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昭和のミシンと「ミシンカバー」の話
こんにちは! owarimao です。年末年始は慌ただしく、マクラメもはかどりませんでしたが……
下の写真は、さいきん作ったマクラメのモチーフ2点です。同じ形の4つのパーツを継ぎ合わせてあります。
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結び終わっただけで、まだ仕上げをしていません。これをどんな「作品」として完成させるか、思案のしどころです。
心づもりとしては、昨年末に作ったブローチみたいに、フェルトを切り抜いてマクラメを嵌めこむみたいにしようかなと。
周囲はブランケットステッチではなく、ミシンで縫いたいと思っています。ただしそのミシンが問題なのです。
これは私がまだ十代のころ(昭和の終わり)、親に買ってもらったミシン。↓
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むかし少しのあいだ洋裁を習っていたので、そのときはお世話になりました。でも最近はご無沙汰です。
何ヶ月か前、久々に取り出して使おうとしたら、故障していることに気づきました。抑え金を下ろすためのレバーが機能しなくなっているのです。
電源を入れればまだ動くので、修理は可能かもしれません。
でも一般に、ミシンの寿命は30年くらいだとか。これはもう40年近く過ぎています。
なんでも最近のミシンは、昔のよりずっと性能がいいらしいですね。
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よし! 新しいのを買おう! と思ってから、行動するまでに時間がかかる……
私は貧乏症なので、物を買うことには消極的です。1つが1万円を超える買い物だと、注文確定のボタンを押すのに勇気が要ります。でもおととい、ついに注文しました。
考えたら、自分でミシンを買うなんて、これが最初で最後かもしれないんですね。
するとタイミングよく、注文の翌日、新聞に『戦後とミシン』というコラムが載っていました。
お年玉くじ付き年賀はがきの第1回の当選番号の発表は、「戦後5年」を迎える1950年の1月にあった。
特賞の賞品は「高級ミシン」。(……)衣服に事欠いた時代の家族のための服づくりの必需品、自立したい女性の内職の道具として、存在感は大きかったという。人々の装いや生計を支えつつ輸出産業の一角も担い、「戦後7年」に再び特賞の賞品に選ばれる。
その座を電気洗濯機に譲るのは「戦後11年」になる56年のこと。
「もはや『戦後』ではない」
あの名句が経済白書の結語に書かれた年でもある。
筆者:編集委員 伊藤裕香子
お年玉くじの特賞だったミシンは、もちろん電動ではなく、足踏み式でした。私も実家にあった古い足踏み式を、使ったことがあります(まだ実家にあるのかな……)。
ミシンは台と一体化しており、使わないときは台の内側に収納するしくみになっていて、母が刺繍したカバーがかけてありました。
そう、昔は「ミシンカバー」というものが存在したのですね。
下の写真は、前にもお目にかけた『美しいレース編』(1964)という本に載っている「ミシン・カバー」の作品例です。
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写真の中にある「ミシンは東京重機KK提供」という文字にお気づきですか? 現在は JUKI という名前で知られるトップメーカーですが、その前身は、武器を製造する軍需工場だったそうです。時代が変わってミシンを造るようになったんですね。お年玉くじの賞品になったのも、この会社の製品でした。
下の写真は、先週の記事でもお見せした洋裁学校の看板。
きっと、まだ足踏みミシンを使っていたころのものだと思います。
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ところで同じ本の反対側のページには「テレビ・カバー」なるものも載っています。この時代のテレビはブラウン管ですから。今みたいな薄型じゃないです。テレビの上によく干支の置物なんか置いてありましたっけ。
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その時代に「いちばん大切」と思えるものに、人はカバーをかけたがるのかもしれません。
昭和30年代に入ると、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫が人々の暮らしに入りこんできて「3種の神器」と呼ばれます。そんな時代背景が、レース編みの本からもうっすらと伺えます。
先ほど引用した新聞コラムには、こんな言葉もあります。
いまや高成長を望めない国の姿は、昭和の隆盛が遠のいた家庭向けミシンと重なる。(……)
けれど、最新事情を少し聞いて驚いた。
(……)刺繍など多機能化した機種は「推し活」に愛用され、レザー小物などを仕上げる使い手は女性と限らない。ネットという環境変化も追い風に、多様な価値観を表現できる道具として、新たな境地を切り開こうとしていた。
筆者:編集委員 伊藤裕香子
そうなんです。だから私も「ミシンを買い換えよう」と思ったんです。よくわかっていらっしゃる。
「時代の変化」をシミジミかみしめながら、ミシンが届くのを待っています。
(↑以前投稿した、洋裁関係の記事です。 よかったらごらんください)