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2021年12月 - 今月のスナップとエッセイ

 気がつくと、日付が変わっていた。12月30日。わたしは、くちびるで缶の冷たさを、喉元でアルコールの心地よさを感じていた。

 仕事納めのビールは、一味違う。
 毎晩毎晩、自分を寝かしつけるために飲んでいた酒ではない。寧静な夜だ。ヘッドフォンから流れるピアノの音は優しく、酔いが身体に染みわたる。
 忙しかった。忙しかったというより、時間がなかった。毎日何かに追われ、夢でも時間に追われ、そんな夢を見た日には、起きた瞬間「ちくしょう!」と叫んだ。

 椅子に深く腰掛け、思いを巡らす。今年もあと2日。1年を振り返るにしては、大したことはしていないと思う。その反面、やることはまだあって、振り返る余裕すらあまりないとも思う。

 ああ、でも今日は、こんなにもやわらかい夜だ。せめて、今年の写真は今年のうちにまとめよう。わたしは、細い視界でLightroomを開いた。

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 12月初旬は、長野へ。お仲間にお誘いいただき、日帰りで撮影に行った。わたしも含め、4人が集まった。そこには、SNSで面識はあるが、お会いするのは初めての方もいた。

 SNSで人脈を広げるたびに思う。この時代でなければ出逢わなかった方々なのだ、と。
 偶然同じ年に生まれ、偶然同じ学校に通い、偶然同じクラスになって…最初は何も知らない相手と付き合っていく。幼い頃は、偶然を重ねて人間関係を築いてきた。
 一方、きっかけがSNSの場合は異なる。偶然が重なった出逢いだが、最初から趣味や感性など自分と似ている部分が存在していることが多い。実際に会ったとき、その関係は既にゼロではない。
 どちらが良くて、どちらが悪いわけでもない。ただ、この時代だからこその出逢いに、感慨深くなる。

 長野では、霧ヶ峰や奈良井宿を案内していただいた。景色は素晴らしく、話に花が咲き、皆さんにとても良くしていただいた。思い思いのカメラを持って、好きなように撮るのは、面白いものである。

 道中、「なんでも好きに撮っていいと気がついたのは、カメラをはじめて何年も経ってからだった」と話をした。確かに、わたしもそうだった。好きに撮るのは、意外と難しい。

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 12月下旬は、東京へ。撮影仲間とともに、スナップ。
 飽きることなく小さい静岡の街を撮り続けているわたしだが、やはり東京スナップには憧れる。「だって東京、撮るものしかなくない?!」と。
 そうして意気揚々と向かったわけだが、東京は東京で撮るのが難しかった。改めて、情報量が多い街だと感じた。もちろん、写真も情報量が多くなってしまった。

 撮り慣れている街を撮ること、撮り慣れていない街を撮ること、どちらも楽しくてどちらも難しい。
 まるで、正解のないものを追い求めているかのようだ。しかし、本当は追い求めているのではなく、ただひたすら自分と向き合っているだけではないだろうか。

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 その夜、きらびやかな丸の内のイルミネーションを歩いた。それぞれが冬を楽しんでいた。
 自撮りするカップル、テラスで誰かを待つひと、ブランド物のショッパーを抱えるひと、その合間を縫うように足早に東京駅へ向かうひと。
 その瞬間を写真におさめていく。すると、小さなサンタが道の真ん中をタタタッと駆けていった。

 それぞれに人生があり、それぞれの今を過ごしている。
 あなたは、どんな今を過ごしているだろうか。

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 少しモノクロで現像してみる。無彩色になると情報が減り、写真を読みとる側に思考の余裕が生まれる気がする。知識も技量もないが、そう思う。


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 今月の静岡は、師走のせいか慌ただしそうな人も見かけた。しかし、東京のようにイルミネーションは壮大ではないし、歩く人のスピードも速くない。どこかおっとりしている街、これが静岡である。
 改札を抜けるとホワイトボードに手書きのメッセージが書いてあり、クリスマス近くには期間限定でストリートピアノが開催された。その際は、珍しく人だかりができ、昨冬より、活気を感じた。

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 さて、我が家のクリスマスはというと、わたしがいびつな形のピザを焼き、夫はワインを買ってきてくれた。そして、ケンタッキーのチキンをこれでもかというほど食べ、お互い早々に酔いつぶれて寝てしまった。
 人様にお見せするような写真は撮っていない。しかし、風呂上がりの恰好で、ワイングラスを掲げているわたしの写真は、これでもかというほどの満面の笑顔だ。これが幸せってものだろう。これが写真ってものだろう。別に誰かに見せるために撮らなくてもいい。

 心身ともに健康で、やりたいと思うことがあり、ご飯が美味しいと感じられ、しょうもないことで大爆笑できる家族がいる。
 この1年間、日常からささやかな幸せをたくさん感じることができた。本当に本当にありがたい。

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 2021年は約70000枚の写真を撮った。
 そして毎月撮った写真をまとめ、エッセイを書いてきた。

 最初は写真をまとめるだけの予定だった。それが不思議なことに、月を追うごと言葉が増えていった。書きながら、わたし自身の変化を感じることもあった。
 その上、多くの方に読んでいただき、感想を頂戴する機会も増えた。大変、嬉しい限りである。

 写真を通じて出逢えた仲間、わたしに撮ってほしいと言ってくれた友人、陰で写真活動を応援してくれる両親、いつもエッセイを読んでくださる皆様、そしてどんなときもそばで見てくれている夫。
 今年もたくさんのひとに支えられて、生きてきた。その皆様が心穏やかに新年を迎えられ、多くの幸せが訪れることを心から祈っている。

 それでは良い写真生活を。

 今年も大変お世話になりました。
 来年もどうぞよろしくお願いいたします。
 良いお年をお迎えください。


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miho
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