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ツタメシ往訪期:その0【店構えからいい店を見抜くこと】

 きっと誰しも、人に薦めたくなるような、または誰にも教えずひっそりと通い続けたくなるような、心に残る「いい店」を訪れたことがあるだろう。

 食事の味はもちろん、空間としての居心地のよさ、お店の方との気持ちよい会話、同じ店に居合わせた他の客とのコミュニケーション、コストパフォーマンスなど様々な要素に基づいて、僕らは総合的に「これはいい店だ」と判断する。
 これは近年になって身につけた特技のようなものだが、年齢のわりにはいろいろといい店にお邪魔させてもらってきたおかげか、店構えを一瞥しただけで「いい店」かどうか、かなりの精度で判別できるようになってきた。
 店のサイン、のれん、建具、植栽、照明、窓ガラス越しにのぞく店内の様子、漏れてくる笑い声、換気扇から漂ってくるいい匂い…それらの全てはその店固有の「店構え」として、僕らに雄弁に語りかけてくる。

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↑一番好きな店の店構え。

 僕は自転車で街を走り回るのが好きで、走りながら店構えが目に留まり、ピンときた店は極力記録しておくようにしているのだが、あとでお店の口コミを確認したり、または実際にお店にお邪魔して答え合わせをしてみると、ほぼ間違いなく「いい店」を選ぶことができているらしい。
 自分でも気になって、「店構えから見抜ける、いい店の条件」を言語化できないか、とちょっと苦心したことがある。だがこれは、実は相当難しい話で結局実現はしなかった。上述の通り「店構え」は五感のうち味覚以外全てに訴えてくる総合芸術のようなもので、簡単にチェックリスト化できるような性質のものではないのだ。

 ただ、「いい店」の共通点を考える中で、ひとつ気づいたことがある。 「蔦の絡まる店にハズレなし」ということだ。

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↑往年の名店、今はなき「蔦カレー」こと「印度風カリーライス」(三越前)

 数ある飲食店の中で蔦の絡まった店は一握りゆえ、訪問したことのあるお店もごくわずかだが、今まで訪れた蔦の絡まる店は、良くも悪くも一癖あって、思い出に残る「いい店」だったな、と思い当った。
 それもそのはずだ。蔦が絡まるほど長い時の試練に耐えている店か、あえて蔦の絡んだ建物を選んで店を出した、クセのある経営者の店かどちらかに当てはまるはずだから。
 これは面白いかもしれない。まだ見知らぬ店も含めて、蔦が絡んでるかどうかでいい店が見抜けたら相当便利なのでは…?

 と、この仮説を検証するため、このnoteではツタの絡まる飲食店=ツタメシを僕が訪れた記録を、今後1軒ずつご紹介していきたいと思う。

 非常に趣味的要素の強い記事となるのが目に見えているが、お付き合いいただければ幸いである。

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