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ブラッシュアップライフが起こした革命〜さらば東京卍會〜


ドラマ「ブラッシュアップライフ」が最高だった。

不慮の事故で死んでしまった安藤サクラ演じる主人公「あーちん」(親しみをこめてあーちんと呼びます)が、人間に生まれ変わるために人生をやり直す物語。

このドラマには従来のドラマにあまり見られない革命的な要素がたくさんあったように思うので、自分なりにまとめてみる。

※ネタバレありなので未視聴の方はご注意ください



■アラサー女子マナーへのアンチテーゼ

ドラマや映画でアラサー女子を描く時に必ずと言っていいほどついて回るのが
『恋愛・結婚』というテーマである。

多くの作品で、アラサー女子会は少しおしゃれなカフェやレストランでおこなわれ、
その内容は「最近彼氏が・・・」「旦那が・・・」「子供が・・・」「セックスが・・・」といった恋愛と結婚にまつわるお話。

恋愛に縁がない主人公はそんな話題についていけずションボリし、
将来に不安を持ち始めたところに運命的な出会いが訪れる・・・
というのがこれまでの典型的な『アラサー女子マナー』だった。

しかしブラプラでは、そのようなマナーはほとんど排除されている。

あーちんたちは地元で集合し、ほとんど恋愛や結婚の話はせず、まるで「女が全員恋バナしてると思うなよ」とでも言うように、
ドラマの感想や、学生時代の昔話や、日常に起こる「あれって~だよね」という
雑談オブ雑談、を小気味よいテンポで繰り広げていく。

会話コントについてはさすがバカリズム、『本当に仲のいい女友達』の、熱量低めのあの会話の感じ!解像度の高さがすごい!

『恋愛・結婚に迷うアラサー女子』という固定イメージに中指を立て、
『友達最高!』マインドを貫いた新しいアラサー女子の描き方が素晴らしい。

■男性性の排除

ココリコ田中演じる主人公の父は、妻と娘2人に頭が上がらない、頼りないが優しそうな男。

染谷将太演じる地元の友達「福ちゃん」は、夢を追いかけるミュージシャンだったが夢破れて地元のカラオケ店でバイトしている、お調子者だが憎めない男(浮気歴あり)。

松坂桃李演じるあーちんの元カレは、ギャンブルにはまって彼女にお金を借りるだらしない男(のちに年商10億になるが)。

中学の先生・ミタコングはうざい、市役所の上司・谷口課長は痴漢、薬局の同僚・宮岡さんは不倫、先輩機長・中村も不倫・・・・

そう、この作品『イケメン』がまったく登場しないのである。
(あとみんな浮気しすぎだろ)

極めつけは終盤で浅野忠信演じる高城が登場するシーン。

終盤で登場する謎の男でしかも大物俳優、と来ればストーリーの核心に関わる大きな役割を果たすのが一般的であるが、彼の登場シーンも一瞬。
しかも『タイムリープ(笑)に酔いしれている痛い男』という
手厳しい反応をされるのみである。

これ、明らかに某ヤンキータイムリープ漫画へのカウンターではないですか・・・!

仮に浅野忠信の視点で「ブラッシュアップライフ」というドラマが描かれるとするならば、漫画のような、妻を救うために悪と戦う真っすぐな男の物語、になるはずだ。

そのことは臼田あさ美が演じた劇中劇「ブラッシュアップライフ」が暗に示している。
男性監督と男性脚本家の提案で書き換えられた脚本は、あーちんが考えた当初の作品イメージとはかけ離れた、アクションありの派手なサスペンス調になっていた。
(その脚本打合せのシーンで『地味』と評された展開が、終盤に大きな役割を果たすことになるという伏線の張り方が最高に気持ちいい!)

しかし本編の主軸はあくまであーちんたちの日常で、そこに男は必要とされていない。

男はいつもドラマチックな物語を望んでいるが、あーちんたちはそんな大きな事件が起きなくてもハッピーで、おばあちゃんになってもみんなで楽しくお茶してお喋りできればいいのである。

■圧倒的なストレスフリー

ストレスがかかる描写が徹底的に省かれているのもブラプラの特徴だ。

1989年に誕生するあーちん。89年から現在まで、現実社会では自然災害や社会問題がたびたび起こっているが、そういった問題の描写はブラプラの中では省略されている。

劇中、あーちんは市役所職員、薬剤師、ドラマプロデューサー、医学の研究員、パイロットと、5つの職業を経験することになる。

その点で『お仕事ドラマ』の側面もあり、知らない職種の内情を知れるのも面白さの一つだが、いずれの仕事においても、勤務形態やあるあるを紹介する程度に留め、お仕事ドラマ特有の『社会人の大変さ』の要素はかなり薄い。

また、登場人物のキャラクターも魅力の1つ。みんなどこかしらにクセがあるものの、根は悪い人じゃない、というラインが守られているから、笑い話として受け入れることができる。(個人的に好きなのは福ちゃんです)

■ドラマチックもいいけれど(まとめ)

恋愛、医療、ミステリーなど、ドキドキハラハラしたり感動したりするドラマも面白いが、仕事に疲れて帰ってきたとき、ブラッシュアップライフのような気を張らずに観れるゆるい作品がもっとあってもいいなと思う。

今度、劇中のドラマクラブのように、友達とだらだらとブラプラの面白さについておしゃべりして、そのあと『熊谷ビューティ学院』ポーズでプリクラを撮りに行きたい。

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