開発組織の“ヒトインフラ”を目指す「Offers MGR」開発への想い
先日、Offersに続く第2の新サービス「Offers MGR(オファーズマネージャー)」のオープンβ版をリリースしました。「Offers MGR」は、プロダクト開発組織の生産性を最大化するサービスであり、マネジメント層が抱える採用後の組織課題を解決する“ヒトインフラ”をミッションに掲げています。
今回のnoteでは、なぜ「Offers MGR」を開発するに至ったのか、「Offers MGR」で実現したい“ヒトインフラ”とは何かなど、プロダクトに込めた想いを事業責任者である田中がお伝えします。
「Offers MGR(オファーズマネージャー)」とは何か
「Offers MGR」を一言で表すと、プロダクト開発組織の生産性を最大化するサービスです。
GitHubやJira、Figmaなど、開発業務で利用するサービスからデータを抽出し、個人・チーム単位、雇用形態別で業務内容や量の推移を可視化。開発組織において「現在どこに課題があるのか」を特定し、どこを改善すれば業務効率が上がるのかを提示します。
また、SlackやNotionともAPI連携しており、コミュニケーション量やドキュメント化など多角的にパフォーマンスを計測することで、個人単位でのコンディションの可視化やモチベーション管理も可能としています。
▼業務内容の可視化 イメージ
▼コンディションの可視化 イメージ
特に「雇用形態別のアウトプット比較」や「コンディション管理」は、副業・転職サービスの「Offers」を運営してきた私たちだからこそ、生まれてきた指標です。
正社員・フリーランス・副業(複業)、リモートワークなど、多様な働き方が広まる一方、マネジメントはより難易度と重要度を増しています。
働き方が変われば、管理方法や成果の評価方法も変わってくるでしょう。それらに対応する組織やルールを作るのは非常に工数もかかります。
そこで「Offers MGR」では、雇用形態別のアウトプット状況や個人単位のコンディション可視化といったメンバー一人一人に向き合う「ピープルマネジメント」をサポートする機能を加えました。
単に開発組織を管理するツールではなく、関わるメンバーと組織としての成長、そして生産性を向上させるサービスとして「Offers MGR」は誕生したのです。
Offers MGRは誰のどんな課題を解決するものなのか
先述したとおり「Offers MGR」では、開発組織における生産性向上を支援したいと考えています。
そのために、開発組織のリーダーやマネージャーが抱えるマネジメント上の課題を解決する機能を実装しました。
開発組織におけるマネジメント上の課題には「開発プロセスにおけるマネジメント」と「人のマネジメント」の二つがあります。
「開発プロセスにおけるマネジメント」においては、一つ一つの開発プロセスが属人化・ブラックボックス化してしまうことで、開発スピードの改善ができないといった課題。
「人のマネジメント」の課題は、一人一人の業務負荷を把握できず、どの業務を渡して良いのか判断がつかない、モチベーションが管理できないなどがあります。
これらのマネジメントにおける課題には、段階的に打ち手を打つ必要があります。
まずは個人、次にチーム、最後に経営の順番です。
プロダクト開発組織の生産性を向上させるには、はじめに一人一人の業務内容を可視化し、コンディションの確認・調整や業務プロセス、業務効率が最適であるかどうかから見直す必要があります。
個々人が求められている業務において力が発揮できていないと、それをきっかけに機能リリースの遅延やその常態化を招き、開発や事業・プロダクト全体へ影響を与えることがあります。
同様に、チーム単位での可視化や最適化のため、チーム間の各個人ごとの連携を見ていく必要があります。バッドケースは、人の増加や組織の拡大とともにサイロ化を招き、周りのチームのことはよくわからない・知らないといった「レバレッジがかかっていない(コラボレーションが生まれない)組織」になってしまうからです。
最終的には、会計・労務などのデータを用いて、経営視点から人材への投資対効果などまで一気通貫で見ることで、企業全体における開発組織のヒト・モノ・カネを議論できるようにする必要があると考えています。
「Offers MGR」は、これら3つの段階に基づき、製品設計を行っています。
Offers MGR開発のきっかけは?
Offers MGR開発のきっかけは「Offers」を利用いただいている企業様の多くが、業務委託の活かし方に悩んでいることに気づいたことでした。
「Offers」は、副業・転職を希望するITエンジニア/デザイナーと、経験豊富な人材をすぐに採用したい企業をつなぐ採用サービスです。
マッチングする案件の多くが業務委託での成約であることから、業務委託を受け入れている企業様からのお声をよく耳にしていました。
その中で「実際に入社するも、どのようにディレクションやマネジメントをすればいいか分からない」「どのようなタスクをお願いしたら良いか分からない」といった業務委託の採用後の課題を聞くようになりました。
このような課題感によって、Offersのリリースから8カ月後の2020年1月より、Offers MGRのプロダクト構想が始まりました。
業務委託の管理だけで生産性向上は実現できない
企画を考え始めたタイミングでは、“業務委託のマネジメントを支援するサービス”として位置付けていました。
しかし、社内や顧客の声をさらに整理していく中で、業務委託のマネジメントは課題の一部であり、これらを解決しただけでは根本的な課題解決にならないことに気がつきました。
特に当時は、弊社でも新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅ワークの比率が上がり、正社員同士の会話も減っていました。在宅になったことでお互いの業務状況を把握できず、意思決定が遅くなり結果として業務委託の方への連携が遅くなってしまうなどの課題を感じていました。
また、DX需要拡大によってIT人材のニーズが高まり、開発組織のマネジメント層の採用難が続いているという課題から、現開発メンバーが開発以外に時間が割かれてしまい、個人の生産性が低下している状況が生まれているのではないかと考えるようになりました。
先日、弊社の調査機関である「デジタル人材総研」と協力し、Offers利用者のマネジメント層(CTO、VPoE、EM etc )向けに、プロジェクトマネジメントにおける開発組織の課題に関するアンケート調査を実施したところ、以下のような課題が起きていることが判明しました。
約50%が「開発ディレクションを行う人材が不足して、歩留まりが起きている」と回答
約35%が「特定のメンバーにコミュニケーションが集中していて本来の開発業務にフォーカスできていない」と回答
多くの企業様が開発組織のマネジメント不足(この場合はPM、EM)によって、現メンバーの業務過多や調整・キャッチアップなどの業務に時間が割かれ、歩留まりが発生し、結果的に生産性が低下しているのではないかと考えています。
これまでにない“ヒトインフラ”を目指して
市場規模という観点からもこれから「Offers MGR」のニーズは高まっていくだろうと予想しています。
「Offers MGR」の事業領域は、国内だと“タレントマネジメント”というカテゴリーに部類されますが、タレントマネジメント市場は、テレワークの普及や人事業務のシステム化ニーズの高まりにより、年々増加し、数千億円規模の市場になっています。
また、金融庁が早ければ2023年(令和5年)3月期の有価証券報告書から段階的に適用を開始するとしています。各社、人的資本の開示への対応が求められ始めている状況であり、今後市場規模がさらに拡大していくと見ています。
海外では、HCM(ヒューマンキャピタルマネジメント)・HRM(ヒューマンリソースマネジメント)領域があり、大きく成長しています。採用のAI化など含め、様々なサービスへの展開がされており、今後も注目のマーケットになっています。
人的資本管理(HCM)の市場規模は、予測期間中に7.5%のCAGRで成長し、2021年の223億米ドルから、2026年までに320億米ドルに達すると予測されています。
出典:https://www.gii.co.jp/report/mama1059989-human-capital-management-market-covid-impact.html
Offers MGRは「開発組織のヒトインフラ」を目指す
一般的なタレントマネジメントサービスは、全社員向けに開発されているサービスが多くありますが、「Offers MGR」はプロダクト開発組織に特化したマネジメントサービスであり、海外に類似サービスはありません。
システムインフラとしてDatadog(ナスダック(NASDAQ)上場:2023年2月現在で時価総額3兆円企業)・開発生産性やシステムの品質の把握にCode Climateなどがあるように、Offers MGRは「開発組織のヒトインフラになる」というミッションを元に、サービスを展開していきます。
最後に
経済産業省がリリースしている未来人材ビジョンで「社員は学ぶ意識が低い」「企業は人に投資をしていない」というデータがあります。これを見て、すでに日本は国際競争力も落ちており、今後も衰退していくのかなと、とてもショックを受けました。
出典:https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531001/20220531001-1.pdf
Offers MGRは、Offersとともに日本のソフトウェア企業の成長を組織から強く支援するプロダクトを目指しています。野球で言う大谷選手の活躍ではないですが、日本のソフトウェア企業が海外で活躍するのをもっと見たいですし、他産業とソフトウェアの組み合わせやソフトウェア産業が盛り上がることが日本の国・社会全体のためになると信じています。
日本から強い産業を生み出さないといけない使命感に突き動かされている感覚です。
それを実現する上で、データに基づくソフトウェア経営・HR・マネジメントの意思決定を支えていきたいと考えています。
また、個人が自分を信じて力を最大限発揮できるように、個人の存在意義を肯定、個人が働くことに意欲的になり、個人の可能性を信じられるようなプロダクトにしていきたいです。
個人を信じることがチームや会社のためになり、事業や企業成長、ひいては日本の成長につながっていく、個人と組織をエンパワーメントする“ヒトインフラ”を目指していきます。
次回は「Offers MGR」の使い方やデータから見たアクションへのつなげ方など、より具体的なサービス内容をご紹介します!
代表取締役CPO 田中 慎