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題名読書感想文:42 辞典ではなく事典、でもたまに辞典

 学生時代に夏休みの読書感想文で苦しんだトラウマが作用してか、題名を読んだだけで感想を書く「題名読書感想文」をそこそこ続けている次第です。

 今回のテーマは「事典」です。以前、「辞典」をテーマにいろんな題名を取り上げましたけれども、事典でもそれをやってみるわけです。ちなみに「事典」はいろんな物事を解説するものであり、「辞典」はいろんな言葉や文字を解説するものという違いがあります。

 事典もまたいろいろな題名が存在しています。例えば、「発光の事典」です。

 何かを光らせるだけで事典が1冊できあがるんです。それだけ発光というのは複雑な機構になっており、また多彩な発光方法があるということでしょう。

 大体において、感想文を書きたくなるような題名の事典は、発光の事典のように限られた内容を深く深く掘り下げえるタイプのものが多いです。例えば、「蒲鉾製造ミニ事典」です。

 蒲鉾かまぼこの製造だけで事典を作れる。人類の可能性を感じずにはいられない事典でございますけれども、気になるのは「ミニ」なんです。言葉の意味から考えて、コンパクトになっているものと考えられる。

 ミニにした目的は主にふたつ考えられるでしょう。

 ひとつ目は、使いやすいように敢えてしたパターンです。持ち運びやすくするために文字を小さくしたり、行間を詰めたり、言葉の数を少なくしたりと、あれこれ工夫した結果としてコンパクトになったわけです。そして、もうひとつはそもそも解説する項目の数が少なくて、結果的にミニになってしまっただけというパターンです。蒲鉾製造の事典を作ろうと思い立ったまでは良かったが、解説事項が思ったよりもなくて焦り、蒲鉾製造の周辺にある物事までかき集めてようやくミニ事典が出来上がったわけです。果たして正解はどちらなんでしょうか。さすがに題名では判断しかねます。

 先ほど、感想を書きたくなる題名の事典は「限られた内容を深く深く掘り下げるタイプのもの」と書きましたけれども、これは言ってしまえば「専門性が高い」とも言えます。専門性が高い分野は往々にして学問に存在しておりまして、例えば生物学でございます。生物は身近な存在でございますから、いろんな人によって長いこと研究されてきました。長いこと研究されてくれば分野は細分化し、専門性が高まってゆく。

 だから、「生きもの毛事典」とか出てくるわけです。

 生き物の中でも毛にしぼった事典でございます。「生物学事典とかしゃらくさい」「自分は毛でやらせてもらいます」、そんな意気込みが聞こえてきそうな題名でございます。

 ところで、事典の題名の王道は――辞典もそうですけど――内容を短い言葉で無駄なく表現する形だと思うんです。「発光の事典」なんかはまさにそれで、一切の無駄がない、シンプルで分かりやすい題名です。

 ただし、何事も王道だけではございませんで、「蒲鉾製造ミニ事典」のように単語をあれこれくっつける題名の事典も存在します。「蒲鉾事典」だけでも意味が通じるとは思うんですが、何らかの理由で「製造」や「ミニ」をくっつけた。

 事典ではなくて辞典ですけれども、「悪魔のささやき医学辞典」もまたその類だと思うんです。

 「悪魔の医学事典」でも別におおよその内容を言い表しているとは思うんですけれども、敢えてささやいている辞典でございます。なぜささやいたのか、辞典内でささやきをどう表しているかなど、疑問がいくつも湧いてくる題名ではございますが、とにかくいろんな言葉をくっつけた題名の辞書も存在しているのは事実です。

 その極めつけみたいな事典が「動物学者による世界初の生き物屁事典 ヘビってオナラするの?」です。

 表紙から考えても、メインの題名は「ヘビってオナラするの?」であり、「動物学者による世界初の生き物屁事典」は副題のようです。ただ、少なくとも事典である点は間違いないようです。

 これも「屁事典」で内容の説明は事足りるはずなんです。でも、これだと専門書ならばともかく、一般の方向けの書籍としては無骨すぎる題名かもしれません。説明は事足りているかもしれませんが、正確に伝わらない可能性のある題名でもありますし。

 その結果として、事典であることを示す言葉が副題に押しやられ、「ヘビってオナラするの?」というキャッチ―な題名がメインに据えられたのだと考えられます。

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