉術だ。
「ふ、ふざけんなよこの野郎……!なにが交渉術ふぎゃあっ!」
「そして『キックでつなぐ交渉術』です。最後には『プロレス技で締める交渉術』が待っていますので」
「わ、わかった!こちらはこの夏川を交渉に出そう!俺は何もしないから交渉は不要だぞ!」

一体どうやって生きていれば「パンチから始まる交渉術」なんて思いつくのか気になりますが、電車の中で思わず吹き出しました。

以下、少しストーリーに関するネタバレを含みます。

私は1巻の感想文で「世の中学力が全てじゃないって、そんな証明をしてみたくてな」という台詞(ちなみにこの台詞は「パンチから始まる交渉術」がモットーの坂本雄二)を引用しました。この台詞の通り、Fクラスは自分たちよりも強い相手(この世界ではテストの点数がそのまま強さになる「召喚獣」で戦う)に対して(悪)知恵で立ち向かい、そして倒していきます。

今回は召喚獣を使って戦う大会があり、主人公たちはその大会で優勝を目指します(これが好きな人のため、っていうのも結構好きです)。そして決勝戦で戦う相手はなんと先ほど妨害をしてきた3年生2人組です。この2人はAクラスであり、すなわち学年トップクラスの成績、そしてその分だけ強い召喚獣を持っています。そして先輩はこんな風に言います。

「お前らの勝ち方なんて、相手の性格や弱みにつけこんだ騙し討ちだろうが。俺たち相手じゃ何もできないだろ!」

全くその通りです。実際二回戦か三回戦では対戦相手の女装写真集を恋人に渡す事を条件に不戦勝したりしています。しかし今回、主人公たちはクラスの仲間を傷つけられたという屈辱からこう言います。

「アンタらは小細工なしの実力勝負でブッ倒してやる!」

そしてその点数はAクラスの先輩たちにも引けを取らない高得点でした。ここで胸が熱くなる理由が二つ。一つは元々勉強が苦手な主人公が目的のために高得点をとっていることです。今苦手なことがある人も、出来が悪いと言われる人も、それは変わり得るという事です。学校や塾で勉強ができないのを生徒のせいにする先生を時々見かけます。確かに本人の努力不足が原因であることもあるでしょう。でもそれなら努力したいように思えるようにすればいいし、努力したいと思えないなら別にそれはそれでいいんじゃないかと私は思っています(自己責任、と思っているのである意味冷たいですが)。さらに成績が上がらないのを自分の不利益であるように不機嫌になる先生もいます。ああ、もっとわかりやすい例で言えば成績の良い生徒を贔屓する先生もそうですかね。まあ先生も人間なので自分と話が合う人の方が楽しいんでしょうけれど、それは他の生徒と差を作ってしまうので先生としてはどうなのかな、と思います。勿論、こういうことは成績だけに限らないと思いますが、高校までの学校生活ではやはり成績というものが一つのヒエラルキーを生んでいたように思います。そして、それを真っ向から否定してくれるのがこの場面です。そういえばほとんど勉強していなくて成績が最底辺だった友人が大学受験前に勉強を頑張っていたなぁと思い出しました。彼は中学の頃の模試で5教科合わせても成績トップの生徒の1教科より点数が低いほどでしたが、高2か高3の頃に定期テストでクラストップを取っていました。母校は成績順でクラス分けされ、高校の頃はクラス毎にテストも違うかったのですが、それでも熱い展開だなと思います。

長くなってしまいましたが二つ目。正攻法でも勝負できるところ。「世の中学力だけじゃない」と言った人に学力がなければ、多くの人は負け惜しみだと笑うでしょう。だからそれを言いたければ学力の側からも勝たなければいけない、と思います。そして主人公たちはそれを見せてくれました。中高の頃に自分が良い成績を取りたかったのはこれが原因かなぁと思いましたが、それは違うかなと思いました。多分単純に負けず嫌いというのが大きいです。しかし「勉強第一」みたいな先生達に一矢報いる、というような気持ちが無かったわけではありません。ちなみに最終的にどうなったのかというと、私は高3の冬に文転しましたが、高3の冬に先生から「とりあえず一応理系で国公立受けとけ」と言われました。母校はいわゆる国公立信仰があり、進学実績が欲しかったのだろうと思います。高3の頃は学年で平均5番目くらいの成績を維持していた(ただし模試に限る)ので、「国公立合格の一人分として欲しかったんだなぁ。でも残念、世の中学力が全てじゃないんだぜ」と勝手に勝ち誇りました。母校の校風に侵されず、実力を示した上でそれを否定できたことは自分の一つの実績だと思っています。でも担任の先生は割と良い人だったので、恩返しに進学実績に貢献しても良かったかな、と最近は思います。

おわりに

後半は思い出話ばかりになってしまいました。でもこういう成績が色んなことに影響するのって高校までで、大学以降はあんまり関係無いような気がします。それでもあの頃を思い出す時に成績の話が出てしまうのは、多分それが自分にとっての青春だからだと思います。青春といえば部活や恋愛を思い出す人が多いのではないかと思いますが、私にとっては勉強でした。青春が勉強なんていうと気持ち悪がられるかもしれませんが、中一の一学期末から総合一位を譲ったことがない強敵から一位の座を奪うために努力するっていうのもなかなか熱かったですよ。ちなみに初めて最強の彼を倒したのは私ではありませんでしたが、私も高3の夏に一度だけ総合一位を取ることができました。多分三人目だったと思います。その後に文転を決意できたのは、実はここで一度勉強というものに対して一区切りついていたからかもしれないなぁと思っています。

思い出話をすると長くなっていけませんね。
というわけで、皆さんも是非「パンチから始まる交渉術」を試してみてください!

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