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【書評】『渋沢栄一が転生したらアラサー派遣OLだった件』

渋沢栄一って、何をした人なんだっけ?
「一万円札にのってるくらいだから、すごい人なんだろうけど、、」
「気になるけど、歴史を調べるのは、難しそう、、」

2024年7月3日に新しいお札が発行されました。
お札に描かれている肖像画は
一万円札:渋沢栄一
五千円札:津田梅子
千円札:北里柴三郎

となっています。

お札の肖像画は、時代とともに何度か変わってきていますが、一万円札といえば「福澤諭吉」が長い期間使われてきていたので、今回、一万円札が「渋沢栄一」となり、またガラッとイメージが変わった印象です。
(ちなみに福澤諭吉の一万円は1984年から40年間使われていたそう)

お札の肖像画になっている人たちはみな日本の「偉人」と呼ばれるような人たちですが、「何をした人なのか説明して」と言われても、ちゃんと説明できる人はほとんどいないと思います。

気になりはするけど、自分で歴史の本を調べて、というのは面倒ですよね(笑)

概要であれば、国立印刷局の「新しい日本銀行券特設サイト」に掲載もされています。

今回ご紹介する『渋沢栄一が転生したらアラサー派遣OLだった件』は、まさに、渋沢栄一がどんな人なのか、をライトノベル風のタイトルでビジネスエンタメ小説として書かれたものなので、かなりとっつきやすく、渋沢栄一がどのような人だったのか、楽しく学べる内容となっています。

書籍の内容から、特に気になった箇所と感想をまとめましたのでぜひ、最後まで読んでみてください!


本の基本情報

著者:三浦 有為子
発刊:2024/11/29
出版社:クロスメディア・パブリッシング

今回、本書を執筆された「三浦 有為子」さんは、映画やドラマなどの「脚本家」をメインとされており、なんと『第30回日本アカデミー賞優秀脚本賞受』も受賞されている方なんです。

また、小説の形式で、本を出されるのは今回が初めてということで、ますます『渋沢栄一が転生したらアラサー派遣OLだった件』がどんな内容になっているのか気になりますね!

本書のテーマ

この本は、「日本経済の父」とも呼ばれる渋沢栄一が令和に転生し、アラサー派遣OLとして現代社会の課題に挑むビジネスエンタメ小説です。

渋沢栄一の哲学をもとに、現代の社会問題ともいえる、労働格差や派遣切り、賃金問題といったリアルな社会問題を解決していく姿が描かれています。
また、突飛な内容で、単なる転生ものとして楽しむだけにとどまらず、渋沢栄一の著書である『論語と算盤』をきちんとベースとして物語の随所に反映されているため、ビジネスや働き方について考えるきっかけにもなる一冊です。

どんな人におすすめか

本書は以下のような方に、特におすすめの書籍です。

  • 渋沢栄一と、そのビジネス哲学に興味がある人

  • エンタメ小説で楽しみながら学びたい人

  • 転職やキャリアに迷っていて、働き方や価値観を見直したい人

小説形式なので、楽しみながら、学びにもなる内容になっているのがうれしいですね。

それでは次の項目から具体的な内容に入っていきます!

主人公として「転生」する渋沢栄一とは

改めてですが、渋沢栄一とはどんな人だったのでしょうか。
「近代日本経済の父」とも呼ばれていますがどれだけすごい人だったのか。

いくつか調べてみた情報を書いていきます。
・日本で初めての銀行である「第一国立銀行」を設立した(現在のみずほの前進)
三菱UFJ銀行、三井住友銀行を含む多数の銀行の設立に関わった
・東京海上日動火災保険やニッセイ同和損害保険など、大手保険会社の設立にも関わった
・サッポロビール株式会社、とアサヒビール株式会社の設立にも関わった
・カネボウ、帝人、KDDI、電通、富士フイルムなどなどを含む、約500社の設立に関わった
・20人以上の子供がいる(認知していない子供も含めると100人以上とも、、、)
・著書である「論語と算盤」は現代のビジネスパーソンにも読み継がれている

はい、ちょっと元気すぎるところもありますが、とにかくもう、すごいという言葉では言い表せれないほど、「すごい」としか言いようがないですね。

偉人と言えど一人の人間なので、すべてが素晴らしい、とは言えない部分もあるのかもしれませんが、これは「一万円札の顔」になるのも当然と思えますよね。

こんな人物が令和の現代に転生したら?一体どんなことをやってくれるのでしょうか。

様々な要素が絶妙にミックスされた小説

タイトルとして、ここ数年流行している「転生もの」が使われているとおり、内容としては、主人公となる派遣OLの「一栄 華子(イチエイ ハナコ)」に頭を打った衝撃で転生する、というもの。

いきなり現代の女性に転生してしまった、渋沢栄一が、メイクをしたり、ストッキングの伝線を気にする、という部分だけでもかなり笑えるポイントです笑

そして内容は、ただの小説ではなく、この設定を使いながら、「渋沢栄一」がどのような考えを持った人だったのか、現代社会の労働環境、派遣問題などに目を向けつつ、論語と算盤の内容も踏まえながら、物語形式で、楽しく面白く、学んでいける、というもの。

この設定だけでも、すでに面白いのですが、内容としても合間に小ネタがたくさん含まれており、転生した渋沢栄一がパソコン上のフォルダ名を「YOSHIZAWA」パスワードを「RYO」にするなど、渋沢栄一を主人公とした大河ドラマ「青天を衝け」で主役をつとめた、吉沢亮さんの名前にする、といった笑いどころも多数含まれています(笑)

これだけたくさんの要素を含んだストーリーをまとめるのはかなりの難易度になりますが、これが上手くまとまっているのは、やはり作者である三浦 有為子さんの構成力、執筆力の高さによるものだと感じました。

「論語と算盤」の内容と現代社会の課題

「論語と算盤」で「道義を伴った利益を追求しなさい」と説いています。
利益を求めることはもちろん、道徳、倫理観を持って、それを行うこと、人のやる気を引き出し成長させることで、経済活動を行っていくことなどが書かれています。

一言で言い表すのは難しいのですが、企業のお金、利益は大事だけれど、企業や、経営者だけがもうけるのではなく、企業の存在自体が国の繁栄のためにもある、というお金もうけと道徳的な部分という、一見、矛盾したようにもとれるものを、組み合わせた内容になっています。

今回の舞台、私たちが生きる、令和の世の中では、どうでしょうか。
渋沢栄一が生きた時代と比べ、発展を遂げた日本。しかし、人々はどんな顔をして働いているのか。。

主人公は、発展した社会を象徴する高層マンションの販売に関わる受付の仕事を「派遣」で行っています。契約の更新自体が不安定な形態、時給制で、より安いコストでの労働力を求める現代の日本の社会問題に切り込んでいき、それを解決していくストーリーになっています。

社会貢献、他社貢献が”理想”だとは理解できるものの、実際の私たち、そして現代の企業が、利益だけを求めるものになっていないか。現代の様々な制度は、国も働く人も富む仕組みになっているのか。

ストーリーを追いかけながら、自分自身を振り返り、考えていくことができます。

もちろん、主人公や、周りの人物たちは、それぞれの働き方、生き方を最終的には見つけていくことになります。

内容自体は、重たすぎるものではなく、スカッとできる内容になっているので楽しく読めますよ!

まとめ

今回は、「新しい一万円札の顔」渋沢栄一が現代に転生し、アラサー派遣OLとして現代の社会問題に立ち向かっていく、ビジネスエンタメ小説渋沢栄一が転生したらアラサー派遣OLだった件』をご紹介しました。

小説形式のため、ネタバレは基本無しで書かせていただきましたが、本当に魅力たっぷりの、読み物としても面白く、歴史、社会問題と、考えさせられる面もあり、たくさんの人に読んで欲しい一冊となっています。

ぜひ本書を手に取ってみていただければと思います。

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本書は、「ツナグ図書館」の活動を通じて、出版社のクロスメディア・パブリッシングよりご恵贈いただきました。
この場でお礼を申し上げます。
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