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滋味豊かな冬のにんじんをすりおろして

 冬は根菜がおいしい。にんじんも例外ではない。いまは年中出回っているが、本来の旬は晩秋から冬だ。関西でおせち料理や雑煮に欠かせない金時人参は、夏に種を蒔いて年末に収穫する。他の野菜同様、寒さにあうとデンプンが糖に変わり甘みが増す。

 にんじんの原産地は中央アジアで、そこからシルクロードを通じて東西に伝わった。中国では細長い東洋にんじんとなり、戦国時代~江戸時代初めに日本に入ってきた。ヨーロッパではややずんぐりした西洋にんじんとなり、江戸時代末に長崎にもたらされた。現在の日本では五寸にんじんのような西洋系が主流だが、上の金時人参は東洋系。品種も多彩で、生食に向く香りのよいもの、プランタで栽培できる小型のもの、黄色や紫のもの、なかには白い品種もある。

 1991年に、アメリカ国立がん研究所が立ち上げた、がん予防に役立つ「デザイナーフーズ計画」で、にんじん、セロリ、パセリなどのセリ科の野菜は、にんにく、キャベツ、大豆、しょうがなどとともに、最も重要度が高い食品群として位置づけられた。にんじんに含まれるベータカロテンは、体内で必須ビタミンのビタミンAに変わるとともに、細胞や遺伝子を傷つけがんや老化を招く活性酸素を中和する「抗酸化作用」をもつ。やはり抗酸化作用のあるビタミンCも豊富だ。またアピゲニンというポリフェノールは、肥満や高血糖症に効果があるという報告もあり、腸内細菌叢を整えるともされている。にんじんには食物繊維ペクチンの1種ラムノガラクツロナンⅠ(RG-Ⅰ)が多いが、これも腸内細菌によい作用を及ぼすという。健全な腸内細菌叢は免疫系を強化し、感染症やがんの発症を抑える効果が期待できる。

 冬にんじんはさまざまな料理に重宝するが、すりおろして使うと美味さが引き立つ。一品目はスープ。にんじんの甘味にふわふわの卵がからむ。あっさりと鶏出汁でも、コクのある洋風でもどちらでも。二品目、にんじんの炊き込みご飯は各地にあるが、すりおろしたにんじんを使うとご飯がオレンジ色に染まって美しい。塩はあまり入れないほうがにんじんの風味が活きる(それに減塩のためにも)。ホットケーキに入れたり、お好み焼きや餃子の具に混ぜたりしても華やかだ。

●レシピ

すりおろしにんじんと卵のスープ(2人前)
① にんじん中1本(150グラム程度)
② 顆粒鶏がらスープ(製品により塩分が異なるので、味を見ながら加えてください。にんじんの風味を活かすため少な目がおすすめ)
③ 卵1個
④ ネギ

にんじんは皮をむき、すりおろす
鍋に2カップの水を沸かし、鶏ガラスープを溶く
すりおろしたにんじんを加え軽く煮立てる
火を止めて溶き卵を少しずつ混ぜる
最後にきざみネギを散らす。コンソメを使って洋風にする場合はきざみパセリで。

すりおろしにんじんご飯
① 米2合
② にんじん中1本(150グラム程度)
③ 和風だし小さじ1
④ 塩少々
⑤ 酒またはみりん大さじ1

にんじんをすりおろし、他の材料とともに通常の水加減で炊く。炊きあがったらよく混ぜる。
にんじんから水が出るのでいつもより少なめの水で炊くとよい。

オレンジが映えるすりおろしにんじんご飯

参考:
独立行政法人農畜産業振興機構:今月の野菜 にんじん
Pieter Van den Abbeele et al.:Carrot RG-I Reduces Interindividual Differences between 24 Adults through Consistent Effects on Gut Microbiota Composition and Function Ex Vivo, Nutrients, 15(9), 2023

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