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家族という病 下重暁子(感想と考察)
同じ家で長年一緒に暮らした方といって、いったい家族の何が分かるのだろうか。
身近で遠い存在「家族」。家族との関係がうまくいかなかった僕にとって、「家族」は興味の尽きない単語であるとともに、現在も抱え続けている問題の一つ。きっと「家族」との関係に心を悩ませている人が多いのではないかと思う。近くて遠い家族について解剖した『家族という病』について感想と(微々たる)考察をしてゆきたいと思います。
ほんとうはみな家族のことを知らない
親しい友人・知人とは、わかり合おうと努力するせいか、よく話をし、お互いのことについても知ってる場合が多い。情に溺れることなく理性で判断しようとするから、的確に把握することも出来る。
情に流される。すべてではないけれど、家族だと起こりがちな問題だと思う。例えば、「人見知り」の他人に対して、そういう人なんだなぁと認識して自然に接することができるのに、自分の子供の人見知りに関しては「治してあげなくちゃ」と子供の性格を置いてけぼりにして教育してしまう。
他人だと割り切れるから納得できることも家族だとそうはいかない。情(愛情)は人を盲目にさせてしまうのだ。そんな理不尽さを「家族」だからといってやすやすろ呑み込めてしまうのはやはりおかしな話だなとも思う。
家族を縛る役割
その枠の中で家族を演じてみせる。父・母・子供という役割を。家族団欒の名の下に、お互いが、よく知ったふりをし、愛し合っていると思い込む。
何でも許せる美しい空間…。そこでは個は埋没し、家族という巨大な生き物と化す。
「役割」とはなんて息苦しいものなのかと感じます。「母」になったら、「女」を捨てなければいけないのか。「お兄ちゃん・お姉ちゃん」になったら、我慢しなくちゃいけないのか。「父」になったら、弱みを見せてはならないのか。「弟・妹」になったら、上の兄弟のゆうことを聞かなければいけないのか。「役割」には目に見えない制約がつきものなのかとすら感じるのです。
期待の行方
夫や妻への不満は、あれをして欲しいこれをして欲しい、それなのに何もしてくれないといったことが原因だ。
確かにな…。いや、でも…。というような印象を受けました。そもそも期待のないところには不満すら起きないのは当然のことで、それすらやめてしまえというのは強引ではないのかなと。結婚するのは「このひとと一緒にたい」からだと(純粋な恋愛なしに結婚するのとは別に)。
「期待のありなし」じゃなくて「期待の上塗り」、こっちのほうが大きな問題ではないでしょうか?一緒に入れればそれでいいと思ってた二人が、それだけじゃ満足できなくなる。というより、「一緒にいたい」という最初の期待が一たび果たされてしまえば、そこに「満足感」を得られなくなってしまうのではないだろうか。だから、プレゼントや特別な「何か」がないと満足できなくなる。日常の些細なこと、一緒にいられることを「当たり前だ」と誤認してしまうこと。それこそが不幸の始まりなんじゃないかなと感じるのです。
盲目的な解釈
わかったように思っても、それはその人物そのものをわかったわけではなくて、自分自身に投影させて、都合よく解釈しているにすぎないのだ。
家族とは言え、自分とは異なる肉体や精神をもった人間…それが日常の中で薄れていってしまうのかもしれません。家族として強制的に同じ括りに入れてしまうから、確執やわだかまりみたいなものが生まれる。「理解しきれるわけがない」のに無理矢理、理解しようとしたり、理解できるように干渉する。これが「家族という病」なんじゃないかなと感じます。
目に見えない「家族」
家族とは言うまでもなく、形ではなく心の触れ合い、相手を思いやる気持ちである。
「思いやる気持ち」これさえあれば家族はうまくやってゆけるのではと思う。「家族」という大きな集合体を大切にするのではなくて、家族に住む「一人一人」を大切にしてあげれば、それこそ素敵な「家族という居場所」が作れると思いました。
まとめ
家族そのものが「病」なのではなく、家族を病にしてしまう「家族という概念」が「病」の正体なのではと強く思いました。だって、家族って暖かくて、心が安らぐ場所でありたいですよね。本書は「家族」から心が離れてしまった人にも、嫌な思い出がある人でも「違った見方」を提供してくれる一冊です。
もしかしたら「あなたの知らない家族」を発見するきっかけになるかも知れません。家族と向き合いたいなと改めて感じる本でした。是非手に取ってみてください。
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