読書感想文(33)さくらももこ『そういうふうにできている』
はじめに
この本を読んだきっかけは確か『まる子だった』の巻末の対談にタイトルがあったことです。最近さくらももこのエッセイを読んでいて、過去のことはまあ仕方ないと思うのって大事だなぁと思いました。タイトルの「そういうふうにできている」というのも、過去を振り返って「なるようになったなぁ」みたいな感じなのかなぁと思って興味を持ちました。
感想
読もうと思ったきっかけは「はじめに」で書いたようなことでしたが、結局全然違うことを考えながら読みました。この作品は妊娠判明から出産後までのことが書かれるのですが、面白かったというより為になったなぁと思いました。特に妊娠中や出産後の体調面、精神面のことが今まであまり意識してこなかったことだったので読んでおいてよかったと思います。
先に宣伝しておくと、男性も女性も出産の前に読んでおいたらちょっと為になるんじゃないかなぁと思います。男の人は妊娠することもないし、生理もこないので女性の体調面に疎い人が多いのではないかと思います(少なくとも当事者である女性よりは)。この作品では妊娠判明から始まるので生理のことはほとんど書かれませんが、つわりの話や内面の話を読んでいると、かなり頑張って支えなきゃならんなぁと思うんじゃないかと思います。正直に言うと、「自分にはちゃんと支える力があるんだろうか。自分はもう結婚しない方がいいんじゃないか」って思ってしまうくらいに大変そうだなぁと思いました。女性にもオススメなのは、この作品の中で孤独について書かれていたからです。体調が悪いことって人によっては周りからわかりづらいと思います。相手が悪いわけじゃないとは思いつつもわかってもらえない辛さ、自分が耐えるのが一番上手くいくという考え、そういったものに潰されない心構えができるんじゃないかなぁとと思いました。心構えができなくても、そんな風に悩んでいるのは自分だけじゃないと思えるだけでも少しは楽になるかなぁと思います。中には「私が妊娠した時はもっとしっかり働いていた」とか嫌なことを言う人がいるかもしれませんが、きっとそんな事を言わずに親身になってくれる人も周りにいるはずだと思います。男の自分としてはやっぱりそういう時に一番旦那さんに味方になってほしいなぁと思いますが、まあこれは言っても仕方ありません。でもこれを読んでくれている男性にだけでも届いたらいいなぁと思います。
さて、話は被りますがもう少し自分に寄せて思ったことを書いてみます。私は将来について考える時、結婚後の生活や子育てについて考えることはよくありましたが、この作品を読んで妊娠中のことについてはほとんど考えていないことに気づかされました。「とりあえず少しでも力になれるように頑張ろう」くらいにしか思っておらず、どんな事を思っているのか、どんな風に大変なのかは全然知りませんでした。もちろんこの作品に書かれていることは作者の体験なので、人によってもっと大変だったり別のことを考えたりすることもあると思います。ただとりあえず一例を知ることができたこと、そして考えるきっかけになったのはよかったなぁと思います。
妊娠中の話を読みながらすぐに並行して思ったのが生理についてです。生理についてもそのうちちゃんと勉強しないとなぁと思いつつ先延ばしにしていました。生理は大変だという話はよく聞きますが、まだ全然実感できていません。多分生理中かどうかに関わらず体調不良を伝えてもらえたらそれなりに気を遣えると思いますが、体調が悪そうかどうかって全然気づけていないと思います。でもこの作品を読んでもわかるように体調不良ってちょっと自分が我慢すればなんとかなるところがあるので、我慢してしまう人も多いんだと思います。そういう時には結局周りが察することができればいいのだと思うのですが、私は察するのが苦手なのでどうしたもんかなぁというところです。もう体調不良かどうかは分からないから最初から「女性には優しく」じゃダメなのかなぁと思ったりもするのですが、どうでしょう。「お年寄りには優しく」なら割と受け入れられるんじゃないかと思うので、それと同じノリでいいんじゃないかなぁと。「じゃあ男はどうなるんだよ!」と言われると、んー、まあみんなに優しい方がいいよなぁとは思います。でも単純に割合の問題で、「女性に優しく」を基本スタンスにしておいた方が楽なんじゃないかなぁという感じです。もちろんその時の状況なんて無限にあると思いますから、その時々で最善を選べばいいのですが、そこまで考えるのが面倒って人も結構いると思うので基本スタンスとしてそういう風にしておけば助かる人が増えるんじゃないかなぁって感じです。
あと産後の話も為になりました。近年男性の育休についての話をよく見かけますが、もう義務化した方がいいんじゃないかなぁとさえ思いました。産後大変なのは言うまでもないと思っていたのですが、マタニティーブルーについては全然考えたことがありませんでした。ちょっとしたことで落ち込むというのは仕方ないことなのかもしれませんが、じゃあ夫はどうすればいいのだろうと考えてみましたが、なかなか難しいです。どんな言葉をかけても受け入れられないことも多分あって、でもだからといって「どうしようもないじゃん」と開き直るのは一番ダメだと思うし、自分の言葉が受け入れられないのは辛いけれど、受け入れられない人の方がもっと辛いと思うので、一緒に辛い思いをするくらいしか思いつきません。そういうところまで考えた時、やっぱり結婚って好きな人とじゃないとできないよなぁと思います。そこで「自分にできることは何もないし、仕方ない」と開き直らずに寄り添いたいと思えないと多分お互いに辛いだけなんじゃないかと思います。これは出産に限った話ではなく、結婚って色んな所ですれ違いがあるんだろうなぁと思います。結局のところ、そういう時に最悪全部許せることが必要なのかなぁと思っていますが、ちょっと理想的過ぎるかなぁとも思うので自分と相手の妥協できるラインの兼ね合いが大事なのかなぁと思います。
ちょっと話がそれたので戻します。申し訳ないですが、私は女性特有の体調不良についてやっぱり心から理解はできていないと思います。だから多分テキトーに見積もってしまうと全然足りないことがあると思います。じゃあどうすればいいのかというと、インフルエンザくらいしんどいって思っておけばとりあえずなんとかなるのかなぁと思いました。大は小を兼ねる、という感じです。まあ単純に比較はできませんし、インフルも人によってしんどさが違うと思いますが、とりあえずインフルの人には無理させないようにしようと思うのは普通だと思います。それくらい気を遣えば、とりあえずある程度はカバーできるのかなぁと。もちろん色んな細かいことがあると思うので、それは少しずつ学んでいきたいです。
ここまで散々役に立ったと書いてきましたが、驚くべきことに作者はこの作品の最後の方にこんなことを書いているのです。
最後にもうひとつ。私はこのエッセイを、出産を勧めるために書いたのではなく、また勧めないために書いたのでもない。ましてや何かの参考にして欲しいと思ったわけでもない。
ただ単に、"妊娠・出産"という私の身にふりかかった珍奇で神秘的な出来事を皆様に聞いていただきたかっただけである。だからこれを読み終えられた今、何の得るところも無かったと思うが、私のエッセイとはそういうふうにできているのである。
「いやすみません大変参考になりましたものすごく得るところもありました」と言いたくなるほど、私の考えていたことを直球で否定されました笑。もはや逆接的に「タメになったでしょ?」と言っているのかと思いたくなるほどです。これが作者の本音なのかどうかはわかりませんが、もし本音なのだとしたら書いてくださってありがとうございました、と思います。本人にとって誰かの為になると思わないことでも、こんなに風に誰かの為になることがあるのかもしれません。だから皆さん、どんな些細なことでもnoteで発信していきましょう。
おわりに
今回で一旦さくらももこのエッセイは終わるつもりです。でも他にも読みたいなぁと思っているのでいつかまた読むと思います。エッセイを読むのって多分初めてだったのですが、面白かったです。良い経験になりました。
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