題名読書感想文:41 どこまでがパロディか判断するのは難しい
題名だけ読んで感想を書いているんです。それを「ギリ読書と言えるだろう」とたかをくくって「題名読書感想文」と名付けています。名が体を表しているか、はたまた羊頭狗肉かはご自由にご判断くださいませ。
今回のテーマは「パロディ」です。もともとあるものを使って別のものを作る行為の中でも、「もともとあるもの」の色合いが強いものをパロディと呼んでいる印象です。ちなみに、ウィキペディアでは冒頭で「模倣」とハッキリ書いてしまっています。
ウィキペディアの「パロディ」の項目をご覧になればお分かりの通り、一言でパロディと言いましても、どこからどこまでをパロディと言うかについては、それだけで本が何冊も書けるくらい難しい話題のようです。「こいつのこれ、あいつのあれと似てんじゃん」みたいなことは古来からいくらでもあったでしょうし、いくらでもある割には、うまくやればパロディで済むはずが、下手すればパクりと呼ばれ、場合によっては犯罪とされてしまうため、皆さん結構必死で議論してきたことが分かります。
パロディの難しさを示す一例として、「たまたま似てしまう」という現象がございます。もとの作品を全然知らないのに、結果としてそっくりな作品を作ってしまう。当然、時に裁判へと発展し、ちゃんと「たまたま似てたらパクりじゃないよ」という判例が出てたりします。
ただし、ものと作品との接点がないことを裁判で証明しなければならないようではございますが。詳しいお話は専門家の方に聞くか、専門書で調べてご確認くださればと存じます。
とにかく、意図していないのにパロディっぽくなってしまうものもあれば、意図してパロディにしたものもあります。今回はその両方を取り上げてみます。パロディの対象は、主に物語のある作品に限定してみました。
例えば「シャーロック・ホームズの建築」です。
シャーロック・ホームズに出てくる建築物を取り扱っている本でございますから、こういう題名になるのは必然という気もします。しかし、それにしたって本家に寄せた題名です。寄せたというか、本家の中に混ざり込もうとする意気込みさえ感じられる。
試しに、本家の短編集の題名を調べてみました。大体こんな感じのようです。
この中に「建築」が混ざっていても違和感ゼロです。初めてホームズシリーズに触れる人だったら、「建築」が偽物と見抜くのは至難の業でしょう。
ただ、題名読書感想文は、どちらかと言えば命名者の意図しない部分を味わうことが多いです。ガッツリとしたパロディは他でも存分にいじられているでしょうから、題名読書感想文はここから徐々にガッツリパロディから離れていくことにします。つまり、だんだんガッツリしなくなっていく。
というわけで、続いては「ちょっと気になる社会保障V3」です。
何がV3なのでしょうか。調べたら、まず2016年に「ちょっと気になる社会保障」が発売されます。
そして、2017年に「ちょっと気になる社会保障 増補版」が発売されます。いわゆる「第2版」的な扱いです。
そして、第3版目が2020年に発売された「V3」というわけです。1、2、V3とくれば仮面ライダーでございまして、恐らくは命名者もそのつもりでつけたのだと思われます。「3と言えばV3だよな!」みたいな感じで。
しかし、どうして社会保障の本でライダーに寄せたのかは謎です。よほどライダーが好きだったのだろう、という真っ直ぐな理由しか思いつきません。
ちなみに、ライダーはV3の次はX、アマゾン、ストロンガーと続きますが、我らが社会保障シリーズは2022年に「もっと気になる社会保障」が発売されています。「ちょっと気になる社会保障X」ではないんです。
個人的にはこのままライダー路線を突き進み、「ちょっと気になる社会保障鎧武」とかやってくれると楽しいと思います。
こんな題名もあります。「行政ウォッチハンドブック」です。
この題名がどれだけ計算されたものなのかは不明です。ただ、発売時期により、少なくとも意図があったと誤解できる題名になってしまいました。
発売されたのは2014年でございます。これは妖怪ウォッチが発売された2013年の翌年でございまして、同作品がかなりの盛り上がりを見せていた時期でございます。そのため、仮に大真面目に考えた題名だったとしても、「妖怪ウォッチに寄せてきたのか?」と誤解させる余地が出来てしまったわけです。
続いては「科学者と魔法使いの弟子」でございます。
副題は「科学と非科学の境界」となっています。副題は主題で表しきれなかったものを、補足みたいな形でくっつけるものだと思うんですが、こう言っては何ですが、主題っぽい副題もあれば、逆に副題っぽい主題もございます。
特に上記書籍なんかは副題としても使えそうです。「大長編ドラえもん のび太の科学者と魔法使いの弟子」とか「ハリーポッター 科学者と魔法使いの弟子」とか、いろんなシリーズと相性がかなりいい。割とフィクションで用いられがちなワードばかりな上、言葉自体がやや抽象的なのがいいのでしょう。
こんな感じで、特定の何かに似ていると言えないまでも、でも何かに似てるような気がする、そんな題名は探すと意外にございます。例えば、「ようこそ安全の国」です。
アマゾンの書籍説明によりますと、安全の国にやってきた主人公が安全衛生管理を学ぶという、物語を通じて専門知識を学ぶ内容のようです。
しかし、この「ようこそ安全の国」の題名、なんか不安を覚えないでしょうか。私は覚えました。なんかディストピアSF小説の題名っぽいのが理由だと思います。一見すると人々の安全をキッチリ守っているいい国のように見えるけれども、ちょっと調べると過剰な安全管理により人々を監視しまくり、ちょっとでも危険な行為をすれば次々に逮捕されてしまう、負の面が出てくる。そんな物語です。
実際の内容がどうなのかは、買って確認するしかなさそうです。
とまあ、こんな感じで、「何となくパロディっぽく見える」というところまでパロディの範囲を広げてしまうと、どうしてもこじつけっぽい感じが増えてしまい、何とでも言えてしまいます。これがまたパロディの難しいところでございまして、だから現代もパクったパクってないで争いがあり、その手の案件が次々と裁判所に持ち込まれているのでしょう。
今回の感想文もだんだんとりとめがなくなってしまいましたので、最後にこちらを紹介して終わりに致します。「顔を探しに」です。
個人的には、アンパンマンを思い出しました。ではまた。