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LUMIX G100とゆく|涼を求めて 富山・黒部峡谷

 鳴き喚く蝉も、静かになる暑さ。

「あつーーーーーい!暑い暑い暑い!」
 喚いているのは、蝉ではなくわたし。帰ってきて早々、エアコンをつけた。ソファに寝転ぶ。夫が笑って「暑いね」と言う。冷風が、顔に当たる。見上げると、カレンダーが目に入った。

 もうすぐ、夏休み。この暑さだが、出掛けたい。
 どこ行こうかなあ。思いを巡らせ、夫に提案する。

「夏休み、涼しいところ行かない?」
「どこ?」
「黒部」
「くろべ?」
「トロッコ電車乗りに行こう!」

 富山県黒部市。富山県の北東に位置し、南東の山地は飛騨山脈の端にあたる。トロッコ電車こと、黒部峡谷鉄道は、黒部川沿いを走る観光電車だ。

あの夏をなぞって

黒部の記憶

「なんで、くろべなの?」夫が訊く。
「それはねえ…」
 理由は、6年前の夏にある。当時、ひとり旅ばかりしていたわたしは、富山へ向かった。黒部峡谷のトロッコ電車に乗ってみたい。軽い気持ちだった。

黒部峡谷鉄道本線
富山県黒部市の宇奈月駅から欅平駅までを黒部川に沿って走る黒部峡谷鉄道の鉄道路線である。
一般旅客向けのトロッコ電車が運行される観光鉄道であるが、元々は電源開発のための専用鉄道であり、現在でも沿線にあるダム・発電所への資材運搬列車や、関西電力関係者専用列車が運行されている。

Wikipedia - 黒部峡谷鉄道本線

 実際に訪れた黒部峡谷には、わたしの知らぬ夏があった。エメラルドグリーンの川。柔らかい日射し、爽やかな風。感動した。日本にこんな素敵な夏があるのかと。

 あの景色を、夫と共有したい。

 荷造りをする。お供カメラは、LUMIX G100。Panasonic様からお借りしているミラーレス一眼カメラである。片手に収まるほど小型で、操作性も良く、気軽に持ち出せるのが特徴だ。

特急ひだと夏の窓

 静岡から富山までは、約440km。東京経由で約4時間(新幹線利用)、名古屋経由で約5時間(新幹線・特急利用)の旅となる。

 特急ひだ3号で、富山に向かう。この列車は、東海道本線・高山本線を経由し、名古屋から富山を約4時間で結んでいる。
 名古屋駅で、お菓子やご飯(とハイボール)を買い込み、列車に乗り込む。

 岐阜から、高山本線に入る。高山本線は、飛騨川に沿うように走行している。美しい景色が楽しめる路線だ。列車旅の醍醐味といったら、やはり車窓だろう。太平洋から日本海へ向かう、それをこの目で感じる。

 わたしはLUMIX G100で、夏を撮った。夫は、隣で動画を撮っている。この景色、残しておきたいね。

 列車旅、もうひとつの醍醐味は…。

 わたしたちは、ぬるくなったハイボールで、乾杯した。旅はまだ、はじまったばかりだ。

 富山に到着。降り立った瞬間の感想、暑い。暑い、しか出てこない。この日の気温は、36℃である。
「富山、暑いよ…?」
 夫がハンディファンを首元にあてて、うううっと唸った。
「明日、涼しいところ行くから!ね!?」

 この日は、富山の海の幸を堪能した。白エビ最高!ホタルイカ最高!
 夫は初めての富山。「綺麗な街で、路面電車も走ってて、食べ物も美味しい!」と喜んでいる様子だった。

涼を求め 黒部峡谷へ

目指せ 黒部峡谷鉄道

 おはよう、富山。いざ、黒部。

 まずは、富山地方鉄道本線で、宇奈月温泉駅を目指す。2時間ほど電車に揺られる。フリーきっぷの購入がおすすめだ。
 新幹線を使うルートもある。そちらの所要時間は約1時間。お急ぎの方は、そちらが良い。しかし、わたしたちは急いでいない。ゆっくりで良いじゃない、旅だもの。

 富山の空は曇っていた。雨雲レーダーを眺めながら「少し雨に降られそうだな…」と考える。
 6年前のあの日は、快晴だった。できれば、晴れた日に連れてきてあげたかったと思う。しかし、こればかりは仕方ない。

富山地方鉄道本線
味ある駅名標

 富山地方鉄道・宇奈月温泉駅と、黒部峡谷鉄道・宇奈月駅は目と鼻の先である。

 トロッコ電車まで、もう一息だ。
 宇奈月駅に着くと、駅は観光客でごった返していた。さすが行楽シーズン。列車は定員制のため、予約しておいたほうが確実だ。

 心配していた雨は弱く、もうじき雨雲は抜けるようだ。黒部峡谷鉄道のマスコットキャラクター“くろべぇ”が手を振ってくれる。

 さあ、出発!

くろべぇのお見送り
山彦橋からのお見送り
作業員さんも手を振ってくれる

 終点・欅平まで、約1時間20分の旅。富山県出身の女優である室井滋さんのナレーションとともに、ガタゴトと黒部川をのぼっていく。風が吹き抜ける。天然のクーラーだ。トンネル内は、少し肌寒い。
 「水が綺麗!」と夫が言った。そうなの、エメラルドグリーン、綺麗だね。黒部川扇状地扇端部の湧水地帯の地下水は、「全国名水百選」にも選ばれているそうだ。

 LEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH.をつけて撮影する。トロッコ電車内はスペースが広くない。LUMIX G100の小型のメリット、ここでも発揮である。

黒部峡谷・欅平散策

 終点・欅平駅に到着。湿度が低いのか、カラッとしている。ついに、あの夏の景色を、ふたりで見ることができる。

 わたしたちは、散策へ出掛けた。

欅平駅屋上展望台より
奥鐘橋
人喰岩
「断崖絶壁だ…」
名剣温泉
「こうやって見ると、人間ってちっぽけだねえ」
「でも、この厳しい土地を開拓して、守っているひとたちがいるんだ」
「晴れてきたよ!」「ほんとだー!」
水たまりをじっと見つめる夫。
「どうしたの?」「見て、おたまじゃくしいる!」
「道の真ん中だよ!踏まれちゃう。お家へお帰り!」
(その後10分ほど応援する)
「気持ちいいねえ」
「これ何に使うのかな?」
調べると、絵を描く時に使うデスケルというものらしい。
「誰かここで、絵を描いていたんだ」
「素敵だね」
「ねえ、河原のほう行こうよ」
「わあ、一番涼しい!」
「ここが、わたしがもう一度、来たかったところだよ」
「つめたいっ!」
「黒部、どうだった?」
「すごーく、楽しかったよ」

トロッコ電車に揺られて

 渓谷には、夕方の光と、一斉に鳴くヒグラシの声がこだまする。頭上には、青空が広がり、雲が流れていた。

 名残惜しさも、旅の醍醐味かもしれない。

 帰りは、LEICA DG VARIO-SUMMILUX 25-50mm / F1.7 ASPH.をつけて、シャッターを切った。旅にズームレンズは快適である。

「黒部、良いところだったなあ」
 そんな声が、隣から聞こえる。嬉しい言葉だ。

 ありがとう、黒部。また、いつか。
 その思いを胸に、シャッターを切った。

ただいま!

 帰りの列車に揺られる。そこにあるのは、心地よい疲労感。イヤホンを片耳ずつシェアして、同じ音楽を聴く。きっと、いつかこの曲を聞いたら、今日を思い出すんだろうな。そう思った。

もうひとつの旅への思い

「あなた、どこから来たの?」

 2016年8月。ここは、黒部渓谷・名剣温泉。日帰り温泉の露天風呂。
 化粧気のない女が、どっぷりと湯に浸かっている。上がったらビール一杯ひっかけよう、そんなことを考えている顔だ。

 そこに、ひとりのご婦人が話しかける。「あなた、どこから来たの?」と。

「静岡です。結構遠くて、ようやく着きました」
「おひとり?」
「そうです。ひとり旅なんですよ」
「あら、こんな遠くまで。すごいわねえ」

 この女は、旅先でよく話しかけられる。話しかけやすそうな顔をしているのだろう。慣れたものだ。
 旅の恥は搔き捨て。普段なら話さないことも、なぜか話してしまう。

「ちょっと前に、失恋して、ひとりになっちゃって。でも、今はお金も時間も全部自分のものだから、やりたいことやろうって。ここに来て、気持ち良くて、今すごく幸せです」
「素敵!ひとりの時間って、貴重だもの。良いひとに巡り会えたら、またいつか、一緒にここに来てもいいじゃない?」

 その女は、「それも、いいかもしれませんね」と笑った。空が高い。

 青空に雲ひとつ。未来には、身を委ねよう、この雲のように。

 「いつも、良いプランニングありがとう!」
 その笑顔に、癒される。かつてのひとり旅に、思いを馳せた。

 わたしは、シャッターを切る。その笑顔に。LUMIX G100は、残したい瞬間を逃さない。

おまけ

 2016年、同じ黒部峡谷を訪れたときのことである。

 わたしはLUMIX GF5というカメラを使用していた。当時のデータを見返す。LUMIX GF5で撮った写真に、懐かしさが込み上げる。
 ミラーレスの魁となったLUMIX。軽くて使いやすいカメラだった。LUMIX G100に通じるものがある。

 あの頃は、カメラの仕組みも知らず、ただ記録するために撮っていた。しかし、目の前の美しい景色に、無我夢中でシャッターを切っていたのを覚えている。

 時を経て、今わたしは、LUMIX G100をお借りしている。同じLUMIXで、同じ景色を撮ることになるとは、夢にも思わなかった。

 さらに驚いたのは、あの日の日付を見てみると、黒部峡谷を訪れたこの日と全く同じであった。

 偶然とはいえ、感慨深くなる。LUMIXとの縁を感じた。

 それでは、良い写真生活を。


※本noteの作例は、全て以下の機材を使用して、撮影しました。

■Camera:LUMIX G 100
■Lens:
LEICA DG VARIO-SUMMILUX 25-50mm / F1.7 ASPH.
LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.
LEICA DG SUMMILUX 15mm/F1.7 ASPH.

おまけ
■Camera:LUMIX GF5
■Lens:LUMIX G VARIO PZ 14-42mm/F3.5-5.6ASPH./MEGA O.I.S.

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