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日常茶飯事の「罪・絶望」を明るみにする

私の妻は長年うつ病です。元気な時でも常々

罪悪感・絶望感

を抱いていることがひしひし伝わります。

こういった罪悪感、絶望感は「特定の人のみが抱く特別な感情」と言った程度のものなのでしょうか?実は、誰もが日常的に抱いているが、皆ごまかしながら生きているだけなのではないでしょうか。


さて、皆様は映画「メメント」をご存じでしょうか。有名な映画なので、すでに観た方もいらっしゃるかと思います。


この「メメント」は非常に難解な映画として有名です。何故なら時系列が逆だからです。



「現在から過去へさかのぼる」


という今までにないスタイルの映画です。実際の所、私も1回観ただけではこの映画の真意がよく分からなかったので、3,4回は見返しました。


しかし、難解な分、「罪・絶望とは何か」について簡潔に分かりやすく伝えている非常に秀逸な映画だと感じます。その点を皆さまにお伝えしたいと思い至り、以下にあらすじを簡潔に書くことにしました。



=====以下、ネタバレ含みます=======




主人公とその妻の住んでいるアパートに強盗が押し入りました。

その際、強盗はその妻を袋詰めにし、主人公の頭を思いっきり殴りました。


結果的に二人とも死にはしませんでしたが、主人公は短期記憶が消失する脳の障害(20分経つと「20分前に何をしていたか」という記憶を完全に忘れてしまう)を負ってしまいました。しかし、妻はそのことが信じられず



「強盗事件のトラウマで単に記憶を失っている振りをしているだけなのではないか」
「いつかは回復するのではないか」

妻のかすかな希望


というかすかな希望を抱いていました。しかし、その希望とは裏腹に、いつまでたっても短期記憶が消失してしまう状態が続いたので



「一生治らない脳の障害なのか」
「トラウマで記憶を失っている振りをしているだけなのか」

妻がはっきりさせたいこと



をはっきりさせたいと思い至りました。そこで、主人公が毎日打ってくれているインスリン注射で試すことにしました。

「注射を何回も打ってしまうと私は死んでしまうので、さすがに記憶がよみがえるかもしれない」

妻が抱くかすかな希望

というかすかな希望をもとに



「今日もインスリン注射を私に打ってね」

主人公へのお願い



と20分おきにお願いすることにしました。


すると、主人公は何のためらいもなく、20分おきに何回も何回も妻にインスリン注射を打ってしまいました。妻は



「ああ、本当に脳の記憶障害が起きていたのだ、、」

妻の絶望



と確信・絶望しながら、インスリン注射の打ちすぎでそのまま死に絶えました。


主人公はその死にゆく妻を目の当たりにし、「なぜ妻が死んだのか」が理解できず、そして死んでしまったことを受け止めきれなかったため、記憶の改ざんが(自分でも気づかないうちに)起きてしまいました。



「以前に押し入ってきた強盗が私の妻を殺したのだ」

記憶の改ざん


という架空の記憶にすり替わり、そして、その強盗に復讐することこそが、主人公の「生きがい」になってしまったのです。



=========あらすじここまで=========




難解な分、この映画は「人間の真理」を非常にシンプルに暴いていると私は思います。要は



「罪・絶望を背負いきれないので、記憶を(自分でも気づかないうちに)改ざんしてしまう」


ことこそ「人間の真理」なのだと教えてくれる映画となっています。実際の所、こういった



「罪・絶望から逃れるための記憶の改ざん」は、実は誰もがやっている日常茶飯事なのではないでしょうか(日常茶飯事過ぎて誰も気づいていない)。