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欺かざる独歩。

高熱が出て
最初に手にするのは水

そして必ず
書棚から一冊

国木田独歩先生の
お名前に惹かれて
引き抜いたが

日記のようだ
本名を
国木田哲夫さん
神経質な内容とは
まるで反対で
大胆に表現

彼は「詩人」と
いうより
政治家のような
洞察力だ

『欺かざる記』は
明治時代の
日記としては
有名な二大日記
樋口一葉先生の
日記のように
非公開だった
ものではなく

「公開される」
そういう考えで
書かれているのに
かかわらず

生前公開されたのは
一部であった

感情を偽らず
記録した
みずから
事実から感情そして
思想史と
副題をつけるほど

空想や誇り
恥辱や懺悔

明治時代の
一青年の誠実な
自己観照の記録だ

詳細は「読書」
していただきたいので
差し控えるが

彼は哲学のない
軍人の考えが
気に入らなかったようで

偉人や宗教者の伝記を好んだ
ジャーナリストの彼の
波乱万丈の人生は
やがて国民新聞紙上に
戦事通信として発表し
当時の読者に
その名声は知られる

錚々たる面々と交流し
活気あふれる
激論を交わし

日本の将来を想う
青年の思想が輝いてる

熱にうなされ
深夜に目覚める

水を飲み
叔母さまが肌着を
取り替えるように

起き上がり
手伝ってくれる

汗でグッショリ

添い寝の叔母さまが
手早く身体を拭いて

体温計を差し出す

ぴこぴこぴこ
38.8

耳から
たくさんの音がする

目の前に
お母さんだと
感じる女性が座ってる

ボクは膝枕して
笑ってる

大きなゾウさんが
凄く小さな針の穴を
団体で通って過ぎてゆく


何度も吐いた

コロナの検査もした

この病状のための
薬にまたもや
アレルギー反応が出始めた

身体が震えはじめる

ボクは気を失う
無意識の中で
引き抜いた
国木田独歩先生のこと
想像してた

バイロンの詩集を
バイブルにしてた彼が
目の前でそれを読んでいた

ボクは目の前に立ち
声をかける

あの
国木田さん


どうして
「独歩」なんですか?

すると彼は顔を上げ
ボクの方を見ようとする

ボクは上空に舞い上がり
物凄いスピードで

地平線から
登る太陽の
輝きを眺めてる

ブルーグレーに輝いてた
その場所が
一瞬でやわらかな
やさしい光に包まれる

素敵な音と香りが
ボクを包む

わぁー
すごくきもちよくて
息をのんでいると

遠くに見える
雲海の切れ間に
地球上の海が輝いてる

真っ白な雪山が
光に包まれ
この世のものと
思えない

気づくと
夜明け前

叔母さまが氷枕を
取り替えてくれる

また体温計

さっき図ったよ

時計を見ると
5時間以上たってた

37.7ど

少しさがったけど
着替えるからね

またボクは叔母さまに
ゴシゴシこすられ

新しいタオルに包まれ
夢か現か

何度も国木田先生が
ボクのそばで
本を読み上げる

ボクはそれを
ただただ
黙って聞き入った


文学者たる彼の
根本は読書の
多さによるもの

うなされながら
彼と読書記録を
交換し意見を交換した

どうやら
この度の病状は
彼がすべて
持ち去ってくれたようだ


また会いましょう
そういって
ボクの傍らから
席をたたれた





注。
独自の読書感想と
それを感じたときの
リアルなボク自身の状況と
オリジナルミックスです


高熱による
妄想なのかもしれません
















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伊藤ぱこ
読了ありがとうございます 世界の片隅にいるキミに届くよう ボクの想いが次から次へと伝播していくこと願う 昨年のサポートは書籍と寄付に使用しています 心から感謝いたします たくさんのサポートありがとうございました