形容詞文の拡張(その2)
前回の続きです。
変化を表す「なる」という動詞を用いる場合、結果としての状態を形容詞や形容動詞で表すことができます。
「賢く」は形容詞の連用形、「幸せに」は形容動詞の連用形です。表面的にはこれらの連用形が「なった」という動詞を修飾しています。しかしながら、「修飾語」ならなくても文として成立するのかというと、どうも怪しくなります。
この文のしくみをもう少し掘り下げて見てみましょう。
終止形(形容詞-い/形容動詞-だ)で言い切って状態を表す文と並べて見てみると、「なる」の文の「名詞が+形容詞-く」や「名詞が+形容動詞-に」の部分にも主語と述語の関係があることに気づきます。これを英語では「名詞―形容詞」の主語・述語の関係を保ちつつ、用いる動詞を、状態を表すbeから変化を表すbecomeなどに変えて表します。
変化が生じることを表すときには「なる」を用いますが、変化を生じさせることを表すときには「する」を用います。
これらの文の「賢く」や「幸せに」も表面的には修飾語ですが、これらの語がないと文としての成立がやはり怪しくなります。
こちらもしくみを掘り下げて見てみましょう。
格助詞が変わったり活用語尾が変わったりしていますが、「なる」の文の「名詞Y+形容詞-く」と同様に「する」の文の「名詞Y+形容詞-く」もまた、言い切りの「名詞Yが+形容詞-い」と同様の主語と述語の関係が成り立っていることがわかります。同様に、「なる」の文の「名詞Y+形容動詞-に」と同様に「する」の文の「名詞Y+形容動詞-に」もまた、言い切りの「名詞Yが+形容動詞-だ」と同様の主語と述語の関係が成り立っています。これらを英語にすると、makeなどを用いた文になります。
これらの文でも、「名詞―形容詞」の主語・述語の関係が保たれています。そして、時制がmakeの側で表すことができるため、「名詞―形容詞」が述語動詞の後で直結しています。
今回取り上げた英文のパターンを並べて見ると、beとbecomeの文は「名詞+動詞+形容詞」という同じパターンになっていることがわかります。そして文末の形容詞は動詞とともに形成する述語の一部となっています。英語ではこのような述語の一部となっている形容詞を「補語」と呼びます。述語本体はあくまでも動詞ですからこれを「述語動詞」と呼び、述語動詞の左側の名詞を「主語」、右側の名詞を「目的語」と呼びます。これらを整理すると、次のようになります。
この話題は、これでおしまいです。またときどき文法のトピックを取り上げていきます。