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題名読書感想文:65 題名から見る割合の割合
本をいちいち全部読んでいては時間がいくらあっても足りません。だったら題名だけ読んでしまえば効率的じゃないか。そんな読書感想文ならいくらでも書けそうです。そんな感じで思いついたのが「題名読書感想文」です。効率と引き換えに失ったものがデカすぎる気もしますが、今日も元気にやって参ります。
今回のテーマは「割合」です。近年、「〇〇が×割」みたいな題名の本をよく見るようになりました。
そこで気になったんです。「何割がどれくらいあるのか」と。そこで、とりあえず、アマゾンの検索で、題名に1~9割が入ってる本を軽く調べてみました。
では、早速1割から参ります。
1.1割
1割は少ない印象を与えやすい言葉です。そのため、「少ない」の代わりに使われている題名が見られました。例えば、「フランス人は1割しかお嫁に行かない」です。
ポジティブな使い方としては「たった1割でいいんですよ」というパターンがあります。中でもシンプルな題名として「がんばるが1割」がございます。
「1割がんばればいいんですよ」と暗に言っているのが何となく分かると思います。
あとは「トップの1割がやってることを教えますよ」みたいな売り文句の題名もございます。「トップ1割の教師が知っている「できるクラス」の育て方」がその典型です。
また、そこそこ多いパターンとして、9割と組み合わせるものがございます。「片づけは整理9割、収納1割」みたいな感じですね。
この場合は9割も1割も必要なものとして扱っていますけれども、「9割じゃなくて1割になりなさい」みたいなスタイルのものもあります。「絵師の9割筆を折る 残りの1割筆を売る」なんかがそれです。
「9割より1割に入りたいでしょ? じゃあ読んでみてください」という売り文句でございます。
2.2割
2割も傾向は1割と同じです。少ないものとして扱われやすく、8割とセットになっている題名もそこそこある。
ただ、1割ではほとんど出てこなかったものが、2割でグッと増えるものがございます。それは税金と社会保険です。例えば、消費税絡みでは「インボイスの基本から「2割特例」の要件、申告まで これならわかる! 個人事業・フリーランスの消費税」がありますし、
社会保障では「週刊社会保障2018年10月22日「後期の窓口負担2割は早急に結論を得て実施を」」なんてものがあります。
これらは恐らく法で決められた具体的な割合でございまして、本来ならば数値化が難しいものを「本当は2割でいいですよ」「実は2割しかないんですよ」と言う題名とは性質が異なっていると思われます。
3.3割
3割になると、少ない割合として用いられる形が減り、純粋に「3割」という割合を使うものが増えてきます。例えば「「なぜ3割間伐か?」林業の疑問に答える本」です。
もう3割間伐することが決まっていて、その上で「どうして?」と題名で訴えている形です。ただ、もちろん少ない数字としても使われる場合はあります。それが「中学受験算数 3割しか取れなかった子が本番で合格点を叩き出すスゴ技勉強法」です。
現実味のある少なさと申しましょうか。1割よりも3割のほうがウッカリ取ってしまうような得点であり、またどうにか逆転できそうな得点でもあるのかもしれません。
また3割となるとグッと存在感を増してくるのが野球です。
打率が3割を超えるバッターは優秀であるという明確な基準があるため、野球本が出てくるのだと考えられます。
4.4割
4割では、3割に引き続き野球の本が出ています。例えば、「4割は打てる!」です。
4割打者となりますと、近年のプロではまず存在せず、夢のような打率となっています。だから、「4割は打てる!」と半ば自分自身に信じ込ませるかのような題名になっているのかもしれません。
また、4割となりますと、徐々に「多い割合」として使われるようになってきます。4割を多い割合として使う場合、なぜかネガティブな意味合いで用いられることが多いようです。例えば、「「非正規4割」時代の不安定就業」です。
ただ、ポジティブな使われ方もあるにはありまして、「公認会計士が教える年収の4割を貯蓄する方法」がその一例です。
4割はまだ半分にも満たない割合ではございますけれども、半分に迫っているとも言えます。そのため、少ない割合として扱わなくなり、結果として多い割合として扱われるようになっているのかもしれません。
5.5割
実は本の題名としては最も少ないのがこの5割で、紙の本で発見できたのは今のところ1冊だけです。しかも、他の割合とセットになっている題名でございます。「「教育七五三」の現場から-高校で7割・中学で5割・小学校で3割が落ちこぼれ」がそれです。
まさかの七五三セットです。「〇割」がつく題名の本は多いですが、みっつ1セットは今のところこの題名が唯一です。
それにしてもどうして5割が少ないのでしょう。「世界の5割はやさしさでできている」みたいな、某バファリンのような題名の本がもっと存在していると思ったのですが。
ひとつ原因を予想するならば、他に代用できる言葉があるからだと思われます。例えば、「半分」ですね。「五分」なんて言葉を半分の意味で使う場合もありますし、等分とか、半数とか、ハーフとか、他の割合に比べて代用品がかなりたくさんあります。そこに5割が食い込んでいくのは大変なのかもしれません。
6.6割
6割本はなぜか4割本の半分以下しかございません。そして、不思議なことに4割だと多い割合に使われることがやや多いのに、6割は少ない割合として用いられることがやや多いように思います。「ありのまま育児法 6割出来たら満点。頑張りすぎない子育て法」がその一例です。
「6割でもいいですよ」みたいな使われ方をしています。完璧ではないけれども充分な量。そんな意味合いとして6割はちょうどいいのかもしれません。
ただ、多い意味合いで使わる場合もあります。「保険は今より6割安くできる!: 保険会社の社員が家族にしか教えない保険の「超」見直し術」が一例です。
確かに「6割引き」と言われると、何だか物凄く安くなっているように思えます。そんなに割引して大丈夫なのかとお店を心配してしまうようなレベルです。
しかし、基本的に6割を多い割合と扱われることはありません。4割と真逆なんです。恐らく、4割は3割2割1割のようにもっと少ない割合がたくさんありますし、6割だって7割8割9割10割のようにもっと多い割合がたくさんある。だから、このような不思議な性質を持っているのかもしれません。
7.7割
7割本は6割本よりも更に少ないです。何なら3割本の3分の1程度しかありません。多いと断言しづらい割合ですが、かといって少ない割合でも全然ない。そんなややこしい位置が、本の題名に採用されづらいのかもしれません。
一応この辺になると多い割合として扱われるようにはなります。ただ、圧倒的に高い割合でもないため、「意外と多いんですよ」的なニュアンスで使われることが多いです。例えば、こんな感じです。
「会社で起きている事の7割は法律違反」とは、なかなかの題名です。この中で最も強い単語は「法律違反」であり、そこを「7割」が「意外と多いんすよ」とサポートしています。
そう言えば、こんな題名もあります。「おしゃれは7、8割でいい」です。
「〇〇が×割」みたいな割合系題名は、対象が何であろうと7割なら7割と断言する場合が圧倒的に多いんです。もう、本当は何割必要か誰にも分からないような、ぼんやりとしたものでも「必要なのは7割!」みたいにビシッと言う。ですから、こうやって「7、8割でいいっすよ」みたいにぼんやりさせるのは極めて珍しい。貴重な優柔不断さです。それこそ、保護に値するレベルかもしれません。
8.8割
8割は割合本の中では2番目に多いです。割合としてはかなり多いけど、それ以外もそこそこある。そんな使い勝手のいいイメージが、8割を多く活用する要因かも知れません。2割のところでお話した通り、8割と2割がセットになっている題名もあります。
8割本の中で多かったのが、「8割捨てなさい」系の本です。これは8割本の大きな特徴でございます。整理整頓系の本に多く見られまして、例えば「8割捨てて、すっきり暮らす」がございます。
捨てるものも割といろいろで、物だけではありません。例えば家事だったり、
話だったり、
何なら世の中8割カットを推奨する題名もございます。
割合としてはかなり多いけど、それ以外もそこそこある。それが8割です。つまり、8割捨ててしまっても、残るものがまあまあある。そんな特徴が整理整頓系の本と相性がいいのだと思われます。
9.9割
書店や図書館に行く習慣がある方ならば何となく察している通り、割合本の中では9割が最も多いです。もう圧倒的でございまして、8割の3倍以上は本が出ています。割合本の王道と言ってもいい規模でございます。
では、どうして割合本の中で9割がそんなにたくさん出ているのでしょうか。アマゾンで調べたところ、題名に9割がつく本は昔からちょこちょこ出版されては来たようです。ただし、その本の多くは「勝率9割」とか「テストの得点率9割」みたいに、具体的な目標として使われていました。
風向きが変わったのは2005年に発売された「人は見た目が9割」だと思われます。
何とウィキペディアにも単独の項目がありました。
それによると該当書籍は200万部以上売れたベストセラーでございます。この9割本が以前の9割本と異なるのは、「人を判断する」というかなりぼんやりしたものに「見た目が9割だよ」と具体的な割合を出してビシッと言いきった点だと思われます。
9割を用いて「当てはまらないところも1割あるよ」としたところも良かったのだと思います。「何でもかんでも見た目じゃないよ」という部分を残しておくことで、「何か嘘くさいな」と思われにくくしている。
本は多く売れましたし、題名もキャッチ―だった。そのため、「〇〇が×割」みたいな題名の本が多く出版されるようになり、割合本の中でも9割が最も題名に使われる結果となったのでしょう。
10.10割
じゃあ10割はないのかと言いますと、それなりにあります。「自分は10割と言い切るよ」という強い意志を感じますし、「〇〇が9割」をフリにしているようにも見えます。「女は見た目が10割」はまさにそうです。
「人は見た目が9割」から1年も経たないうちに発売しています。「本家をいじってないっすか」と思わせるほどのスピード感です。
10割ともなると、大切な物事を強調するための言葉として使われることがほとんどです。事実かどうかはともかく、「これが大切なんだ」という著者の意気込みはよく分かります。
変わり種としては「栄養まるごと10割レシピ!」があります。
これは食べ物を丸ごといただいて、全て栄養にしてしまおうという目標のもとに作られたレシピを紹介しているようです。食品ロス削減にも繋がるとのこと。食品ロス削減自体は現在としてはそこまで珍しいテーマではありませんが、10割の使い方としては結構特殊でございます。
11.その他の割合
ここまで割合本を1割から10割まで紹介しましたけれども、それ以外の割合本は存在するんでしょうか。とりあえず、2冊は発見しました。
まずは0割です。「0割0分0厘ひとり旅: 巨人軍、栄光の秘密」でございます。
野球の本なのだろうという推測はできます。0割0分0厘となっている理由が何なのかは分かりませんが、少なくとも0割を用いた題名はかなり珍しいです。
10割より大きい本としては、「自分を癒し、人を癒す【セラピーが11割】」があります。
10割を超えた割合本は、今のところ上記書籍が唯一です。さすがに10割を超えると、超えた分の意味を考える必要が出てきます。そのため、数がグッと減ってしまうのかもしれません。「11割」という言葉自体、ほとんど使わないのも遠因になっていると推測されます。
これより大きい割合本が出ていないかも確認しましたが、今のところは20割も50割も100割も見つかりませんでした。アマゾンで「18割」を検索したところ、アマゾン側で勝手に「18禁」に変換されて検索されたことを報告し、今回の感想文を終わりにしたいと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。