祖母の家にある植物を3時間かけて観察した。

ほぼ毎年見ていた光景だったのに一度も祖母の家にある植物を観察したことがなかった。今までアブやハチなどの虫が必ずいるのでどんな植物があるのかを見る気もせずに一目散に家の中へ入っていたからだ。

思えば夏場に祖母の家に行くのは久しぶりであった。いつも正月しか訪れることがないのだが、今回は祖父の新盆であったことから久しぶりに盆に祖母の家を訪れた。

家の目の前に川があり、河川敷と家の敷地が繋がっており、玄関から2〜30秒で川に入ることができる。そこまで大きな川ではないが楽しめる大きさ、深さの川であった。そして祖母の家は未だに下水がなく汲み取り式のトイレであるほど古い建物であるが、土地は広い。しかし駐車スペースは全くなく、少し離れた所にある。建物と物置以外の土地は全て土であり、多くの植物が生えている。ネットは繋がるがめちゃくちゃ弱い。そんな自然的なものしかない家である。そこで僕は朝から晩まで1日中過ごしていた。そこで僕はこんなことをすることにした。

勝手にデジタルデトックスである。

流石にテレビはあるが日中にやっているテレビ番組は高が知れている。テレビは見なかった。妹を見ると弱いネット環境の中で必死にSNSやYouTubeを見ていた。そこで何かやることないかなと思い見つけたのが“植物の観察“であった。

祖母の家を訪れる予定の客はまだ何組か残っているが、1時間先は特に誰も用事がなかった。そこで祖母を呼び、育てている植物を1つずつ教えてもらい、暇な間ずっと観察することにした。

きゅうり、なす、ネギ、ニラ、唐辛子、パッションフルーツ、スイカ、ピーマン、パプリカ、ゴーヤ、バジルetc

とざっと30種類以上の植物を育てていた。花もあったのだが、名前を覚えることができなかった。いつもなら写真を撮ったり、メモをとるのだが、その機能をスマホで行なっていたため諦めてしまった。こうなった時に優先して覚えるのは関心が高いものからである。勉強と同じなんだと再認識させられた。

こうして途中にあった虫との闘いを含めて3時間ほどマジマジと観察していて気づいたことがあった。

1つも枯れている植物がなかった。

80近い祖母1人でこれだけの植物を管理しているのかと思うと尊敬せざるを得ない。恐らく僕らのような体力にまだ自信がある20代前半の人にやらせたら、育てきれるような人は多くないだろう。忍耐強く少しづつ育てると言うのはこの世代の人からしたら1番苦手な作業ではないかと思っているからである。

そうして全ての予定が終わり、帰る頃祖母が久しぶりに小遣いをやると言い、僕と妹に少しばかりのお金を頂いた。もう正月ですら貰うことはないので約3年ぶりのことであった。恐らく久しぶりに多くの会話をしたからだろう。こんなに話したのは母が入院して1週間ほど泊まりに来てくれた10年以上前のことだろう。

さらに20年以上生きてきて初めて祖母と孫という関係ではなく、人と人という関係で会話をしたような気がした。それらを含め個人的に良い盆だったと思った。

そして初めてスマホを触らない1日を過ごした。幸いLINEが何件かあっただけでどれも緊急性はなかった。そうして僕はまた一人暮らし先に帰り、頂いた小遣いでワイヤレスキーボードとオンライン用のWebカメラを購入し、また大学の研究を頑張ることにした。それらが届いた後にせめて植物に関係のあるものを買えばよかったのにと少し思った。

これで休み終わりだ。このまま今年度の終わりまで走り続けたい。

読んでくださりありがとうございました。

(2022/08/17)

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