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映画「ミッシング」を観ました

※基本ネタバレではありませんが、若干、映画中の演出について触れています

すさまじい映画でした。

私は2時間ずっと心臓をおろし金で擦られた気持ちでした。安易に人におすすめできないほど、途中見るのがほんっとうにつらいですが、それに見合うくらいの救いも、最後に示してくれる作品です。

多分「親」であるとか関係なく、生きづらさを少しでも感じたことのある人の心に、それぞれ響くと思います。

私は鑑賞中、涙でシャツが濡れ、鼻水でタオルがぐっしょりになりました。もう、静かに涙をポロポロこぼす類ではなくて、嗚咽するレベルでズルズル泣いていました。社会で人として生きることには、自分の中でも他人との間でもたくさんの矛盾や不和があって、基本的にすごくしんどいという、普段の私の思いを映像にされたようで。

午前中に一緒に見に行って、夜遅くに「まだひきずってる…」と泣き出した妹も、母親としてというより器用に働けない自分にとって刺さったところがあるらしく、心にたまった気持ちを話して、最終的にお互いの不得手なところを補いあえていることを感謝して寝ました。

愛する娘がいなくなってしまった母を中心に描いてはいますが、決して「子供がいなくなる悲しさ」を直接的に伝えようとしたものではないと思います。

人間はたぶん誰しも、社会で生きることに向いていない部分があって、ふだんはなんとか不器用な部分を覆い隠しながら生きている。

けれども、夫婦や彼らと社会をつないでいた「娘」というピースが欠けた(missing)した時にバランスを失って、人々のいびつな部分が浮き上がり、無様にこすれあって、異様な痛みを生じるところを描いているように見えました。ひとりでも、共にでも、人が生きるということは、本当にしんどくて残酷。

ではその、本来一緒にいることが無理めかもしれないエゴイスティックな人間たちの、生きるとか働くとは一体何だろう、そのための希望って何だろう、ということを示唆された気がしました。それは私にとってとても沁みるものだし、安易なものではなかったのが本当にありがたかったです。(それが何かについては見てほしい)

石原さとみさんが、チャームポイントである唇をガサガサに、肌や髪をボロボロしてすごい…など言われる部分もありますが、脚本がまずすごいです、𠮷田監督すごい。演出も小道具も衣装も全部すごい。徹底的にこちらの心を擦りおろしにかかってます。

静岡にこんな格好のヤンキー夫婦ぜったいいるでしょという解像度がリアルで没入させられた上に、「一般の人が日々感じる苦悩」を、やりすぎじゃない?というレベルで表現してみたり、愛し合っている関係でも当たり前に清濁の感情がある、というシビアさをさらっと出してみたり。

主人公に心を投影して、命を削りながら「娘を失った母親」を狂気的に演じた石原さんだけが変に浮いて見えることがないくらい、人間にも背景にもたくさんの狂気と残酷が散りばめられているし、作品全体としてすさまじいと思いました。

作中、あんまり酷すぎて悲しすぎて、泣いてるうち笑えてきてしまう。そんな表現があるのですが、個人的にとても象徴的だと感じました。もし言葉にするのなら、人間の99.8%の絶望に対し、0.2%の希望というものを、闇を通して浮かび上がらせるような。そのための人間の闇や痛みをしっかりと目の前に突きつけられるような。そんな「本気」の映画でした。

もちろん、観る人にとって全然感想は違うと思います。あくまで私の感想ですが、感情が動くことは共通していると思うので、観に行こうかなと思っていた方は、お仕事の合間などではなく、鑑賞後にじっくりその感情にひたれる時に見に行かれることをおすすめします。

しんどい感情を人とシェアしたほうが楽になる方は、話せる誰かと一緒もよいかもしれません。

(映画予告でラストマイルを大画面で見られてうれしかった…ミコト先生…♡)

#ミッシング #映画 #映画感想 #石原さとみ

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