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【タイプロ】こんなにも篠塚大輝に惹かれるのはたぶんなりたかった自分の姿だから

幼少期を『きらりん☆レボリューション』とともにすごし嵐の超巨大旋風とAKB48の黄金時代をリアルタイムで見ていたわたしは、自分にもきっと特別な力があって、いつかビッグチャンスが舞い込んできてアイドルになれたりするかもしれない、と心のどこかで思っていた。誰にも言ったことはなかったけれど。

16歳くらいのころ、自分がそういう星のもとに生まれたわけではないということに気づいた。だからとりあえず勉強した。努力だけではどうにもならない世界があるならば、生まれ持った特別な才能や強運がなくても死ぬ気の努力でなんとかなる世界もある。

そんなこんなで進学し、国家資格をとって卒業し、就職し、3年働いて転職した。
そのすぐあとにタイプロがはじまり、篠塚大輝が現れた。

菊池風磨「大学は?」
篠塚大輝「大学は東京の…一橋大学に通ってます」
菊池「すんげえ頭いいじゃん」
佐藤勝利「就活とかは?」
篠塚「就活はしてないです、一旦」
佐藤「一旦?」
篠塚「正直やりたい仕事も見つかってない、というよりかは、なんならこのアイドルが今1番やりたい仕事なんで。これに焦点当ててます」

Netflix 『timelesz project -AUDITION-』 episode2

初回の出演時間は30秒にも満たなかった。
ニコニコするような素振りはあまりないけれど、緊張しているわけでもなさそうだった。まっすぐ前を見ながら話す姿は異様に肝が据わっているように見える。
金髪だけどヘアセットやヘアケアはほとんどしていなさそうで、メイクなんて概念はどこにも持ち合わせていないような無頓着さは、K-POPなどに影響を受けてファッションやメンズメイクを習得してきたであろう応募者たちのなかでかなり目立っていた。言ってしまえば浮いているくらいに。

2次審査を通過した篠塚大輝は、3次の全体審査でV6『Can do! Can go!』を踊ることになる。上位から順に前列で踊ることができる制度で、ダンス未経験ながら36人中16位についた彼は「この3日で一桁いきたいです」「まだ巻き返せると思ってます。努力すきなんで」とカメラに向かって言い放った。


この瞬間、わたしはなりたかったもうひとりの自分の姿を篠塚大輝に見ているのかもしれないと気づいた。


今の自分の力量や立ち位置を冷静に把握して現実的なラインの短期目標を設定しているところ。恥ずかしげもなく「努力がすき」なんて言えてしまうところ。地頭のよさとクレバーさを真正面からくらってめまいがした。あまりにもまぶしかった。

わたしもたぶん、努力がすき。後の彼の言葉を借りれば「努力がすきというよりかは、努力していない自分が嫌い」。
でもわたしはアイドルになりたいと言葉にすることはできなかったし、アイドルになりたいと思わないように気をつけていた(来世は何になりたいかなどの質問にはいつもジャニーズJr.と答えていた)。
きっと大学卒業直前のわたしにアイドルになれるチャンスが巡ってきたとしても、それを追いかけることも掴むこともできなかったと思う。
ひょんなことから足を踏み入れたとしても、自分より歌もダンスもずっと上手で、本当に一般人なのかと疑ってしまうほど綺麗な見た目の、なんならアイドル経験すらあるようなひとたちに囲まれたら…自信を失って逃げ出している気がする。

でも篠塚大輝は違った。3次のグループ審査ではSMAP『SHAKE』を披露することになり、ダンサーやボーイズグループ所属経験のある候補生も集まるなかでなんとか食らいつこうとがむしゃらに歌い踊っていた。
がむしゃら。しゃかりき。そんな言葉がほんとうによく似合っていた。

NOSUKE先生からマンツーマンで教わってできるようになったはずのイントロとアウトロのステップが、本番でぜんぶ逆向きになってしまっているところ。そんなことどうでもよくなるくらい堂々としていて、誰よりも楽しそうなところ。
カメラの前でパフォーマンスをしたことなんて一度もないはずなのに、一切の照れや躊躇いを感じさせないカメラ目線のアピールがなぜかすでにできてしまっているところ。
かと思えば、フィニッシュの決めポーズで目線を送るカメラを間違えてしまうところ。

綺麗に上手にかっこよく踊れる候補生はたくさんいたけれど、「そうじゃない側」の篠塚大輝からなぜか目が離せない。見ていて自然と口角が上がってしまうのを感じた。わたしのなかではもうアイドルだった。

これは、なりたかったわたしの姿だ、と思った。
わたしは篠塚大輝になりたかった。

篠塚大輝は宣言どおり着実にスキルを上げ、順位も上げて、最終審査までたどり着いた。

あまり考えないようにしているし彼の可能性を信じているけれど、もしも篠塚大輝が大学生に戻ってふつうに就職することになったら。
わたしは篠塚大輝というアイドル志望の大学生がいたこの数ヶ月間を絶対に忘れない。アイドルになれなくてもわたしの中では特別な一等星だった。このきらきらした気持ちを、きれいにリボンをかけて大切にしまっておこうと思う。

もしも、timeleszのメンバーとしてアイドルになったら。彼の努力の成果と成長を、これからも見せてもらえる。きっと今よりずっとずっとかっこよくて輝いている姿を更新し続けて、見たことのない顔もたくさん見せてくれるだろう。そのたびにわたしは彼をすきになる。
こんなアイドルを応援できることはたぶんもう、二度とない。

どちらにせよ、わたしは今のこの世界でわたしの努力を続ける。
どの世界にいたとしても、篠塚大輝が努力を続けていると思えばわたしも頑張れる気がするから。


でもやっぱり少しだけ、今日が篠塚大輝にとってのアイドル前夜になることを願って。

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