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反寿限無物件

 その昔、どこかのサイトを見ていたら「サッカーのチーム名はマンションの名前みたいだ」みたいなことを書いている人がいました。確かに、地名とカタカナのセットになっているところは共通しています。サッカーの知識ゼロの人からしたら、ヴィッセル神戸は神戸市にある高級マンションだと思うかもしれない。

 地名の中には人の名字になっているものも数多く見られます。そのせいか、マンションの名前は芸名にも見えます。「ジェームス三木」なんて三木市にあるマンションと言われても信じてしまいそうです。なんで兵庫県の地名ばかり使っているのか自分でもよく分かりませんが、とにかくそんな感じです。

 そう言えばマンションの名前はいつからこうなったのでしょうか。何となく検索したら、不動産会社のブログが出てきました。

 公的な機関の調査ではないので信憑性は推して知るべしですが、1970年代以前には「ハイツ」「コーポ」などが多く、そこから時代と共に多様化していったようです。近年では「ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス」みたいに、名前が長くなる、いわゆる寿限無じゅげむ化する物件もあれば、よそが使わないような言葉をくっつけようとするあまり言いづらくなってしまった物件もあるなど、オリジナリティを出す戦いも来るところまで来てしまったようです。

 上記ブログは2021年のものですが、この時点で国内のマンションは10万棟を超え、業界内では名前もだいぶ出尽くしたんじゃないかと言われているとのこと。「いやいや言葉はまだたくさんあるじゃないか」と一瞬思ってしまいますが、物件の名前にふさわしい言葉となると、なかなか難しいのかもしれません。よそが使ってないからとの理由で「ベーコンレタスバーガー六甲山」みたいなマンション名では、いろいろ問題が出てくるわけです。

 集合住宅ですと、今ではネットで地図を見れば物件名が簡単に分かります。もちろん、現地に行けば看板で「ここがベーコンレタスバーガー六甲山だよ」と物件が主張していたりします。たまにビックリするような物件名と巡り合えたりするので、旅行先でも近所の散歩でも物件名はとりあえず見る癖をつけています。

 そんなある日のことです。仕事で某所を移動していますと、そばになかなか綺麗なマンションが建っておりました。当然、気にするのは物件名です。幸い、分かりやすいところに看板がついていたので、物件名を確認してみたんですが、そこに書かれていたのは地名のみだったんです。明石市に建っている物件だったら「明石」しか書いてない。

 私は「なるほど」と思いました。寿限無な物件名は書類の記入が面倒です。何か手続きするたびに、マンション名でゴチャつくのは何かと大変です。だったら逆を行けばいい。カタカナを取っ払って地名だけにすればいい。明石に建っていれば物件名に「明石」を使うのは何の問題もありません。「明石205号室」なんてなかなかいいじゃないですか。

 と思って地図で調べたら、ちゃんとカタカナ+地名のマンションでした。同じ名前のマンションがシリーズであっちこっちに建っていているためか、「看板には地名だけ載せればいいや」と誰かが考えたのでしょう。

 でも、地名だけパターンはなかなかいいかもしれません。何なら、「寿限無化するくらいならうちは地名1本で行く」と英断する不動産業者がもう現れているかもしれない。「三宮101号室」なんて部屋に住んだ暁には「三宮が俺の家」とか言い出す人が出てくるに違いありません。

 今後の不動産業界から目が離せません。

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